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イラン(イスラム共和国)の牛飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、イラン(イスラム共和国)の牛飼養数は1961年の約6,023,000頭から長期間にわたり大きな変動を経て推移しています。ピークは1998年の8,785,000頭付近で、直近の2022年には5,625,000頭に落ち着いています。この動向には経済的、政治的要因に加え、気候や農地利用、国際情勢の影響が反映されています。

年度 飼養数(頭)
2022年 5,625,000
2021年 5,628,000
2020年 5,323,974
2019年 5,332,346
2018年 5,273,236
2017年 4,879,363
2016年 5,504,972
2015年 4,572,681
2014年 4,231,993
2013年 7,936,000
2012年 7,800,000
2011年 7,612,000
2010年 7,432,000
2009年 7,257,000
2008年 7,089,000
2007年 7,989,010
2006年 7,892,000
2005年 7,819,000
2004年 7,631,000
2003年 7,535,000
2002年 7,445,000
2001年 8,500,100
2000年 8,270,100
1999年 8,047,420
1998年 8,785,000
1997年 8,638,000
1996年 8,492,000
1995年 8,347,000
1994年 8,203,000
1993年 7,996,160
1992年 7,911,400
1991年 6,697,320
1990年 7,532,120
1989年 7,917,747
1988年 6,368,000
1987年 6,500,000
1986年 6,691,120
1985年 6,200,000
1984年 5,800,000
1983年 5,400,000
1982年 5,103,000
1981年 5,660,720
1980年 5,174,000
1979年 5,399,000
1978年 5,425,000
1977年 5,518,000
1976年 5,600,000
1975年 5,625,000
1974年 5,856,000
1973年 5,820,000
1972年 5,607,000
1971年 5,516,000
1970年 5,300,000
1969年 5,100,000
1968年 4,971,000
1967年 4,946,000
1966年 4,900,000
1965年 5,000,000
1964年 5,000,000
1963年 5,200,000
1962年 6,073,000
1961年 6,023,000

イランの牛飼養数は、1961年以降、時期ごとに上下しながら変動を続けてきました。初期の1960年代は飼養数が減少傾向を示し、1963年から1966年にかけて約5,000,000頭前後まで減少しています。その後、1970年代にかけて緩やかに回復し、1973年には5,820,000頭を記録するなど、一定の増加が見られました。この間、イランの農村部の人口増加や農牧業の基盤整備が進められていましたが、同時に国際的な原油価格の変動や政治的混乱も国内の畜産業に影響を与えた可能性があります。

1980年代にはイラン・イラク戦争(1980年から1988年)の影響で農牧業の生産性が低下し飼養数も停滞する状況が見られましたが、終戦後の1989年には急激に7,917,747頭に増加しています。この短期間の伸びは、戦争後の復興政策や畜産業への重点的な投資の成果と考えられます。しかしその後、1990年代も飼養数は一定の変動を伴いながら上昇を続け、1998年には過去最大の8,785,000頭を記録しました。

しかし2000年代に入ると状況は一変し、2008年には約7,089,000頭に減少しています。この時期は、著しい干ばつや水資源問題が発生しており、これが原因で草地の減少や飼料供給の不安定化が牛の数に影響したと考えられます。それ以降、飼養数は上下を繰り返しながら推移し、2014年の急激な減少(4,231,993頭)は特筆すべき変動でした。この下落は国内経済の停滞や国際的な制裁と関連している可能性があります。

2022年時点での飼養数は5,625,000頭と、過去のピーク時に比べるとかなり減少しています。この状況の背景として、気候変動による干ばつや水不足、経済制裁による飼料輸入の制限、都市化の進展による農業用地の減少が挙げられます。また、新型コロナウイルス感染症の影響により物流が滞り、畜産部門にも負の影響が及んだことが考えられます。

このデータから、イランにおける牛の飼養は単なる畜産業の問題にとどまらず、地域経済、環境問題、さらには国際情勢とも密接な関わりを持つことが分かります。特に、最近の気候変動の影響や人口増加に伴う都市化進展は、農牧業にとって重大な課題です。

今後の具体的な対策としては、まず土地利用の効率化を進め、水資源管理技術の導入を加速することが挙げられます。また、国際的な協力を通じて、飼料供給の安定化を目指すべきです。さらに、地域内での技術移転や畜産業者への補助金政策も牛の飼養数の安定に寄与するでしょう。イランの牧畜業が持続可能な形で発展するためには、国内外からの政策的支援とイノベーションが不可欠だと言えます。

総じて、イランの牛飼養数の推移には複合的な要因が影響しており、単一の解決策では十分とはいえません。しかし、持続可能な環境づくりが達成されれば、将来的な飼養数の回復と、国内外の需要に応える生産基盤が整う可能性は十分にあります。