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イラン(イスラム共和国)のサトウキビ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、イランのサトウキビ生産量は1961年には179,000トンでしたが、2023年には約8,599,516トンとなり、過去60年以上の間に飛躍的な増加を遂げました。特に2000年代初頭と2015年以降に大きな伸びが見られますが、一方で近年にかけての生産量の変動や減少傾向も確認されます。これらのデータはイラン国内の経済状況、農地利用の変化、気候条件、あるいは地域的な地政学的リスクなどの多くの要因が影響を与えていることを示唆しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 8,599,516
7.49% ↑
2022年 8,000,000
-3.13% ↓
2021年 8,258,193
5.33% ↑
2020年 7,840,012
3.84% ↑
2019年 7,550,000
-17.03% ↓
2018年 9,100,206
19.24% ↑
2017年 7,631,923
2.04% ↑
2016年 7,479,606
0.98% ↑
2015年 7,406,990
12.42% ↑
2014年 6,588,634
0.79% ↑
2013年 6,536,976
21.93% ↑
2012年 5,361,416
-5% ↓
2011年 5,643,371
-0.08% ↓
2010年 5,647,795
100.14% ↑
2009年 2,821,883
-26.18% ↓
2008年 3,822,683
-28.08% ↓
2007年 5,314,825
7.17% ↑
2006年 4,959,391
-10.33% ↓
2005年 5,530,425
-6.44% ↓
2004年 5,910,997
13.76% ↑
2003年 5,196,000
39.96% ↑
2002年 3,712,429
16.18% ↑
2001年 3,195,431
35% ↑
2000年 2,367,015
5.86% ↑
1999年 2,235,934
13.51% ↑
1998年 1,969,758
-4.33% ↓
1997年 2,058,957
12.31% ↑
1996年 1,833,242
-1.36% ↓
1995年 1,858,547
0.07% ↑
1994年 1,857,242
-0.56% ↓
1993年 1,867,770
0.66% ↑
1992年 1,855,585
35.03% ↑
1991年 1,374,200
-17.17% ↓
1990年 1,658,987
13.2% ↑
1989年 1,465,582
12.81% ↑
1988年 1,299,125
-17.49% ↓
1987年 1,574,531
-33.34% ↓
1986年 2,361,922
-2.1% ↓
1985年 2,412,656
13.46% ↑
1984年 2,126,455
3.59% ↑
1983年 2,052,755
13.4% ↑
1982年 1,810,200
7.94% ↑
1981年 1,677,000
28.31% ↑
1980年 1,307,000
-6.58% ↓
1979年 1,399,000
55.79% ↑
1978年 898,000
-10.2% ↓
1977年 1,000,000
25% ↑
1976年 800,000
-27.27% ↓
1975年 1,100,000 -
1974年 1,100,000
4.76% ↑
1973年 1,050,000
26.35% ↑
1972年 831,000
43.77% ↑
1971年 578,000
7.24% ↑
1970年 539,000
-2% ↓
1969年 550,000
21.68% ↑
1968年 452,000
4.39% ↑
1967年 433,000
13.35% ↑
1966年 382,000
-2.55% ↓
1965年 392,000
34.25% ↑
1964年 292,000
50.52% ↑
1963年 194,000
-3.96% ↓
1962年 202,000
12.85% ↑
1961年 179,000 -

イランのサトウキビ生産量は、1960年代から緩やかな増加を見せ、1970年代には1,000,000トンを超える年もありました。しかしながら、1970年代後半から1980年代初期にかけて増加が顕著となり、1983年には2,052,755トンと約20年間で生産量が10倍以上となるなど、イランの農業生産構造の変化を反映しています。この増加傾向は、国内の食料自給率向上を目的とする政策や、農業技術の改良が進んだことなどが背景にある可能性が高いです。

その後、1980年代後半から1990年代中盤にかけては減少と回復を繰り返す不安定な傾向が見られ、1988年には1,299,125トンまで落ち込みました。この時期は、イラン・イラク戦争(1980年から1988年)の影響が農業セクターにも及び、農地やインフラが損傷を受けたことが原因として考えられます。戦後、回復に伴い1990年代後半には再び上昇が始まり、2000年代初期には3,000,000トンを超え、その後5,000,000トン以上に達するなど、生産量が急成長しました。

特筆すべきは、2013年以降の急激な成長で、2018年には過去最高となる9,100,206トンを記録しました。この急成長の背景には、気候条件の改善、品種改良、灌漑技術の進展が影響していると推測されます。しかし翌年以降、サトウキビ生産量は減少に転じ、2023年現在では8,599,516トンとやや回復しているものの、2018年のピーク時には及びません。この変動の一因として気候変動の影響が考えられ、特に干ばつや洪水などの異常気象が作物の収量に影響を与えた可能性があります。

また、イランの地域的な地政学的リスク、特にアメリカやヨーロッパ諸国との経済制裁が影響し、農業設備や化学肥料の輸入制限が生産性向上を妨げていることも示唆されます。他国と比較すると、例えば2018年のインド(世界最大のサトウキビ生産国)の生産量が4億トンを超える一方で、イランの生産量における成長余地は依然として大きいと考えられます。

今後の課題として、まず気候変動の影響への適応が挙げられます。干ばつ対策として耐旱性の高いサトウキビ品種の育成や効率的な灌漑システムの導入が重要です。また、農地の過剰利用を防ぐための持続可能な農業政策が求められます。さらに、経済制裁下における農業生産機械や資材の安定供給に向けた国内生産基盤の整備も急務です。

国際的な視点では、イランが近隣の農業大国であるインドやパキスタンと協力し、農業技術の共有や共同研究プロジェクトを推進することが重要です。この取り組みは、地域の農業生産全体を底上げし、食料安全保障の強化にもつながるでしょう。地政学的な緊張の緩和や経済関係の正常化が進めば、国際的な資源や技術の活用が可能になり、農業生産のさらなる発展が期待されます。

最終的に、イランのサトウキビ生産の向上は、国内における砂糖供給の拡大を実現し、輸入依存の削減や農村経済の強化にも寄与するでしょう。そのためには、気候変動対策、持続可能な農業の推進、国際協力の強化といった多方面での努力が必要不可欠です。