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イラン(イスラム共和国)の羊飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、イラン(イスラム共和国)の羊飼養数は1961年の31,832,000匹から2022年の55,582,000匹まで増加しています。全体的には上昇傾向にあるものの、1970年代後半や2000年代後半など、複数の時期に大きな変動が見られます。特に2014年には31,420,569匹と急減した後、2021年以降再び急激に増加しています。このトレンドは畜産業の持続可能性、地域の社会経済状況、気候変動の影響を強く反映しています。

年度 飼養数(匹)
2022年 55,582,000
2021年 53,868,000
2020年 46,587,010
2019年 41,303,611
2018年 39,998,423
2017年 40,029,687
2016年 43,757,013
2015年 44,731,757
2014年 31,420,569
2013年 45,430,000
2012年 46,212,000
2011年 46,679,000
2010年 47,591,000
2009年 48,133,000
2008年 49,975,000
2007年 52,271,000
2006年 52,271,000
2005年 52,219,000
2004年 52,115,000
2003年 51,959,000
2002年 51,701,000
2001年 53,900,100
2000年 53,900,100
1999年 53,900,000
1998年 53,245,000
1997年 52,117,000
1996年 51,499,000
1995年 50,889,000
1994年 50,285,000
1993年 49,689,000
1992年 49,100,000
1991年 44,681,392
1990年 44,581,392
1989年 45,000,000
1988年 40,665,008
1987年 41,000,000
1986年 42,694,624
1985年 40,000,000
1984年 38,000,000
1983年 36,000,000
1982年 34,604,496
1981年 34,500,000
1980年 34,500,000
1979年 35,219,000
1978年 35,952,000
1977年 31,872,000
1976年 30,000,000
1975年 28,085,536
1974年 28,771,008
1973年 27,819,008
1972年 28,500,000
1971年 29,000,000
1970年 29,500,000
1969年 30,000,000
1968年 31,130,000
1967年 30,467,008
1966年 28,990,000
1965年 30,000,000
1964年 30,000,000
1963年 29,500,000
1962年 30,720,000
1961年 31,832,000

イランの羊飼養数推移を見ると、過去60年以上にわたって、多種多様な要因が畜産業に影響を及ぼしてきたことが分かります。1960年代から1980年代の前半にかけて、羊の飼養数は概ね漸増しており、イランの農牧業が拡大期にあったことを示しています。具体的に1986年には42,694,624匹となり、この時期の農業政策や国内経済の安定が羊飼養にも寄与したと考えられます。

しかし1980年代後半から1990年代初頭にかけては著しい増加が見られ、1989年には45,000,000匹、1992年以降には年々50,000,000匹を越えています。この顕著な増加は、イランが油田輸出国として経済を下支えする中、畜産業に注力したことに加え、国内の食肉需要の高まりが背景にありました。当時、家庭消費用はもちろん、宗教的儀式での羊肉需要も増加しており、特にナワーズのような重要な行事が影響を与えた可能性があります。

一方で、2000年代後半から2013年ごろに至るまで、飼養数は減少傾向を示しました。最大の減少は2014年で、それ以前の45,430,000匹(2013年)から31,420,569匹まで一気に落ち込んでいます。この減少の要因として、干ばつの深刻化や土地利用の減退、さらには経済制裁による農牧業の コスト増加が挙げられます。気候変動が作物育成に影響を与えたほか、農牧兼務の減少も一因と考えられます。こうした自然・経済両面での負担が、雑草育成や飲料水確保に影響し、羊の繁殖生産に大きな打撃を与えた可能性があります。

2015年以降、羊飼養数は再び回復し、2022年には55,582,000匹へと大きく伸びています。この回復の背景には、畜産業の技術的な進展や政府による補助政策、生産管理の効率化が関わっています。特に2021年から2022年にかけての顕著な増加は、パンデミック中の食料供給鎖の見直しや、輸入牛肉への依存軽減政策の影響と見られます。

地政学的な要素として、イランの畜産業は地域対立や経済制裁の影響を大きく受けてきました。例えば、羊飼養数の低迷期と一致する時期には、国際的な制裁が厳しくなっており、輸出入の制限が飼料の確保や畜産設備の近代化にブレーキをかけました。一方、輸出用羊毛や畜産製品の需要は増え続けており、この分野を引き上げることでより高い競争力を持つ可能性があります。

今後の課題として、持続可能な畜産業の実現が挙げられます。気候変動の影響を軽減するために、効率的で環境負荷の少ない飼育方法を採用することは急務です。例えば、中国やインドが採用するような水資源管理の計画的利用や、数値モデルに基づいた生産率向上策をイランも推進するべきです。また、隣国との協力を深めることで、羊飼料の収益性を高め、輸出市場を拡大することも有効です。

結論として、イランの羊飼養数推移は、国内外のさまざまな要因の影響を受けてきましたが、現在では成長局面にあります。今後、畜産業の持続可能な発展を図るには、気候の変動や地政学的リスクを考慮しながら政策を調整し、効率化と環境負荷軽減の両立を目指すことが必要になるでしょう。国際機関や近隣諸国との協力も積極的に進めるべきです。