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ギリシャのサワーチェリー生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによれば、ギリシャのサワーチェリー生産量は長期間で大きな変動を見せてきました。1960年代後半から1980年代前半にかけては高い生産量を維持していましたが、その後急激な減少傾向に転じ、2023年の生産量は580トンと、過去60年間で最も低い水準となっています。ただし、2022年には1,120トンに一時的に回復する動きも見られましたが、再び下降傾向にあります。この推移は農業政策、気候変化、地域の経済事情などが複雑に絡み合った結果と考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 580
-48.21% ↓
2022年 1,120
62.32% ↑
2021年 690
9.52% ↑
2020年 630
6.78% ↑
2019年 590
-35.16% ↓
2018年 910
-40.56% ↓
2017年 1,531
-12.49% ↓
2016年 1,750
-13.86% ↓
2015年 2,031
4.1% ↑
2014年 1,951
-21.45% ↓
2013年 2,484
1.31% ↑
2012年 2,452
-1.81% ↓
2011年 2,497
9.34% ↑
2010年 2,284
-2.27% ↓
2009年 2,337
-9.34% ↓
2008年 2,578
13.76% ↑
2007年 2,266
-3.42% ↓
2006年 2,346
18.19% ↑
2005年 1,985
-8.53% ↓
2004年 2,170
-17.74% ↓
2003年 2,638
24.79% ↑
2002年 2,114
-31.01% ↓
2001年 3,064
-11.98% ↓
2000年 3,481
12.98% ↑
1999年 3,081
12.16% ↑
1998年 2,747
-2.85% ↓
1997年 2,828
-10.78% ↓
1996年 3,169
3.37% ↑
1995年 3,066
-14.12% ↓
1994年 3,570
-1.46% ↓
1993年 3,623
-6.14% ↓
1992年 3,860
125.6% ↑
1991年 1,711
-39.6% ↓
1990年 2,833
-26.38% ↓
1989年 3,848
-13.63% ↓
1988年 4,455
-20.91% ↓
1987年 5,633
-15.17% ↓
1986年 6,640
-10.28% ↓
1985年 7,401
29.12% ↑
1984年 5,732
-51.7% ↓
1983年 11,868
58.79% ↑
1982年 7,474
-15.84% ↓
1981年 8,881
15.19% ↑
1980年 7,710
9.28% ↑
1979年 7,055
41.1% ↑
1978年 5,000
-9.52% ↓
1977年 5,526
-26.59% ↓
1976年 7,528
47.9% ↑
1975年 5,090
-33.9% ↓
1974年 7,700
-18.99% ↓
1973年 9,505
19.11% ↑
1972年 7,980
-14.26% ↓
1971年 9,307
4.08% ↑
1970年 8,942
-15.61% ↓
1969年 10,596
47.91% ↑
1968年 7,164
-1.86% ↓
1967年 7,300
-2.03% ↓
1966年 7,451
33.48% ↑
1965年 5,582
-4.48% ↓
1964年 5,844
28.05% ↑
1963年 4,564
-11.65% ↓
1962年 5,166
27.12% ↑
1961年 4,064 -

ギリシャは古くから農業が盛んな地中海性気候の国であり、その多様な農作物の一つとしてサワーチェリーを生産してきました。しかし、1960年代から現在までの生産量データを見てみると、サワーチェリー生産量は大きな波を描きながら長期的に減少していることが分かります。特に1983年の11,868トンをピークとして、1990年代以降は年間3,000トンを下回る低迷期が続き、2019年以降はいずれの年も1,000トン未満かそれに近い生産量となっています。

この減少の要因にはいくつかの背景が考えられます。第一に、地域の農業構造の変化と経済的要因が挙げられます。ギリシャではEU加盟後に農業補助金政策の見直しが行われ、作物間の競争力が見直された結果、収益性が高い他作物への転換が進んだとみられます。加えて、1990年代以降の急激な景気後退や2009年の政府財政危機により、農業分野が大きな影響を受けました。労働力の不足や設備投資の停滞は、果樹栽培全体の競争力を著しく低下させました。

環境面でも、地中海地域特有の乾燥化が進んでおり、降水量の減少および気温変化がサワーチェリー農業に不利に働いています。また、近年では気候変動による極端な天候や予測不能な霜害が、生育期の開花や結実に悪影響を及ぼしています。たとえば2018年からの急激な生産量減少は、このような気象条件の悪化が主因と推測されています。

さらに、グローバルな市場競争もギリシャのサワーチェリー生産を圧迫しています。特に、チェリーの主要輸出国であるトルコやポーランドなどがライバルとして登場し、安価かつ供給量豊富な製品を市場に提供することで、ギリシャ製品の競争力が相対的に低下しました。

現状を改善するためにはいくつかの課題と提案が考えられます。まず、ギリシャ国内の農業技術の近代化が急務です。農業機械や灌漑設備への投資を進めることで、気象条件への適応力を高める必要があります。また、サワーチェリー栽培に特化した研究開発を進め、品種改良を行うことで、乾燥・高温環境に耐性を持つ新品種の育成を目指すべきです。同時に、生産者への技術アドバイスや市場情報の提供を行う仕組みを整備することで、多様な問題に対応する力を生産者に提供することが考えられます。

地域間協力や農業政策の見直しも重要です。EU内での補助金制度を活用し、サワーチェリーを特産品の一つとして再評価し、地元ブランドとしての付加価値を高める試みが求められるでしょう。また、輸出市場において競争力を確保するためには、オーガニック農業や加工食品産業への転換など、新しい付加価値創出の取り組みも考慮すべきです。

最後に、地政学的リスクや地域衝突についても無視することはできません。他の地中海諸国との協力体制を強化し、平和的な地域間経済協力を推進することが、農業の安定にもつながります。さらに、気候変動に対する国際的な連携や資金援助を受ける形での農業再建も視野に入れるべきです。

サワーチェリー生産量の大幅な減少はギリシャ農業の課題を端的に示しています。しかし適切な技術革新と政策の推進、そしてグローバルマーケットへの柔軟な対応を行うことで、再び生産量を回復させる可能性が残されているといえます。ギリシャ政府および地域の農業従事者が一体となり、持続可能な農業の実現を目指す取り組みが今こそ求められる時代です。

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