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イラン(イスラム共和国)の羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イランの羊肉生産量は、過去数十年にわたり変動を続けており、2023年の生産量は237,479トンでした。このデータは、1960年代における生産量約11万トンから現在に至るまでの著しい増加とその後の減少傾向を反映しています。特に2018年から2019年にかけての急激な低下や2021年以降の回復が顕著で、近年の不安定な生産量の推移が課題となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 237,479
-6.81% ↓
2022年 254,832
7.01% ↑
2021年 238,135
56.8% ↑
2020年 151,875
30.38% ↑
2019年 116,484
-25.93% ↓
2018年 157,253
-33.82% ↓
2017年 237,599
-15.16% ↓
2016年 280,070
-8.19% ↓
2015年 305,046
10.52% ↑
2014年 276,000
6.15% ↑
2013年 260,000
-5.32% ↓
2012年 274,600
0.84% ↑
2011年 272,321
0.36% ↑
2010年 271,349
4.24% ↑
2009年 260,320
3.03% ↑
2008年 252,664
-23.8% ↓
2007年 331,600
4.18% ↑
2006年 318,300
1.05% ↑
2005年 315,000
0.99% ↑
2004年 311,900
2.51% ↑
2003年 304,270
-11.81% ↓
2002年 345,020
3.73% ↑
2001年 332,610
1.98% ↑
2000年 326,166
11.32% ↑
1999年 293,000
-5.18% ↓
1998年 309,000
2.66% ↑
1997年 301,000
7.5% ↑
1996年 280,000
1.45% ↑
1995年 276,000
1.85% ↑
1994年 271,000
2.26% ↑
1993年 265,000
3.11% ↑
1992年 257,000
5.33% ↑
1991年 244,000
2.52% ↑
1990年 238,000
9.17% ↑
1989年 218,000
2.83% ↑
1988年 212,000
1.92% ↑
1987年 208,000
1.46% ↑
1986年 205,000
6.77% ↑
1985年 192,000
5.49% ↑
1984年 182,000
5.2% ↑
1983年 173,000
4.22% ↑
1982年 166,000
6.41% ↑
1981年 156,000
2.63% ↑
1980年 152,000
-13.64% ↓
1979年 176,000
15.79% ↑
1978年 152,000
3.4% ↑
1977年 147,000
8.09% ↑
1976年 136,000
5.02% ↑
1975年 129,500
0.39% ↑
1974年 129,000
3.2% ↑
1973年 125,000 -
1972年 125,000 -
1971年 125,000 -
1970年 125,000 -
1969年 125,000
0.4% ↑
1968年 124,500
2.05% ↑
1967年 122,000
2.95% ↑
1966年 118,500
3.04% ↑
1965年 115,000 -
1964年 115,000
1.32% ↑
1963年 113,500
0.44% ↑
1962年 113,000
-3.42% ↓
1961年 117,000 -

1960年代から2010年代初頭まで、イランの羊肉生産量は概ね安定的に増加していました。特に1980年代から1990年代の増加ペースは目覚ましく、例えば1980年の152,000トンから1990年の238,000トンへと飛躍的に成長しました。この成長は、農業インフラの開発や食糧供給政策の進展、経済の発展に伴う国内需要の増加などが寄与したと考えられます。しかしながら、2000年代後半から生産量の変動幅が大きくなり、2008年には252,664トンと急減しました。その後、2010年前後に回復しましたが、近年になると再び減少に向かいました。

特に注目すべきは2018年から2019年にかけての生産量の急激な減少です。この期間には、経済制裁の影響による飼料価格の高騰や気候変動が農業全体、特に畜産業に与えた影響が大きかったと考えられます。また、新型コロナウイルスの影響による物流の制限や市場の混乱が2020年およびその後の生産にも影響を及ぼした可能性があります。ただし、2021年以降は回復の兆しが見られ、2022年には254,832トンと再び増加しました。

これらのデータから考察される課題として、以下が挙げられます。第一に、経済制裁や不安定な政策環境による飼料の供給不安定化です。イランは飼料の多くを輸入に依存しており、外的要因が生産活動に直結します。第二に、気候変動による水資源の枯渇と耕作地の劣化が、牧草地の維持を困難にしている点です。地域によっては砂漠化が進行しており、これが長期的に牧畜業にも負荷をかけています。

こうした状況の中で持続可能な生産を確保するためには、いくつかの具体的な対策が考えられます。例えば、第一に地域の牧草地管理を強化し、家畜向けに適した飼料の生産を国内で増やす取り組みが肝心です。第二に、羊肉の生産効率を向上させるため、家畜の品種改良や飼育技術の向上が必要です。第三に、地域的な協力を強化し、隣国や国際機関と連携して輸出入ネットワークを安定させることが求められます。さらに、国内市場の需要動向を正確に把握し、過剰供給や過剰輸出を抑えるバランスの取れた政策実施が重要です。

また、中東地域の地政学的リスクも無視できません。隣接国での紛争や政治的不安定がイランの輸出ルートや輸入飼料の供給に影響を与える可能性があり、これが生産動態に直接的な影響を及ぼすと予測されます。このような環境下で、イランが自国の畜産業を安定化させるためには、長期的な視野で持続可能性を重視した施策が必要です。

結論として、イランの羊肉生産は過去数十年で変動を続けており、その背景には地政学的リスクや経済的・気候的課題が複雑に絡み合っています。今後、この分野のさらなる成長と安定化には、政策と地域間協力の充実が不可欠です。国際的な技術援助や金融支援を活用しながら、持続的な畜産業への取り組みを強化していくことが求められています。