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イラン(イスラム共和国)のニンジン・カブ類生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が公表した最新のデータによると、イランにおけるニンジン・カブ類の生産量は、1990年から2023年の間で大きな変動を見せています。中でも、1990年代の初期には急激な生産量の増加が見られた一方で、直近のデータでは安定的な傾向が確認されています。2023年の生産量は328,382トンで、過去のピークである2010年の675,926トンに比べると約半減していますが、この数年間で徐々に回復傾向にあります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 328,382
0.05% ↑
2022年 328,225
1.25% ↑
2021年 324,169
6.77% ↑
2020年 303,623
-1.11% ↓
2019年 307,023
34.05% ↑
2018年 229,039
-29.44% ↓
2017年 324,601
1.22% ↑
2016年 320,677
1.59% ↑
2015年 315,645
35.4% ↑
2014年 233,120
-27.15% ↓
2013年 320,008
68.71% ↑
2012年 189,682
-33.86% ↓
2011年 286,788
-57.57% ↓
2010年 675,926
70.53% ↑
2009年 396,371
16.51% ↑
2008年 340,209
-19.62% ↓
2007年 423,234
12.61% ↑
2006年 375,856
27.12% ↑
2005年 295,677
12.42% ↑
2004年 263,005
8.55% ↑
2003年 242,286
-42.01% ↓
2002年 417,797
164.85% ↑
2001年 157,747
-42.89% ↓
2000年 276,229
6.95% ↑
1999年 258,277
-25.73% ↓
1998年 347,754
31.25% ↑
1997年 264,959
-4.13% ↓
1996年 276,362
121.69% ↑
1995年 124,661
-24.54% ↓
1994年 165,195
1.01% ↑
1993年 163,550
-66.81% ↓
1992年 492,766
204.42% ↑
1991年 161,872
304.68% ↑
1990年 40,000 -

イランにおけるニンジン・カブ類の生産量は、初期の1990年に40,000トンという控えめな数値で始まりましたが、翌年に161,872トンと4倍以上の急増が見られました。この大幅な増加は、おそらく農業施策の強化や市場需要の拡大が影響していると考えられます。しかし、その後の生産量は安定せず、1993年以降は上下を繰り返す不安定な推移を示しました。

特筆すべき点として、1992年には492,766トンという顕著な生産量増加がありましたが、翌1993年には再び163,550トンまで減少しました。このような急激な変化は、気候変動や灌漑システムの未発達さ、農業技術の導入不足など、インフラ的課題が影響している可能性があります。また、1990年代後半から2000年代初頭にかけてはある程度の安定が感じられますが、収穫量の変動幅も依然として大きい状態でした。この時期はイラン国内における水資源不足が認識され始めた時期と重なるため、これが生産量にも影響を与えたでしょう。

2010年のデータでは675,926トンという最高記録が達成され、これが過去最大の生産量を示しています。この年には政策的に農業を支援する動きや、輸出志向の生産の強化が進められていた可能性があります。しかし、その後、生産量は再び確実に低下傾向を見せ、特に2011年以降には300,000トンを下回る年が続きました。この減少は、水不足や経済制裁の影響、また農業インフラの老朽化によるパフォーマンス低下が要因として挙げられます。

2019年以降は300,000トン前後で推移しており、特に2022年から2023年にかけては328,000トン以上でほぼ安定しています。この点から、イランが環境的・経済的な課題を徐々に克服し、生産基盤の改善に努めつつある状況をうかがい知ることができます。一方で、1990年代や2010年のピークと比較すると、現在の水準は依然として低めであり、持続可能な農業政策に対する更なる取り組みが必要とされています。

イランと比較して、日本や韓国、中国などは農業技術の高度化と灌漑システムの強化を通じて、安定した生産量を確保しています。例えば日本では、地域ごとのきめ細かな水管理に加え、高付加価値農業の推進がニンジンやカブの生産効率化に寄与しており、イランもこれを参考にする余地があります。

イランの地政学的リスクとしては、中東地域の水資源競争が挙げられます。ニンジン・カブ類のような水を多く必要とする作物は、気候変動の影響や周辺国との水争奪戦の影響を受けやすいため、地域的な水利用協定の構築が課題です。このままでは灌漑用水の枯渇が慢性的な農業低迷を招く恐れがあります。

また、近年では新型コロナウイルスのパンデミックによって、労働力の確保に影響が出た可能性があります。これに対応するためには、機械化の導入や現地労働者の育成が急務です。さらに、環境妥当性を考慮した農薬や肥料の使用、ならびに省水型技術の普及が、持続可能な農業の実現に資するでしょう。

今後のイランにとっての重要な課題は、生産量の安定化と生産性の向上です。そのためには政府や農業関連機関が連携し、灌漑設備の近代化や乾燥地域向けの高耐性品種の導入などを推進することが求められます。また、隣国地域との協力による水資源の共有や、国際機関と連携した技術支援を進めることで、中長期的な生産性向上を目指すべきです。これらの対策が講じられることで、イランのニンジン・カブ類生産量は将来的にさらなる安定と成長を遂げる可能性があります。