国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、ギリシャにおけるカボチャ、スクワッシュ、ヒョウタンの生産量は、1960年代から1980年代にかけて安定した成長を遂げましたが、1990年代には急激な減少を経験しました。その後2000年代前半の低迷期を経て、2017年の急上昇を記録するも、2018年以降減少傾向に転じ、2023年には48,260トンと近年最も低い水準にまで落ち込みました。この長期的な推移から、関連する背景の理解と持続可能な生産への課題が示唆されます。
ギリシャのカボチャ・スクワッシュ・ヒョウタン生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 48,260 |
-10.55% ↓
|
2022年 | 53,950 |
-11.28% ↓
|
2021年 | 60,810 |
-5.5% ↓
|
2020年 | 64,350 |
-3.15% ↓
|
2019年 | 66,440 |
-12.23% ↓
|
2018年 | 75,700 |
785.24% ↑
|
2017年 | 8,551 |
850.15% ↑
|
2016年 | 900 |
6.89% ↑
|
2015年 | 842 |
-10.62% ↓
|
2014年 | 942 |
12.27% ↑
|
2013年 | 839 |
12.56% ↑
|
2012年 | 745 |
10.77% ↑
|
2011年 | 673 |
12.85% ↑
|
2010年 | 596 |
55.07% ↑
|
2009年 | 385 |
27.61% ↑
|
2008年 | 301 |
13.6% ↑
|
2007年 | 265 |
16.05% ↑
|
2006年 | 229 |
-25.07% ↓
|
2005年 | 305 |
-29.12% ↓
|
2004年 | 430 |
-48.66% ↓
|
2003年 | 838 |
48.41% ↑
|
2002年 | 565 |
-2.11% ↓
|
2001年 | 577 |
-13.19% ↓
|
2000年 | 665 |
-7.03% ↓
|
1999年 | 715 |
-33.07% ↓
|
1998年 | 1,068 |
45.68% ↑
|
1997年 | 733 |
30.11% ↑
|
1996年 | 564 |
-13.03% ↓
|
1995年 | 648 |
-16.35% ↓
|
1994年 | 775 |
-12.26% ↓
|
1993年 | 883 |
-99.06% ↓
|
1992年 | 93,994 |
-8.83% ↓
|
1991年 | 103,100 |
9.45% ↑
|
1990年 | 94,202 |
-8.54% ↓
|
1989年 | 103,000 |
9.25% ↑
|
1988年 | 94,277 |
-2.74% ↓
|
1987年 | 96,935 |
11.02% ↑
|
1986年 | 87,316 |
5.03% ↑
|
1985年 | 83,133 |
-7.12% ↓
|
1984年 | 89,508 |
6.08% ↑
|
1983年 | 84,379 |
4.62% ↑
|
1982年 | 80,651 |
4.67% ↑
|
1981年 | 77,049 |
-6.05% ↓
|
1980年 | 82,007 |
4.9% ↑
|
1979年 | 78,177 |
3.09% ↑
|
1978年 | 75,837 |
-4.46% ↓
|
1977年 | 79,374 |
-13.77% ↓
|
1976年 | 92,053 |
23.13% ↑
|
1975年 | 74,759 |
-7.46% ↓
|
1974年 | 80,782 |
10.05% ↑
|
1973年 | 73,402 |
-4.38% ↓
|
1972年 | 76,764 |
7.21% ↑
|
1971年 | 71,603 |
-3.83% ↓
|
1970年 | 74,457 |
13.35% ↑
|
1969年 | 65,690 |
-21.6% ↓
|
1968年 | 83,787 |
49.8% ↑
|
1967年 | 55,934 |
-3.27% ↓
|
1966年 | 57,823 |
14.54% ↑
|
1965年 | 50,484 |
1.27% ↑
|
1964年 | 49,849 |
8.4% ↑
|
1963年 | 45,985 |
4.63% ↑
|
1962年 | 43,950 |
1.28% ↑
|
1961年 | 43,396 | - |
ギリシャのカボチャ、スクワッシュ、ヒョウタンの生産量推移を観察すると、どの時期においても社会的、経済的、地政学的要因が深く影響を与えていることが読み取れます。1960年代から1980年代にかけて、生産量は概ね安定した増加を見せています。この時期、ギリシャは農業の近代化とともに自給自足の向上に努め、栽培面積や技術の改良が進みました。この結果、1989年には103,000トンと最高峰の生産量に達しています。
しかし1990年代に入り、生産量は驚くべき急落を記録します。特に1993年から2007年の間では、1,000トンを超える年はほぼなく、一部の年では500トン以下という極めて低いレベルにまで縮小しました。この背景には、1990年代における農産物市場の自由化や、同時期のEU加盟による農業政策の転換が関与していると考えられます。ギリシャの農業は補助金や労働力依存が強いため、過剰な競争や需給の不安定さに対処する適応力に欠け、効率的な生産基盤を確立できなかったことが顕著に表れたと言えます。
2008年以降はわずかながら回復の兆候を見せ、2017年には短期的なピークとなる8,551トンに達しました。しかしその後、2018年には75,700トンと急騰を見せるも、2019年以降は再び減少傾向へ転じています。この不安定な推移は、欧州全体を巻き込んだ金融危機や、近年の新型コロナウイルス感染症の影響による農業従事者や物流の不足が深刻な打撃を与えた結果と考えられます。
今後の課題として、ギリシャのカボチャ、スクワッシュ、ヒョウタンの生産には、以下の点を中心にした対策が必要です。第一に、持続可能な農業基盤の整備が挙げられます。特に高齢化が進む農業労働力の補充のためには、若年層や移民を対象とした労働環境の改善や支援制度の充実が求められます。第二に、地理的および気候要因を活用した高付加価値品の開発です。ギリシャ特有の気候を活かした有機栽培の推進や、高価格帯市場向けのブランド価値の構築が鍵になります。
また、地政学的リスクも考慮する必要があります。近隣諸国との関係悪化や貿易ルートの不安定化は、農業製品の輸出や物流へ直接的な影響を及ぼします。これを緩和するためには、地域間協力や適切な外交政策が不可欠です。
ギリシャの事例は、日本を含む他国の農業政策にも示唆を与えます。一例として、日本でも地方の若者離れや農業従事者の高齢化が問題となっていますが、ギリシャのような不安定な推移を避けつつ、地域特産品を活かした持続可能なモデル作りが重要と言えます。国際的には、FAOやEU、地域政府が連携し、農業の現代化や資金援助を基盤とした長期的な解決策を提示することが求められます。
結論として、ギリシャにおけるカボチャ、スクワッシュ、ヒョウタンの生産量推移は、農業の多くの側面に関する教訓を提供します。このデータの分析を踏まえ、国内外を問わず、持続可能な農業と効率的な政策の重要性が再確認されるべきです。