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イラン(イスラム共和国)のナス生産量推移(1961-2022)

食品と農業の国際的なデータを管理するFAO(国際連合食糧農業機関)によると、イラン(イスラム共和国)のナス生産量は1990年の15万トンから2022年にはおよそ59.5万トンに増加しました。特に、2009年に116万トンを超える生産量を記録し、以降は全体的に60万トン前後で安定的に推移しています。このデータは、イランの農業セクターでのナス生産が、経年的に重要性を増してきた一方、近年は一定の頭打ち状態にあることを示しています。

年度 生産量(トン)
2022年 595,943
2021年 598,356
2020年 595,336
2019年 594,136
2018年 605,597
2017年 586,275
2016年 590,537
2015年 639,978
2014年 528,310
2013年 603,324
2012年 473,525
2011年 563,715
2010年 703,486
2009年 1,162,847
2008年 436,757
2007年 611,519
2006年 464,189
2005年 781,968
2004年 521,299
2003年 538,726
2002年 552,852
2001年 422,975
2000年 543,308
1999年 437,890
1998年 413,624
1997年 333,428
1996年 537,280
1995年 365,223
1994年 318,044
1993年 311,495
1992年 323,227
1991年 174,107
1990年 150,000

イランはナス生産量において、世界的にも注目される農業生産国の一つです。その背景として、地中海性気候・乾燥気候を活かした農業技術や、日射量の豊富さ、歴史的な農業文化があります。FAOの2024年の最新データは、1990年以来のイランのナス生産量の変動を詳細に記録しています。このデータにより、過去30年以上の生産状況の変遷を分析することが可能です。

1990年代初頭、イランのナス生産量は15万トン(1990年)から始まり、1995年までの間で徐々に365,000トンまで増加しました。この時期、農業への投資拡大や灌漑システムの改善が実施されていたと考えられます。その後、1996年には約53.7万トンまで生産量が急増しましたが、1997年には再び約33万トンに減少し、これは地域的な旱魃や農業政策の短期的な影響を反映している可能性があります。

2000年代前半には50万トン台で推移する安定的な供給が見られましたが、2005年には78.2万トンと一時的な生産増加を記録しています。特筆すべき2009年には、生産量が116万トンに達する劇的な増加がありました。この増加は、ナスがイラン国内で消費需要のある重要な作物であることに加え、輸出向けの生産が強化された影響であると推測されます。しかし、この急増の背後には、農業の現場における一部の非持続的な生産拡張があったことが予想されます。そのため2009年以降、2010年代には生産量が50万~70万トン台に戻り、比較的安定した範囲で推移している状況がうかがえます。

2022年までの最新データを見ると、2020年以降は約59~60万トンで安定的に推移しており、大規模な変動は見られません。この安定は一見するとポジティブに捉えることができますが、人口増加や輸出市場の拡大に比べると伸び悩んでいるとも言えます。また、近年の気候変動の影響と水資源不足が、将来的な生産量に課題を及ぼす可能性が危惧されています。

さらに、イラン国内における農業分野の抱える課題として、水資源の効率的利用と気候変動への適応が挙げられます。ナスは水を比較的多く必要とする作物であるため、乾燥地帯での灌漑効率向上が極めて重要です。他国、特に日本やヨーロッパ諸国が進めている低水量で高効率の農業技術や、植物エンジニアリング技術を積極的に取り入れることで、この課題に対応できる可能性があります。

また、隣国との政治的緊張や経済制裁の影響は、輸出市場へのアクセスに直接関係しています。そのため、イランが国際的な農業連携を深め、多様な輸出先を確保することも中長期的な戦略として必須です。例えば、アジア市場や中東の他国との連携強化が、この分野への経済的な安定成長をもたらすでしょう。

結論として、イランのナス生産量は過去数十年間で大きく増加し、現在は安定的な推移を見せています。しかし、水資源管理や国際市場参入の拡大、さらに今後の気候変動リスクへの対応が、持続可能な農業成長の重要な要素となります。国際的な技術協力と地域間の政治的安定を促進する政策が、この産業をさらに発展させるためのカギとなるでしょう。