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イラン(イスラム共和国)のオリーブ油生産量推移(1961年~2021年)

イラン(イスラム共和国)におけるオリーブ油の生産量は、1960年代から一貫して低水準で推移していました。しかし、1990年代以降に急激な増加を見せ、2010年代を通じて大幅な生産量の変動が見られます。1990年には800トンだった生産量は、2013年には14,229トンに達しピークを記録しました。その後、2014年から一時的に減少傾向がみられたものの、最近では2021年に7,030トンと増加傾向が復活しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2021年 7,030
5.41% ↑
2020年 6,670
7.64% ↑
2019年 6,197
17.89% ↑
2018年 5,256
-37.55% ↓
2017年 8,417
48.37% ↑
2016年 5,673
44.75% ↑
2015年 3,919
-13.14% ↓
2014年 4,512
-68.29% ↓
2013年 14,229
42.21% ↑
2012年 10,005
-32.53% ↓
2011年 14,829
74.84% ↑
2010年 8,482
210.63% ↑
2009年 2,730
-2.58% ↓
2008年 2,803
-3.21% ↓
2007年 2,896
9.68% ↑
2006年 2,640
-34.79% ↓
2005年 4,048
113% ↑
2004年 1,901
-15.46% ↓
2003年 2,248
22.76% ↑
2002年 1,832
-2.73% ↓
2001年 1,883
9.53% ↑
2000年 1,719
48.47% ↑
1999年 1,158
-9.4% ↓
1998年 1,278 -
1997年 1,278
4.19% ↑
1996年 1,227
28.34% ↑
1995年 956
9.95% ↑
1994年 869
132.46% ↑
1993年 374
-33.53% ↓
1992年 563
-13.11% ↓
1991年 648
-19.02% ↓
1990年 800
27.82% ↑
1989年 626
-11.7% ↓
1988年 708
70.75% ↑
1987年 415
-40.01% ↓
1986年 692
68.78% ↑
1985年 410
-19.65% ↓
1984年 510
36.61% ↑
1983年 373
-23.43% ↓
1982年 487
9.42% ↑
1981年 446
-10% ↓
1980年 495
42.86% ↑
1979年 347
-22.22% ↓
1978年 446
-18.18% ↓
1977年 545
22.22% ↑
1976年 446
-30.77% ↓
1975年 644
-18.75% ↓
1974年 792
23.08% ↑
1973年 644
-3.7% ↓
1972年 668
357.61% ↑
1971年 146
-80.33% ↓
1970年 743
25% ↑
1969年 594
-20% ↓
1968年 743 -
1967年 743 -
1966年 743 -
1965年 743 -
1964年 743 -
1963年 743 -
1962年 743 -
1961年 743 -

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データから、イランのオリーブ油生産量の歴史的推移を俯瞰すると、生産量は経済的基盤や地政学的要因、政策の影響を強く受けていることが伺えます。1960年代には年間743トン前後の低い水準にとどまっており、これはイランにおけるオリーブ栽培がまだ限定的であったことを示しています。1970年代や1980年代にはさらなる減少や生産の変動が見られ、これは革命やそれに続くイラン・イラク戦争などの政治的・経済的混乱の影響とみられます。

生産量が本格的に増加し始めたのは1990年代以降で、特に1996年には1,227トン、さらに2005年には4,048トンと急激な成長が記録されています。これは、政府が国内の農業政策を見直し、国内需要を安定的に満たすためのオリーブ栽培奨励策を進めたことが主な要因と考えられます。また、この期間には農業技術の改善や灌漑システムの導入も進んでおり、生産効率が向上しました。2010年以降にはさらに重要な変化が見られ、特に2010年には8,482トン、2013年には14,229トンと過去最高の数値に達しています。

しかし、2014年以降には再び急激な減少が見られ、これは気候変動や干ばつの影響、さらには国内の政治不安や地域的な経済制裁が影響した可能性があります。特に、中東地域の地政学的リスクや貿易制限は農業全般に深刻な影響を与える要因として知られています。このような課題の中、2020年以降には比較的生産量が安定しつつあり、2021年には7,030トンと持続的な改善が観察されています。この改善は、特に温暖な気候に適応したオリーブ品種の導入や、農業への投資再活性化に関連していると考えられます。

オリーブ油生産は、イランにとって特に地中海沿岸諸国との競争における経済的有利性を持っています。たとえば、スペインやイタリア、ギリシャといった主要生産国では、世界全体のオリーブ油供給をリードしていますが、イランの生産は依然としてこれらの国々に比べると小規模です。この背景には、国際市場での競争力を妨げる生産性の課題とインフラ整備の遅れなどがあるとされています。

イランが今後国際市場での地位を向上させるためには、いくつかの重要な対策が必要です。まず、気候変動によるリスク軽減のため、灌漑設備の強化や乾燥地帯に適した品種の積極的育成が求められます。また、地域的な協力を促進し、たとえばトルコやシリアなど周辺国との協働を通じて技術共有を行う施策も有効でしょう。さらに、国内外の取引を円滑化するための経済制裁問題の解決や、加工技術の改善により高品質な製品ラインを拡大することも要点となります。

オリーブ油の世界的な需要は健康志向の高まりに伴い増加し続けています。イランもこの流れを積極的に捉え、国際市場でのプレゼンスを拡大する可能性を秘めています。そのためには、持続可能な生産体制を構築し、気候や政治的な不安に柔軟に対処できる構造を整えることが必要です。最終的には、国内農業の生産性向上による経済的基盤の安定化が、イラン全体の発展に寄与する鍵となるでしょう。