国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、イランのエンドウ豆(生)の生産量は1990年から2023年にかけて大きく変動してきました。1990年には10,000トンに達したものの、その後数年の間で一時的に100トンを切るほどの急減を経験しました。その後回復を見せるも、1998年からの急激な増加を経て不安定な変動が続き、2009年に33,516トンというピークに達しました。以降はほぼ横ばい傾向となり、2023年の生産量は15,914トンという結果になっています。直近10年を見ると比較的安定しているように見受けられるものの、依然として重要な変動要因を抱える状況にあります。
イラン(イスラム共和国)のエンドウ豆(生)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 15,914 |
-4.11% ↓
|
2022年 | 16,595 |
-0.46% ↓
|
2021年 | 16,671 |
-0.45% ↓
|
2020年 | 16,747 |
2.35% ↑
|
2019年 | 16,362 |
0.9% ↑
|
2018年 | 16,217 |
5.45% ↑
|
2017年 | 15,379 |
-12.07% ↓
|
2016年 | 17,491 |
10.83% ↑
|
2015年 | 15,781 |
22.67% ↑
|
2014年 | 12,865 |
-46.01% ↓
|
2013年 | 23,826 |
27.23% ↑
|
2012年 | 18,726 |
34.88% ↑
|
2011年 | 13,883 |
-29.79% ↓
|
2010年 | 19,774 |
-41% ↓
|
2009年 | 33,516 |
90.87% ↑
|
2008年 | 17,559 |
25.49% ↑
|
2007年 | 13,992 |
3.23% ↑
|
2006年 | 13,554 |
51.98% ↑
|
2005年 | 8,918 |
69.77% ↑
|
2004年 | 5,253 |
-9.87% ↓
|
2003年 | 5,829 |
51.39% ↑
|
2002年 | 3,850 |
-35.29% ↓
|
2001年 | 5,949 |
-40.88% ↓
|
2000年 | 10,064 |
34.97% ↑
|
1999年 | 7,456 |
-53.06% ↓
|
1998年 | 15,884 |
501.48% ↑
|
1997年 | 2,641 |
317.19% ↑
|
1996年 | 633 |
-84.44% ↓
|
1995年 | 4,067 |
28.82% ↑
|
1994年 | 3,157 |
2679.05% ↑
|
1993年 | 114 |
-86.91% ↓
|
1992年 | 868 |
-90.25% ↓
|
1991年 | 8,905 |
-10.95% ↓
|
1990年 | 10,000 | - |
イランのエンドウ豆生産量データを振り返ると、1990年から2023年にかけて大きな変動が見られます。この周期的な変動には、国内の気象条件、農業政策、そして地政学的リスクが密接に関係していると考えられます。エンドウ豆は豊富な栄養素を持ち、その需要は国内市場だけでなく輸出市場でも注目されています。このため、セクターの安定性は食料安全保障や輸出収益の観点からも極めて重要です。
1990年代初頭の急激な生産量減少は、主に干ばつや灌漑の失敗に起因している可能性があります。また、この時期、国内輸送や農業インフラの整備が十分でなかったことも影響を与えたと考えられます。その後、1998年に15,884トンまで急回復を見せましたが、この回復を支えた要因として、農業技術の導入や政府による生産奨励政策が挙げられます。2009年に記録された33,516トンというピーク時は、降水量の増加や国内需給の高まり、また輸出需要の後押しが起因していると推測できます。
しかし、2009年以降は生産量が減少し、それに続く期間で徐々に横ばいの傾向が見受けられます。この背景には、気候変動の影響や土壌の品質悪化、また地域の政治的不安定性が影響していると考えられます。特に最近の気候変動は、降水パターンの不安定化や極端な干ばつの発生をもたらしており、この地域にとっての重大なリスクとなっています。また、近年では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが農業分野を含む経済活動全般に影響を与え、労働力の不足やサプライチェーンの混乱が短期的な生産抑制要因となりました。
今後、イランのエンドウ豆生産を長期的に安定させるためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、乾燥気候に適応可能な品種の開発と普及を進め、環境変化に強い生産体制を構築することが求められます。また、灌漑技術を向上させ、限られた水資源を効率的に活用することも重要です。さらに、農業分野への投資を増やし、現代的な農業機械の導入や肥料の適切な利用を促進する政策も併せて推進する必要があります。
地域間協力の観点でも、イランは周辺国との連携を強化し、農業研究や技術交流を拡大すべきです。例えば、インドなどの強力な農業国から学び、資源を協力して活用することで、地域全体の農業パフォーマンス向上を図ることが可能です。また、国際的な食料危機や市場の混乱に対する回復力を高めるための枠組み作りも重要でしょう。
最後に、地政学的リスクにより影響を受ける可能性についても注目すべきです。特にイランのような地域での緊張や紛争は、単純な農業問題を超えてサプライチェーンや市場全体に波及する恐れがあります。そのため、地域平和に資する政策、輸出入ルートの多角化なども中長期的な視点で進めるべき課題となります。
結論として、イランのエンドウ豆の生産は過去数十年で劇的な変動を経験してきたものの、直近では一定の安定が見られます。しかし、気候変動や地域問題の影響を考慮すると、今後の成長と持続可能性を確保するための様々な対策が必要です。そのためには国内外の協力と最新技術の活用が鍵となるでしょう。