国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、イランにおけるマンゴー、マンゴスチン、グアバの生産量は、1981年の80トンから2023年の45,459トンまで大幅に増加しました。1980年代は緩やかな増加を示していましたが、1990年代以降に急速な成長を遂げ、特に2000年代以降は安定した高水準を維持しています。最近のデータでは、2021年以降での増加幅が顕著で、2022年に46,864トンと過去最高を記録しています。
イラン(イスラム共和国)のマンゴー・マンゴスチン・グアバ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 45,459 |
-3% ↓
|
2022年 | 46,864 |
5.13% ↑
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2021年 | 44,578 |
4.14% ↑
|
2020年 | 42,804 |
0.1% ↑
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2019年 | 42,762 |
0.07% ↑
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2018年 | 42,734 |
0.37% ↑
|
2017年 | 42,576 |
-1.91% ↓
|
2016年 | 43,407 |
1.96% ↑
|
2015年 | 42,574 |
-1.77% ↓
|
2014年 | 43,340 |
1.43% ↑
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2013年 | 42,729 |
62.16% ↑
|
2012年 | 26,350 |
6.04% ↑
|
2011年 | 24,849 |
7.86% ↑
|
2010年 | 23,038 |
0.39% ↑
|
2009年 | 22,949 |
0.59% ↑
|
2008年 | 22,814 |
1.06% ↑
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2007年 | 22,574 |
78.05% ↑
|
2006年 | 12,679 |
-40.11% ↓
|
2005年 | 21,170 |
11.44% ↑
|
2004年 | 18,997 |
5.49% ↑
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2003年 | 18,008 |
47.89% ↑
|
2002年 | 12,177 |
-5.81% ↓
|
2001年 | 12,928 |
4.73% ↑
|
2000年 | 12,344 |
13.51% ↑
|
1999年 | 10,875 |
2.06% ↑
|
1998年 | 10,656 |
-1.38% ↓
|
1997年 | 10,805 |
26.21% ↑
|
1996年 | 8,561 |
11.04% ↑
|
1995年 | 7,710 |
38.33% ↑
|
1994年 | 5,574 |
28.01% ↑
|
1993年 | 4,354 |
48.58% ↑
|
1992年 | 2,931 |
17.6% ↑
|
1991年 | 2,492 |
111.01% ↑
|
1990年 | 1,181 |
-21.79% ↓
|
1989年 | 1,510 |
8.55% ↑
|
1988年 | 1,391 |
17.98% ↑
|
1987年 | 1,179 |
-24.57% ↓
|
1986年 | 1,563 |
34.28% ↑
|
1985年 | 1,164 |
9.3% ↑
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1984年 | 1,065 |
451.81% ↑
|
1983年 | 193 |
20.63% ↑
|
1982年 | 160 |
100% ↑
|
1981年 | 80 | - |
イランのマンゴー、マンゴスチン、グアバ生産量の推移を見ていくと、1980年代には年間80トンから1,000トン程度の非常に控えめな規模で推移していました。当時のこの低生産量は、これらの果物がイランの主な農産物ではなかったことや、適切な栽培技術とインフラの不足がその主な理由と考えられます。しかしながら、1990年代に入ると、国内農業政策の改善や灌漑技術の向上により、生産量は顕著な増加を見せ、2000年には約12,344トンに達しました。その後の20年間で、特に2010年代には徐々に生産が安定し、2020年代に入り年間40,000トンを継続しています。
世界的な視点で見ると、イランはこれらの果物の主要輸出国であるインドやフィリピンと比較すると、まだ小規模な生産国です。例えば、マンゴーの主要生産国であるインドでは年間2,000万トンを超える生産量があり、イランの生産量はその0.2%程度に過ぎません。一方で、イラン国内でのマンゴー、マンゴスチン、グアバの栽培は、近年国内消費の拡大や輸出市場への参入を目指して徐々に成長を続けています。
過去数十年間で、イラン国内の農業政策や気候変動への対応が生産量に大きな影響を与えていると考えられます。特に2006年、事業規模が再編成された影響で、一時的に生産量が減少しましたが、その後の農業支援政策の拡大により、再び増加基調に戻りました。また、気候変動の影響がこの地域における農業に直接的に影響を与える可能性も示唆されています。例えば、温暖化が進行するにつれ、マンゴーやグアバといった熱帯果物の生育には適した条件が整ってくる可能性があり、それが生産の拡大を後押ししています。
さらに注目されるのは、2021年以降の生産量の増加です。この時期の増加は、主に農業技術の導入や栽培地域の拡大、海外市場拡大政策の取り組みによるものと推測されます。しかし、2023年のデータを見ると、前年のピークから若干減少しており、これは気象条件の変動や国際市場での需要変化が影響した可能性が考えられます。
今後の課題としては、イラン国内の生産基盤のさらなる強化が必要です。具体的には、灌漑システムの革新や気候変動によるリスクの軽減策を講じることが優先されます。また、地域間での協力関係の強化も重要です。例えば、すでに多くの熱帯果物が輸出されている中東諸国との貿易関係を深化させることで、より強固な市場基盤を築くことができます。さらに、収穫後の流通技術を改善することで、国内外での競争力を高める余地もあります。
長期的には、気候変動が果樹栽培に与えるポジティブな影響に加えて、災害や疫病のリスクに備えることも必要となります。特に干ばつや地域衝突は、栽培インフラに深刻な被害を与える可能性があるため、事前の備えとして地域全体での協力体制を構築することが望まれます。このような取り組みにより、イランはこれらの果物の世界的な生産国としての地位を確立する可能性があります。