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ギリシャのニンジン・カブ類生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した2024年7月のデータによると、1961年から2023年にかけてのギリシャのニンジン・カブ類の生産量において、大きな変動が観察されます。かつての生産量は比較的安定しながら増加傾向にあったものの、2010年以降は大きく減少し、2023年には17,010トンとピーク時の約3分の1にまで落ち込みました。この推移は農業技術、国際市場の動向、気候変動、国内経済状況など複数の要因が複雑に絡み合った結果と見られます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 17,010
-3.9% ↓
2022年 17,700
-23.21% ↓
2021年 23,050
4.02% ↑
2020年 22,160
-0.72% ↓
2019年 22,320
-27.81% ↓
2018年 30,920
18.36% ↑
2017年 26,123
-6.73% ↓
2016年 28,007
-22.63% ↓
2015年 36,196
-3.51% ↓
2014年 37,511
-23.62% ↓
2013年 49,114
5.01% ↑
2012年 46,770
0.11% ↑
2011年 46,716
-12.65% ↓
2010年 53,483
20.01% ↑
2009年 44,567
-4.98% ↓
2008年 46,901
7.6% ↑
2007年 43,589
0.52% ↑
2006年 43,364
9.47% ↑
2005年 39,614
0.61% ↑
2004年 39,372
-8.05% ↓
2003年 42,821
24.28% ↑
2002年 34,455
-6.23% ↓
2001年 36,745
-6.8% ↓
2000年 39,427
2.03% ↑
1999年 38,643
-5.52% ↓
1998年 40,903
-7.07% ↓
1997年 44,016
2.97% ↑
1996年 42,745
7.72% ↑
1995年 39,681
16.06% ↑
1994年 34,190
-12.8% ↓
1993年 39,209
-4.6% ↓
1992年 41,100
15.13% ↑
1991年 35,700
-21.84% ↓
1990年 45,673
53.27% ↑
1989年 29,800
-5.1% ↓
1988年 31,400
-2.3% ↓
1987年 32,138
3.26% ↑
1986年 31,124
-25.35% ↓
1985年 41,691
2.54% ↑
1984年 40,658
-4.58% ↓
1983年 42,608
33.13% ↑
1982年 32,005
-3.49% ↓
1981年 33,161
5.74% ↑
1980年 31,360
18.83% ↑
1979年 26,391
-7.78% ↓
1978年 28,617
11.42% ↑
1977年 25,683
0.38% ↑
1976年 25,586
35.52% ↑
1975年 18,880
6.42% ↑
1974年 17,741
1.78% ↑
1973年 17,430
5.46% ↑
1972年 16,527
-29.23% ↓
1971年 23,352
42.39% ↑
1970年 16,400
-34.47% ↓
1969年 25,028
147.8% ↑
1968年 10,100
3.82% ↑
1967年 9,728
-8.68% ↓
1966年 10,653
17.73% ↑
1965年 9,049
9.63% ↑
1964年 8,254
-0.52% ↓
1963年 8,297
25.26% ↑
1962年 6,624
4.46% ↑
1961年 6,341 -

ギリシャのニンジン・カブ類生産量は、1960年代から安定的に増加傾向を示し、1983年には42,608トンと初の4万トン超を記録しました。その後も1990年には過去最高の45,673トンに達するなど、農業の発展や国内需要増加に伴って高い水準を維持していました。しかし、2000年代後半から特に2010年頃をピークに生産量は減少傾向を辿り、2023年には17,010トンと大幅に縮小しました。この長期間にわたる変化は、地政学的・経済的・環境的要因が大きく影響していると考えられます。

まず、ギリシャの地域特性として、地中海性気候によりニンジンやカブ類の栽培に適した環境が提供されていた点が、この国際的な農業競争において一定の優位性を持たせていました。しかし近年の気候変動により、異常な高温や干ばつが頻発しており、農作物の育成環境が不安定化しています。この気象条件の悪化が作物収穫量の低下を招いた可能性が高いです。また、2015年以降の急激な生産量の減少は、ギリシャ経済危機後の農業部門への投資縮小、および人材不足が影響している可能性があります。特に若年層の農業従事者離れや近代的な農業技術の普及遅延が課題となっています。

さらに、ヨーロッパ全体で行われている農産物市場の自由貿易化は、ギリシャにとって有利であると同時に、安価な外国産品との競争を激化させる要因ともなっています。隣国トルコや北アフリカ諸国からの安価なニンジンやカブ類が市場を占拠し、ギリシャ産の価格競争力を弱めたと推測されます。また国際的な肥料価格高騰や輸送コストの増加も、ギリシャの農業において生産費用を押し上げていると言えます。

これらに加え、新型コロナウイルス感染症の流行による農業自体の需要変動も影響しました。一時的な物流の停滞や人手不足が生産規模を縮小させ、現場にさらなる負担を強いました。このような負の連鎖は、コロナ後の回復をも難航させています。さらに地政学的リスクとして、ウクライナ侵攻などの世界的な政治不安定も肥料や農機の供給に影響を与えています。

今後の課題として、ギリシャはまず気候適応型の農業推進に力を入れる必要があります。具体的には、乾燥や高温に強い作物の開発・導入、灌漑技術のアップデート、気象データを活用した持続可能な農業法の推進などが挙げられます。また、若い担い手を支援する政策も急務です。農業労働人口が高齢化している現状を改善するためにも、補助金制度や農業教育プログラムの拡充が不可欠です。さらに、地域間の協力も重要です。EUの助成金を活用し、他の地中海性気候地域と技術交流を行うことで競争力の強化が期待できます。

結論として、ニンジン・カブ類の生産量減少は複数の課題が絡み合う中で起きた現象ですが、環境技術や政策面の改善により、ギリシャの農業セクターは再び活性化する可能性があります。そのためにも、国家レベルだけでなく、EUや国際機関と共同で戦略的な取り組みを進める必要があります。