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イラン(イスラム共和国)のキノコ・トリュフ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organizationが発表した最新データによれば、イラン(イスラム共和国)のキノコ・トリュフ生産量は1990年の10,000トンから2014年のピークとなる118,775トンまで着実に増加しました。しかし、その後は減少に転じ、2018年には9,588トンまで落ち込みました。2023年には67,353トンと部分的には回復していますが、安定した生産とは言えない状況が続いています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 67,353
162.82% ↑
2022年 25,628
-0.96% ↓
2021年 25,876
-14.64% ↓
2020年 30,315
-21% ↓
2019年 38,374
300.25% ↑
2018年 9,588
-73.16% ↓
2017年 35,727
-43.25% ↓
2016年 62,957
-33.13% ↓
2015年 94,152
-20.73% ↓
2014年 118,775
14.54% ↑
2013年 103,694
10.83% ↑
2012年 93,560
6.9% ↑
2011年 87,525
17.48% ↑
2010年 74,500
31.64% ↑
2009年 56,592
16.77% ↑
2008年 48,463
49.8% ↑
2007年 32,352
223.52% ↑
1990年 10,000 -

イランは中東に位置し、その地理的条件や気候は、キノコやトリュフといった高付加価値作物の生産に適しています。1990年代からキノコとトリュフの生産を本格化させ、生産量は2010年代前半にかけて着実に増加しました。特に2014年には118,775トンという記録的な生産量を達成し、同地域ではトップクラスの規模を誇るに至りました。この成長は、国内での農業技術の進歩や市場需要の増加、さらには輸出機会の拡大によるものと考えられます。

しかし、2014年以降のデータを見ると、生産量が急激に減少しています。2018年には9,588トンと、一時的に1990年の水準を下回る事態にまで陥りました。この大幅な減少の背景には、いくつかの主要な要因が考えられます。まず、気候変動による干ばつや不安定な降水量が収穫量に悪影響を与えた可能性があります。特にイランのような乾燥地帯では、水資源の不足が農産物生産への大きなリスクとなります。また、地域的な衝突や国際制裁に伴う経済的困難も、生産効率や流通システムに影響を及ぼしたものと推察されます。さらに、疫病や害虫問題も無視できない要因として挙げられます。

一方で、2023年には67,353トンと生産量が部分的に回復しています。この回復は、農業政策の改善や技術革新、市場需要の持続といった要因が寄与したと考えられます。ただし、2014年の水準にはまだ遠く、依然として課題が山積しています。例えば、農業従事者の高齢化や若年層の農業離れ、さらに水資源の効率的な管理など、長期的に解決が必要な問題が残されています。

今後の対策として、まず第一に政府主導の灌漑技術や持続可能な農業技術の導入が必要です。イランは地下水や淡水資源の管理が課題となっているため、より効果的な水資源分配が求められます。また、トリュフに特化した生産者組織の設立や国内消費拡大戦略を立てることで、安定的な市場環境を構築することも重要です。さらに、国際的な市場アクセスを拡大するためには、品質基準の向上や、制裁解除を目指した外交努力も必要不可欠です。

地政学的リスクについても考慮しなくてはなりません。イランは中東各国と同様、経済的・政治的な不安定さを抱える地域に位置しています。これが輸出面や外貨獲得に影響を及ぼしてきたことは否定できません。このため、国内市場を強化するとともに、近隣諸国との積極的な農産物貿易協力を構築する方針も重要といえます。

結論として、イランのキノコ・トリュフ生産はピーク時には地域で優れた成果を収めていましたが、様々な国内外の要因により一時的に低迷しました。現在の回復傾向を維持しつつ、技術革新、資源管理、国際的協力を推進することで、中長期的に持続的な成長を遂げることが期待されます。国際機関や他国との共同研究や援助プログラムの活用も、イランの農産物分野における課題解決の鍵となるでしょう。