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ギリシャの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ギリシャの羊肉生産量は、1961年から2000年代初頭にかけて着実に増加し、2003年には96,985トンと記録的な高水準に達しました。しかし、2014年以降、大幅な減少傾向が見られ、2023年には53,890トンと、2000年代前半のピーク時の約55%にまで減少しています。この減少傾向は、経済的、地政学的、そして気候的要因が影響している可能性があります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 53,890
-9.25% ↓
2022年 59,380
-6.9% ↓
2021年 63,780
5.21% ↑
2020年 60,620
-4.49% ↓
2019年 63,470
1.71% ↑
2018年 62,400
15.73% ↑
2017年 53,918
-6.22% ↓
2016年 57,492
1.34% ↑
2015年 56,732
-15.76% ↓
2014年 67,345
-25.06% ↓
2013年 89,859
-2.31% ↓
2012年 91,986
-0.8% ↓
2011年 92,726
-2.17% ↓
2010年 94,783
0.7% ↑
2009年 94,123
0.65% ↑
2008年 93,519
1% ↑
2007年 92,597
-1.85% ↓
2006年 94,340
2% ↑
2005年 92,487
-1.12% ↓
2004年 93,538
-3.55% ↓
2003年 96,985
0.83% ↑
2002年 96,183
2.92% ↑
2001年 93,451
0.03% ↑
2000年 93,422
4.35% ↑
1999年 89,530
-0.61% ↓
1998年 90,079
0.69% ↑
1997年 89,463
-1.86% ↓
1996年 91,156
0.86% ↑
1995年 90,376
1.34% ↑
1994年 89,178
0.33% ↑
1993年 88,882
0.96% ↑
1992年 88,033
-0.24% ↓
1991年 88,247
-1.57% ↓
1990年 89,652
1.63% ↑
1989年 88,214
4.04% ↑
1988年 84,786
0.88% ↑
1987年 84,044
4.37% ↑
1986年 80,524
-1.5% ↓
1985年 81,749
-0.65% ↓
1984年 82,284
2% ↑
1983年 80,671
1.02% ↑
1982年 79,854
-0.36% ↓
1981年 80,145
-1.01% ↓
1980年 80,959
-0.87% ↓
1979年 81,666
2.1% ↑
1978年 79,983
0.7% ↑
1977年 79,428
0.6% ↑
1976年 78,951
3.53% ↑
1975年 76,259
2.66% ↑
1974年 74,286
6.47% ↑
1973年 69,775
6.92% ↑
1972年 65,261
3.23% ↑
1971年 63,216
5.53% ↑
1970年 59,901
1.9% ↑
1969年 58,782
5.18% ↑
1968年 55,887
-1.7% ↓
1967年 56,851
2.85% ↑
1966年 55,273
3.76% ↑
1965年 53,270
3.84% ↑
1964年 51,302
2.82% ↑
1963年 49,893
3.37% ↑
1962年 48,265
7.61% ↑
1961年 44,851 -

ギリシャの羊肉生産量は、1960年代の44,851トンから始まり、長期間にわたり増加が続きました。特に1970年代後半から1980年代後半にかけては、ギリシャ国内の農業生産の改善とともに着実な成長が見られ、1990年代にはほぼ90,000トンを超える安定した水準に到達しました。特に2003年には96,985トンと最高記録をマークしており、この時期は羊肉産業がギリシャの畜産業において重要な位置を占めていました。この増加には、ギリシャにおける羊肉の伝統的な需要の高さや農業政策が影響していたと考えられます。

しかし、2014年以降、生産量が急激に減少し、特に2015年には56,732トンとそれ以前のほぼ半分に落ち込む結果となりました。この背景には、2009年以降のギリシャの債務危機による深刻な経済問題が及ぼした影響が関連している可能性があります。経済危機により、羊肉生産に必要な飼料や設備のコストが増加し、生産者の経済的な余裕が縮小したことが主な要因と考えられます。また、この危機のなかで多くの家畜農家が廃業を余儀なくされ、経済回復後でも畜産産業全体の回復が進んでいないことが、現在の低迷につながっています。

さらに、気候変動による干ばつや気温上昇が草地や牧草育成への影響を及ぼし、ギリシャ特有の放牧型畜産が圧迫を受けている可能性も指摘されます。また、地政学的リスクとして、食糧自給率の低下が長期的に地域の安定に直接的な影響を及ぼす懸念もあります。特に、ロシア・ウクライナ紛争による飼料価格の高騰や供給の不安定化が、羊肉生産者にさらなる負担を強いていると言えるでしょう。

こうした低迷を乗り越えるためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、EUや国際機関と連携し、農業補助金や支援プログラムを拡充することが重要です。若手農業従事者を育成し、畜産技術の近代化や効率化を支援することで、羊肉生産の持続可能性を高めるべきです。また、気候変動に対応した牧草地管理の改善や環境に配慮した畜産技術への投資が急務とされています。これに加えて、地元市場だけでなく輸出市場を視野に入れたブランディング戦略を進めることも、長期的な産業成長に寄与すると予測されます。

さらに、ギリシャ国内の羊肉消費促進策に加え、主要輸出市場である欧州諸国への輸出拡大を目指した仕組み作りが必要です。ドイツやフランスでは、高品質で地域特有の食材を求める需要があり、これをターゲットとした販売促進活動が有効でしょう。

結論として、ギリシャの羊肉生産量は、多くの要因が絡み合った結果として現在の低水準にとどまっています。この課題を乗り越えるためには、農業政策の抜本的な見直しと国際的な協力体制の強化が不可欠です。また、経済危機後の回復基盤に加え、地政学的および気候的課題への適応策も重要です。今後、地域社会の持続可能性を維持しつつ、農業生産を回復させるには、多角的な戦略の実行が求められます。