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ギリシャのテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによれば、ギリシャのテンサイ生産量は1960年代に急速に拡大し、1970年代から1990年代にかけては高い生産量を維持していました。しかし2000年代中盤以降に持続的な減少が見られるようになり、2023年の生産量は1,180トンと記録的な低水準に達しています。これはピーク時の1989年(3,435,000トン)と比較して99%以上の減少に相当し、特に近年の急激な生産減が顕著です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,180
-76.16% ↓
2022年 4,950
-81.56% ↓
2021年 26,850
-69.83% ↓
2020年 89,000
12.13% ↑
2019年 79,370
23.49% ↑
2018年 64,270
-83.62% ↓
2017年 392,263
24.97% ↑
2016年 313,890
-11.1% ↓
2015年 353,080
-22.57% ↓
2014年 455,973
0.45% ↑
2013年 453,916
-29.93% ↓
2012年 647,827
11.41% ↑
2011年 581,483
-34.62% ↓
2010年 889,400
-36.89% ↓
2009年 1,409,250
70.19% ↑
2008年 828,025
-3.06% ↓
2007年 854,141
-55.16% ↓
2006年 1,904,788
-25.38% ↓
2005年 2,552,671
11.42% ↑
2004年 2,290,950
3.84% ↑
2003年 2,206,310
-22.14% ↓
2002年 2,833,640
-1.97% ↓
2001年 2,890,672
-4% ↓
2000年 3,010,975
24.51% ↑
1999年 2,418,325
10.17% ↑
1998年 2,195,139
-22.25% ↓
1997年 2,823,399
19.33% ↑
1996年 2,366,115
-6.99% ↓
1995年 2,544,052
-0.74% ↓
1994年 2,562,967
-14.87% ↓
1993年 3,010,632
0.35% ↑
1992年 3,000,000
16.69% ↑
1991年 2,571,000
-6.85% ↓
1990年 2,760,000
-19.65% ↓
1989年 3,435,000
71.75% ↑
1988年 2,000,000
-1.23% ↓
1987年 2,025,000
-19.52% ↓
1986年 2,516,000
0.04% ↑
1985年 2,515,000
41.69% ↑
1984年 1,775,000
-26.43% ↓
1983年 2,412,663
-1.62% ↓
1982年 2,452,321
-3.93% ↓
1981年 2,552,528
53.36% ↑
1980年 1,664,455
-39.46% ↓
1979年 2,749,221
1.11% ↑
1978年 2,718,936
15.84% ↑
1977年 2,347,145
-18.9% ↓
1976年 2,894,214
8.57% ↑
1975年 2,665,743
76.44% ↑
1974年 1,510,887
6.22% ↑
1973年 1,422,400
21.45% ↑
1972年 1,171,155
-15.16% ↓
1971年 1,380,455
1.6% ↑
1970年 1,358,715
31.11% ↑
1969年 1,036,326
50.63% ↑
1968年 687,988
-20.19% ↓
1967年 862,081
18.56% ↑
1966年 727,103
11.06% ↑
1965年 654,704
24.77% ↑
1964年 524,739
61.54% ↑
1963年 324,836
55.91% ↑
1962年 208,353
304.37% ↑
1961年 51,525 -

ギリシャのテンサイ生産量推移を振り返ると、1960年代から1970年代初頭にかけて生産量が急激に伸びたことが特徴的です。この当時、テンサイは砂糖の原料としてギリシャ国内で重要な農作物であり、新たな農業技術の導入や政府の政策的支援が生産量の増加を後押ししました。1975年の生産量は2,665,743トンとなり、それ以前の水準から大幅に躍進しました。その後も1980年代から1990年代にはほぼ200万~300万トンの生産量を維持しており、この時期がギリシャのテンサイ生産の黄金期であったと言えます。

しかしながら、2000年代に入った頃から生産量の減少が見られるようになりました。この減少の背景には、国際競争の激化や農業政策の変化、EUの共通農業政策(CAP)の影響などが挙げられます。EUの砂糖産業における競争が厳しくなる中、ギリシャのテンサイ産業は他国と比べて効率性の面で劣勢に立たされました。さらに、2007年以降から一気に生産量が激減した理由の一つには、砂糖工場閉鎖のような国内加工施設の縮小や労働力不足、農業従事者の高齢化といった内部的要因が挙げられます。

直近のデータに目を向けると、2023年時点での生産量は1961年の記録初期と比較しても非常に低い1,180トンに留まっており、テンサイ産業が現在ではほぼ壊滅的状況にあることが伺えます。この急激な減少は、ギリシャだけでなく、EU全体の砂糖産業構造の再編とも深く関係しています。域内外から安価な砂糖の輸入が進む中、ギリシャ国内でテンサイを栽培するメリットが著しく減少したと言えます。

こうした現状を踏まえると、テンサイ産業の衰退が地域経済や農村人口への影響を悪化させることが懸念されます。加えて、近年の気候変動や極端な気象条件も水産業と同じく農業生産を困難にしており、これがギリシャ全体の食品自給率や農業セクター全般に与える長期的なリスクも考慮すべきです。また、2020年代に発生した新型コロナウイルスパンデミックも、市場流通の停滞や労働力の供給難といった間接的な影響をもたらした可能性があります。

テンサイ産業の未来を展望するにあたっての課題と対策として、まず第一に、農業の持続可能性を高めるための新たな技術の導入が挙げられます。具体的には、高効率灌漑システムや品種改良の促進が考えられるでしょう。また、EUの補助金政策を最大限に活用し、小規模農家が共同協力するための組織的枠組みを強化することも必要です。さらに、特定の地域におけるテンサイの加工施設を復活させ、国内での付加価値の高い砂糖製品の生産を目指すことが推奨されます。

結論として、ギリシャのテンサイ産業は歴史的な減少傾向に直面しており、これを放置すれば農村地域の経済的困窮がさらに進む可能性があります。国内農業の再活性化を目指して、スマート農業や技術協力を通じた生産性向上を図るとともに、国内需要に即した柔軟な政策転換が求められています。また、EU全域での協力とともに、気候変動や疫病のリスクに備えた安全保障的視点での対策を検討することが重要です。