国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、ギリシャの牛乳生産量は1961年以降、特に1960年代から1980年代にかけて急増し、2000年代初頭にピークを迎えました。しかし、その後緩やかに減少し、2023年には669,620トンとなっています。近年では2020年以降、やや増減の幅が見られるものの減少傾向が続いており、1961年の水準を大きく上回っているものの、過去のピーク時と比べて低下しています。
ギリシャの牛乳生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 669,620 |
-3.13% ↓
|
2022年 | 691,250 |
-2.77% ↓
|
2021年 | 710,930 |
4.02% ↑
|
2020年 | 683,460 |
3.65% ↑
|
2019年 | 659,380 |
0.7% ↑
|
2018年 | 654,800 |
-1.15% ↓
|
2017年 | 662,436 |
0.91% ↑
|
2016年 | 656,494 |
-5.08% ↓
|
2015年 | 691,648 |
-4.68% ↓
|
2014年 | 725,631 |
-7.36% ↓
|
2013年 | 783,271 |
0.56% ↑
|
2012年 | 778,897 |
0.08% ↑
|
2011年 | 778,268 |
-2.68% ↓
|
2010年 | 799,682 |
-0.39% ↓
|
2009年 | 802,814 |
-0.65% ↓
|
2008年 | 808,100 |
0.86% ↑
|
2007年 | 801,185 |
-0.81% ↓
|
2006年 | 807,730 |
2.15% ↑
|
2005年 | 790,764 |
2.13% ↑
|
2004年 | 774,244 |
-2.59% ↓
|
2003年 | 794,808 |
-0.29% ↓
|
2002年 | 797,142 |
5.18% ↑
|
2001年 | 757,917 |
1.29% ↑
|
2000年 | 748,280 |
1.71% ↑
|
1999年 | 735,715 |
-1.07% ↓
|
1998年 | 743,670 |
0.95% ↑
|
1997年 | 736,692 |
-0.43% ↓
|
1996年 | 739,871 |
0.38% ↑
|
1995年 | 737,100 |
2.4% ↑
|
1994年 | 719,793 |
0.12% ↑
|
1993年 | 718,924 |
6.93% ↑
|
1992年 | 672,312 |
8.25% ↑
|
1991年 | 621,101 |
0.35% ↑
|
1990年 | 618,947 |
-0.92% ↓
|
1989年 | 624,668 |
3.51% ↑
|
1988年 | 603,478 |
2.06% ↑
|
1987年 | 591,318 |
4.27% ↑
|
1986年 | 567,116 |
-0.58% ↓
|
1985年 | 570,427 |
-0.77% ↓
|
1984年 | 574,836 |
-5.78% ↓
|
1983年 | 610,072 |
-0.41% ↓
|
1982年 | 612,553 |
-6.82% ↓
|
1981年 | 657,398 |
-1.26% ↓
|
1980年 | 665,792 |
-1.29% ↓
|
1979年 | 674,489 |
2.11% ↑
|
1978年 | 660,567 |
-2.56% ↓
|
1977年 | 677,910 |
-5.34% ↓
|
1976年 | 716,156 |
0.92% ↑
|
1975年 | 709,611 |
7.57% ↑
|
1974年 | 659,664 |
2.05% ↑
|
1973年 | 646,394 |
16.44% ↑
|
1972年 | 555,107 |
-0.25% ↓
|
1971年 | 556,509 |
0.72% ↑
|
1970年 | 552,535 |
4.6% ↑
|
1969年 | 528,260 |
3.49% ↑
|
1968年 | 510,458 |
-2.02% ↓
|
1967年 | 521,000 |
9.16% ↑
|
1966年 | 477,293 |
10.24% ↑
|
1965年 | 432,943 |
1.91% ↑
|
1964年 | 424,832 |
1.98% ↑
|
1963年 | 416,595 |
0.67% ↑
|
1962年 | 413,802 |
21.71% ↑
|
1961年 | 340,000 | - |
ギリシャの牛乳生産量の推移を1961年から2023年までの期間で見ると、興味深いトレンドが浮かび上がります。1961年の生産量は340,000トンでしたが、1970年代に大幅な増加を記録し、1980年代に一時的な下降局面を迎えました。その後1990年代以降は再び増加に転じ、2000年代初頭の807,730トン(2006年)でピークに達しました。しかし、それ以降は徐々に減少し、2023年には669,620トンとなっており、ピーク時より17%以上の減少となっています。
このような変動の背景には、いくつかの要因が考えられます。まず、生産量増加が顕著であった1960年代および1970年代は、農業技術の進化や国内需要の増加が主要な要因と考えられます。ギリシャ国内では地中海式の飲食文化が根強く、牛乳やその加工品への需要が高まりました。また、技術の革新や生産性の向上により、一定の生産量の拡大が可能になりました。
しかしながら、1980年代以降の停滞から減少には、都市化の進展や農村部の人口減少、主要生産地域の地形的課題などが影響している可能性があります。特にギリシャでは、牧草地が限られる地形の制約があり、牛の飼育に適した条件を維持することが課題となっています。さらに、世界経済のグローバル化が国際価格に影響を与える中、小規模農家が競争力を維持することも難しくなっています。
近年では、気候変動が生産に与える影響も無視できません。例えば、気温の上昇や水資源の枯渇などが牛の健康や生産効率に悪影響をもたらすケースがあります。また、2020年代初頭の新型コロナウイルス感染症による経済活動の縮小が、供給チェーンおよび生産活動に一時的な混乱をもたらした面も考慮する必要があります。
今後の課題として、ギリシャ政府や関係機関が持続可能な生産システムの導入に力を入れる必要があります。例えば、飼料自給率を高めるために地元での牧草栽培を奨励したり、牛の健康管理を強化することで生産効率を向上させる取り組みが求められるでしょう。また、国際市場への依存を減らし、地域特有の高付加価値製品(チーズ、ヨーグルトなど)を軸に輸出産業を強化することも一つの戦略です。この点で、EUの有機食品認証取得を奨励し、高品質な乳製品のブランド化を進めることが有益です。
将来的に、地政学的リスクや地域衝突が供給チェーンに影響を及ぼす可能性も考慮に入れるべきです。例えば、エネルギー価格の急激な変動や輸送コストの増大は、国内生産コストを押し上げる要因となり得ます。また、気候変動に起因する自然災害リスクが深刻化する中で、農地保全政策にも優先的に取り組むことが重要です。
結論として、ギリシャの牛乳生産量は過去と比べて減少傾向にあるものの、技術革新や従来の生産課題への着実な対策を通じて回復可能な見込みを持っています。国際機関やEUの支援を受けながら、環境持続可能性と地域経済の競争力を向上させる政策を積極的に実施することが、将来の安定生産と産業発展の鍵となるでしょう。