国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによれば、イラン(イスラム共和国)の天然蜂蜜生産量は、1961年の2,450トンから2022年の79,535トンへと劇的に増加しています。特に1970年代から1990年代にかけて顕著な成長を遂げ、さらに2000年代以降も堅調な増加傾向が見られます。一部の年には増加率が停滞または減少する時期もありましたが、全体的には安定して成長しています。このデータは、イランが天然蜂蜜生産国としての強固な基盤を築いてきたことを示しています。
イラン(イスラム共和国)の天然蜂蜜生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 79,535 |
2021年 | 77,484 |
2020年 | 74,887 |
2019年 | 73,645 |
2018年 | 73,286 |
2017年 | 72,206 |
2016年 | 67,783 |
2015年 | 72,866 |
2014年 | 77,800 |
2013年 | 74,600 |
2012年 | 71,100 |
2011年 | 50,700 |
2010年 | 45,000 |
2009年 | 46,400 |
2008年 | 40,700 |
2007年 | 47,000 |
2006年 | 36,000 |
2005年 | 34,800 |
2004年 | 28,700 |
2003年 | 28,800 |
2002年 | 27,600 |
2001年 | 26,100 |
2000年 | 25,300 |
1999年 | 24,500 |
1998年 | 24,600 |
1997年 | 24,000 |
1996年 | 23,600 |
1995年 | 22,600 |
1994年 | 20,500 |
1993年 | 18,500 |
1992年 | 17,500 |
1991年 | 16,000 |
1990年 | 10,000 |
1989年 | 9,000 |
1988年 | 7,645 |
1987年 | 7,280 |
1986年 | 6,940 |
1985年 | 6,600 |
1984年 | 6,290 |
1983年 | 5,990 |
1982年 | 5,700 |
1981年 | 5,430 |
1980年 | 5,170 |
1979年 | 4,930 |
1978年 | 4,700 |
1977年 | 4,470 |
1976年 | 4,260 |
1975年 | 4,050 |
1974年 | 3,860 |
1973年 | 3,680 |
1972年 | 3,500 |
1971年 | 3,370 |
1970年 | 3,230 |
1969年 | 3,120 |
1968年 | 3,020 |
1967年 | 2,940 |
1966年 | 2,850 |
1965年 | 2,770 |
1964年 | 2,690 |
1963年 | 2,610 |
1962年 | 2,530 |
1961年 | 2,450 |
イランの天然蜂蜜生産量の歴史を振り返ると、1960年代から1970年代にかけては緩やかな増加が続きました。この時期には、農村部での農業の発展や伝統的な養蜂技術の利用が中心であり、生産量の伸びは年間数百トンの範囲にとどまっていました。しかし、1980年代後半から1990年代にかけては、持続的な技術革新や養蜂事業への投資の増加が背景となり、急激な増加が見られます。特に1989年から1991年にかけては、9,000トンから16,000トン、その翌1992年には17,500トンと、生産量が飛躍的に伸びました。
1990年代以降、イラン政府は養蜂産業を発展させるため、農業政策の一環として多くの取り組みを行ってきました。たとえば、国内外市場での競争力を高めるための品質管理システムの導入、養蜂専門家の育成、養蜂技術の近代化、そして花蜜源となる植物の適切な管理が挙げられます。また、地理的条件もイランの蜂蜜生産に寄与しています。同国は多様な気候帯を持ち、様々な植物資源が養蜂環境を豊かにしています。その結果、2000年代にはさらに生産量の拡大が進みました。2007年には47,000トンと大幅な増加を記録し、2010年代には70,000トン台に到達する安定成長期に入りました。
一方で、この成長にはいくつかの課題も浮かび上がっています。2022年時点での79,535トンという生産量は非常に高いものの、いくつかの年では一時的な生産量の減少が見られました。たとえば、2015年から2016年にかけての生産量減少は、気候変動や水資源の不足が影響した可能性があります。イランのような乾燥した気候を持つ地域では、自然環境の変化が蜂蜜生産に直接影響を与える要因となりやすいです。また、新型コロナウイルスの感染拡大による物流の混乱や資材不足も、近年の養蜂業に対する挑戦となりました。
地域課題としては、近隣諸国との地政学的リスクも無視できません。経済制裁や紛争は、農業政策における資金不足や養蜂に適した土地や資源へのアクセス制約を引き起こします。このことは、収益性の低下や市場拡大の停滞に繋がりかねません。また、地球温暖化の影響で花蜜源となる植物の生育に変化が生じる可能性も、将来的なリスクとして認識されています。
今後、イランが天然蜂蜜生産において持続可能な発展を遂げるためには、いくつかの取り組みが必要です。具体的には、気候変動への適応策として耐乾燥性に優れた花蜜源植物の植栽推進や、水資源管理の効率化が挙げられます。また、養蜂技術のさらなる近代化や、疫病から蜂を守るための防疫システムの構築も必要です。さらに、国際市場への輸出促進とともに、品質認証制度の強化を図ることで、国際的な競争力を高めることが重要です。
結論として、イランの天然蜂蜜生産量は世界的にも注目される規模に成長していますが、同時に気候変動や地域の地政学的リスクなどの課題に直面しています。国際機関や近隣諸国との協力を進め、持続可能な養蜂を支えるための政策を実施することが求められます。このような取り組みは、自国の農業発展だけでなく、地域全体の食料安全保障にも寄与するものと期待されます。