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イラン(イスラム共和国)の大麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イラン(イスラム共和国)の大麦生産量は、長期的な視点でみると着実に増加傾向を示しており、2022年から2023年には3,000,000トンの生産量を記録しています。一方で、特定の年度における記録的な減少や、気候変動や社会的要因による生産量の変動も見られます。近年は年間約3,000,000トンを維持していますが、これには地政学的影響や農業政策の変化が関与しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,000,000 -
2022年 3,000,000
6.6% ↑
2021年 2,814,264
-4.3% ↓
2020年 2,940,660
-18.32% ↓
2019年 3,600,000
23.72% ↑
2018年 2,909,806
5.94% ↑
2017年 2,746,678
-26.25% ↓
2016年 3,724,398
16.33% ↑
2015年 3,201,584
8.33% ↑
2014年 2,955,437
5.1% ↑
2013年 2,812,117
1.59% ↑
2012年 2,768,001
9.23% ↑
2011年 2,533,994
-23.07% ↓
2010年 3,294,000
39.05% ↑
2009年 2,368,996
53.1% ↑
2008年 1,547,394
-50.15% ↓
2007年 3,103,980
5% ↑
2006年 2,956,032
3.48% ↑
2005年 2,856,667
-2.85% ↓
2004年 2,940,349
1.11% ↑
2003年 2,908,074
-5.72% ↓
2002年 3,084,659
27.3% ↑
2001年 2,423,069
43.71% ↑
2000年 1,686,039
-15.65% ↓
1999年 1,998,959
-39.44% ↓
1998年 3,300,760
32.11% ↑
1997年 2,498,556
-8.69% ↓
1996年 2,736,250
-7.32% ↓
1995年 2,952,265
-3.04% ↓
1994年 3,044,695
-0.44% ↓
1993年 3,058,105
-0.22% ↓
1992年 3,064,994
-1.18% ↓
1991年 3,101,568
-12.59% ↓
1990年 3,548,169
24.61% ↑
1989年 2,847,379
-16.57% ↓
1988年 3,412,753
25.16% ↑
1987年 2,726,702
8.87% ↑
1986年 2,504,587
9.06% ↑
1985年 2,296,534
0.15% ↑
1984年 2,293,049
12.75% ↑
1983年 2,033,704
6.84% ↑
1982年 1,903,493
-3.27% ↓
1981年 1,967,863
45.5% ↑
1980年 1,352,500
-0.07% ↓
1979年 1,353,438
11.21% ↑
1978年 1,217,000
-1.06% ↓
1977年 1,230,000
-17.29% ↓
1976年 1,487,200
3.42% ↑
1975年 1,438,000
66.63% ↑
1974年 863,000
-6.5% ↓
1973年 923,000
-8.52% ↓
1972年 1,009,000
11.99% ↑
1971年 901,000
-16.81% ↓
1970年 1,083,000
-5.25% ↓
1969年 1,143,000
-1.47% ↓
1968年 1,160,000
12.08% ↑
1967年 1,035,000
-4.17% ↓
1966年 1,080,000
15.51% ↑
1965年 935,000
30.22% ↑
1964年 718,000
-2.97% ↓
1963年 740,000
-3.27% ↓
1962年 765,000
-4.61% ↓
1961年 802,000 -

イランの大麦生産量の推移を見ると、1960年代初期では年間約800,000トン程度であった生産量が1980年代から急速に増加し、1990年代には3,000,000トン近くに達する年もありました。この背景には、国内の農業政策の転換や、より近代的な耕作技術の普及が影響していると考えられます。特に、1980年代から1990年代にかけての生産量の急拡大は、灌漑技術の改善や地方農業の組織化などが寄与したと推測されます。

しかし一方で、データ全体を詳細に分析すると、急激な増減も見られます。たとえば、2000年以降では、1999年の1,998,959トンから翌年の1,686,039トンに減少した後、2002年には3,084,659トンに増加するなど、極端な変動が続きます。このような変動には、気候変動による干ばつや豪雨などの自然災害、農業資源の不均等な分配、または地域的・地政学的な衝突が影響している可能性が高いです。2008年の1,547,394トンという大規模な減少もその一例です。

近年(2019年以降)では、年間約3,000,000トン前後を維持しており、安定しているように見えますが、これは必ずしも楽観視できる状況ではありません。イランは干ばつや砂漠化といった課題を抱えており、これが今後の生産に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、イランの農業地帯は降水量の減少や気温の上昇の影響を受けやすく、適切な灌漑管理と適応型農業が重要になります。

また、イランの地政学的背景も農業生産量に影響を与えています。この地域では、特に経済制裁や貿易規制が農業資材の輸入に影響を与え、肥料や除草剤の供給不足が生産に悪影響を及ぼしています。一方で国内の強い政策的支援や自給自足を目指す農業プログラムが、生産量の安定化に寄与していると考えられます。

イランにとって、大麦は食糧のみならず飼料としても重要であり、国内での維持的利用と輸出のバランスを保つことが重要課題となっています。他国を見てみると、中国やインドは国内消費を優先し、収穫量の向上のために莫大な投資を行っており、この点でイランも追随する努力が求められるでしょう。

将来的な課題としては、気候変動の影響を受けた水資源の枯渇や、地域間格差の拡大が挙げられます。これに対する対策として、政府の積極的な支援による効率的な灌漑システムの拡充が必要です。また、国際社会や近隣諸国との協力を強化し、現代農業技術や種子技術の導入が進められるべきです。さらに、国際経済の変動や制裁の影響を考慮した農業政策の柔軟性向上も重要となるでしょう。

これらの具体的な対策により、イランの大麦生産は長期的な安定化のみならず、輸出強化による経済的なメリットにもつながる可能性があります。国連や他の国際機関も技術的・資金的な支援を通じて、イランの持続可能な農業発展を後押しするべきです。このような取り組みが進展すれば、食糧安保の向上と国際的地位の強化という二つの成果を得ることができるでしょう。