国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、イラン(イスラム共和国)のヤギ肉生産量は1961年に55,300トンから緩やかに増加し、2007年には最大の122,500トンを記録しました。しかし、その後減少傾向に転じ、2023年には34,389トンと大きく落ち込んでいます。このデータは環境要因や政策、経済的制約など複数の要因が生産の推移を大きく左右していることを示しています。
イラン(イスラム共和国)のヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 34,389 |
-11.46% ↓
|
2022年 | 38,839 |
1.08% ↑
|
2021年 | 38,424 |
25.22% ↑
|
2020年 | 30,686 |
27.83% ↑
|
2019年 | 24,005 |
-27.9% ↓
|
2018年 | 33,294 |
-25.41% ↓
|
2017年 | 44,634 |
-18.41% ↓
|
2016年 | 54,709 |
-15.24% ↓
|
2015年 | 64,544 |
-28.28% ↓
|
2014年 | 90,000 |
-4.26% ↓
|
2013年 | 94,000 |
-4.28% ↓
|
2012年 | 98,204 |
0.84% ↑
|
2011年 | 97,389 |
-2.77% ↓
|
2010年 | 100,166 |
3.45% ↑
|
2009年 | 96,822 |
2.07% ↑
|
2008年 | 94,858 |
-22.56% ↓
|
2007年 | 122,500 |
4.17% ↑
|
2006年 | 117,600 |
0.51% ↑
|
2005年 | 117,000 |
1.39% ↑
|
2004年 | 115,400 |
2.5% ↑
|
2003年 | 112,580 |
7.54% ↑
|
2002年 | 104,690 |
-5.78% ↓
|
2001年 | 111,110 |
1.47% ↑
|
2000年 | 109,500 |
5.29% ↑
|
1999年 | 104,000 |
-4.59% ↓
|
1998年 | 109,000 |
3.81% ↑
|
1997年 | 105,000 |
4.53% ↑
|
1996年 | 100,450 |
-0.35% ↓
|
1995年 | 100,800 | - |
1994年 | 100,800 | - |
1993年 | 100,800 |
-0.2% ↓
|
1992年 | 101,000 |
1% ↑
|
1991年 | 100,000 |
0.5% ↑
|
1990年 | 99,500 |
0.51% ↑
|
1989年 | 99,000 |
7.96% ↑
|
1988年 | 91,700 |
-0.76% ↓
|
1987年 | 92,400 |
-5.71% ↓
|
1986年 | 98,000 |
6.06% ↑
|
1985年 | 92,400 |
4.76% ↑
|
1984年 | 88,200 |
5% ↑
|
1983年 | 84,000 |
7.14% ↑
|
1982年 | 78,400 |
3.7% ↑
|
1981年 | 75,600 |
3.85% ↑
|
1980年 | 72,800 |
1.96% ↑
|
1979年 | 71,400 |
2% ↑
|
1978年 | 70,000 | - |
1977年 | 70,000 |
4.17% ↑
|
1976年 | 67,200 |
6.67% ↑
|
1975年 | 63,000 |
2.27% ↑
|
1974年 | 61,600 |
-3.3% ↓
|
1973年 | 63,700 |
1.11% ↑
|
1972年 | 63,000 |
2.27% ↑
|
1971年 | 61,600 |
4.76% ↑
|
1970年 | 58,800 |
-6.67% ↓
|
1969年 | 63,000 |
3.45% ↑
|
1968年 | 60,900 |
3.57% ↑
|
1967年 | 58,800 |
2.44% ↑
|
1966年 | 57,400 | - |
1965年 | 57,400 | - |
1964年 | 57,400 |
-3.69% ↓
|
1963年 | 59,600 |
-14.86% ↓
|
1962年 | 70,000 |
26.58% ↑
|
1961年 | 55,300 | - |
イランのヤギ肉生産量データは、国の食料供給や農畜産業の状況を示す重要な指標の一つです。ヤギは乾燥地域や山岳地帯でも飼育しやすい特性があり、イランのような気候を持つ国にとって特に重要です。データによれば、1961年の55,300トン以降、1980年代にかけて安定的に増加傾向を示し、2007年に最大値の122,500トンを記録しました。この増加は、畜産業への政策的支援や技術向上、経済的発展などが関係していると考えられます。一方で、2008年以降は波動のある減少傾向が続き、2015年以降大幅な減少が見られます。特に2015年から2018年にかけての急激な落ち込みが顕著で、2023年には34,389トンと1960年代の水準にまで戻りました。
この減少の背景にはいくつかの要因が挙げられます。第一に、気候変動の影響が指摘されています。イランは近年、干ばつや水資源の不足に見舞われており、ヤギの飼育に必要な牧草地や水資源が制約されている可能性があります。第二に、経済制裁や貨幣価値の下落など、イランを取り巻く経済的・地政学的問題も畜産業に影響を与えていると言えます。特に燃料価格や餌代の上昇は農家のコスト負担を大きくし、飼育規模の縮小につながった可能性があります。さらに、都市化の進展も負の影響を与えており、農村地帯の人口減少や農業従事者の高齢化が進行しています。
過去のピーク時と比較することで、この減少の深刻度が浮き彫りになります。ヤギ肉はイランにおける貴重なタンパク質源として広く消費され、伝統的な料理とも密接に関連しています。したがって、ヤギ肉の生産低下は国の食料安全保障にも影響を与えかねません。他国と比較すると、たとえば中国やインドではヤギ肉生産量が堅調に推移しており、地域内格差が広がっていることが伺えます。
今後の展望として、持続可能な畜産業の推進が求められます。そのためには、まず気候変動への適応策が必要です。灌漑施設の整備や干ばつ耐性の高い飼料作物の導入が解決策として考えられます。また、政府による畜産業支援政策の強化も重要です。例えば、飼料価格を抑えるための補助金制度や、農家への技術研修プログラムの導入が有効です。さらに、地域協力枠組みを通じた技術交流や資源の共有も一案となるでしょう。併せて、地元市場の強化や輸出の促進によって経済的自立を図ることも検討するべきです。
紛争や経済制裁といった地政学的要素が畜産業に及ぼす影響も考慮する必要があります。このようなリスクに対応するためには、国際的な支援の下でインフラを整備し、地域の防災能力を向上させることが重要です。特に災害や疫病など緊急事態を想定したリスク管理体制の強化が必要です。また、ヤギを含む家畜の疫病対策も畜産業の継続的発展に欠かせないポイントです。
これらの努力が実を結べば、イランのヤギ肉生産量の減少を食い止め、国全体の食料安全保障を向上させることができる可能性があります。国や国際機関がこれらの課題に取り組むことで、持続可能で安定した農業基盤を築くことができるでしょう。