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フランスの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

フランスの牛乳生産量は1961年から2023年にかけて長期的に推移を続けています。初期には増加傾向が顕著でしたが、その後1980年代中盤以降は減少と横ばいが断続的に続く傾向が見られます。2020年にわずかな回復を示したものの、2021年以降は再び減少傾向にあり、2023年には23,882,000トンと直近のピークである2016年(25,627,060トン)から減少傾向が続いています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 23,882,000
-0.36% ↓
2022年 23,967,960
-3.2% ↓
2021年 24,760,620
-1.88% ↓
2020年 25,234,840
0.69% ↑
2019年 25,062,000
0.03% ↑
2018年 25,055,100
-1.9% ↓
2017年 25,539,489
-0.34% ↓
2016年 25,627,060
2.23% ↑
2015年 25,068,226
0.36% ↑
2014年 24,978,950
5.19% ↑
2013年 23,747,341
-1.05% ↓
2012年 23,998,422
-1.49% ↓
2011年 24,361,094
4.55% ↑
2010年 23,301,219
2.86% ↑
2009年 22,653,085
-3.87% ↓
2008年 23,564,860
3.5% ↑
2007年 22,768,719
0.41% ↑
2006年 22,674,753
-1.96% ↓
2005年 23,128,947
1.94% ↑
2004年 22,689,836
-0.96% ↓
2003年 22,910,911
-2.24% ↓
2002年 23,435,685
1.57% ↑
2001年 23,074,188
-0.39% ↓
2000年 23,165,509
0.68% ↑
1999年 23,010,060
0.14% ↑
1998年 22,979,013
-0.04% ↓
1997年 22,988,724
-0.7% ↓
1996年 23,151,250
-1.45% ↓
1995年 23,492,580
0.46% ↑
1994年 23,385,356
1.51% ↑
1993年 23,037,769
-1.21% ↓
1992年 23,319,965
-1.61% ↓
1991年 23,702,111
-9.31% ↓
1990年 26,135,590
-0.88% ↓
1989年 26,368,000
-0.99% ↓
1988年 26,631,840
-2.56% ↓
1987年 27,331,552
-3.52% ↓
1986年 28,330,128
1.88% ↑
1985年 27,808,112
-2.36% ↓
1984年 28,479,056
0.36% ↑
1983年 28,376,000
1.58% ↑
1982年 27,934,000
1.91% ↑
1981年 27,411,328
0.44% ↑
1980年 27,292,000
2.8% ↑
1979年 26,549,008
5.06% ↑
1978年 25,270,000
2.48% ↑
1977年 24,658,208
1.86% ↑
1976年 24,208,800
-0.18% ↓
1975年 24,253,600
0.18% ↑
1974年 24,210,496 -
1973年 24,211,008
1.41% ↑
1972年 23,873,296
5.11% ↑
1971年 22,711,808
1.04% ↑
1970年 22,477,504
-1.25% ↓
1969年 22,762,000
-1.36% ↓
1968年 23,076,608
4.5% ↑
1967年 22,083,008
5.62% ↑
1966年 20,908,096
3.66% ↑
1965年 20,169,600
6.87% ↑
1964年 18,873,600
-1.89% ↓
1963年 19,236,608
3.65% ↑
1962年 18,558,896
-2.68% ↓
1961年 19,069,296 -

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、フランスの牛乳生産量はここ60年間、その動向が様々な経済的、地政学的、そして気候要因により変動しています。1960年代から1980年代にかけては技術革新や農業政策の整備、そしてEU内での政策的支援に伴い、生産量が増加してきました。特に1984年には28,479,056トンに達し、同期間のピークを迎えました。しかしその後、EU内での「ミルククォータ」政策が施行され、過剰生産を抑制する目的で生産量の制限がかけられたことが、生産量減少の主な要因として挙げられます。

2000年代以降、牛乳の生産量は大きな変動は見られないものの、23,000,000トン台で横ばいを続けました。しかし、2010年代以降に入ると、生産効率向上や新たな需要先(特にアジア市場)への輸出拡大による影響で、再び生産量が漸増する動きも見られました。2020年、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が発生し、農畜産業にも大きな影響が及びましたが、フランスの牛乳生産量はむしろわずかな回復を示しており、この期間中の消費と供給が相対的に安定していたことを示しています。しかし、その後の2021年以降は環境的および経済的な課題の影響と見られる低下が観察され、現在の2023年時点の数値は23,882,000トンと近年の最小値を示しています。

背景要因の一つとして、近年の気候変動の影響が挙げられます。フランスは干ばつや猛暑といった極端な気象イベントの増加に見舞われており、これが酪農用牧草地の品質や乳牛の健康状態に影響を与えています。また、EU全体での政策変化として、持続可能性を重視した環境政策や低炭素経済の推進が酪農業に新たなコストを課していることも無視できない要因です。労働力不足の問題や農業人口の高齢化も深刻化しており、地域ごとの小規模酪農家が維持・運営の困難に直面しています。

今後の課題として、自国消費と輸出のバランスを取りつつ、持続可能な酪農業への転換を推進する必要があります。第一に、生産現場での技術革新を進めることが求められます。たとえば、気候変動に強い牧草や飼料の研究と採用、新しい畜産管理方法の普及が重要です。第二に、若い世代が農業に従事するための雇用支援策や助成金の拡充も検討すべきでしょう。EUとの連携強化やフランス国内での政策整備によって、効率的で環境に優しい酪農モデルの導入を目指す必要があります。

また、フランスと輸出相手国との地政学的な関係も牛乳生産の安定に影響しています。アジア諸国を中心とした輸出市場の維持・拡大には、二国間協定や自由貿易協定の締結が重要です。他方で、ロシア・ウクライナ紛争などの国際情勢も乳製品市場に影響を与える可能性が高く、この点についても柔軟な対応策が求められます。

結論として、フランスの牛乳生産を安定・発展させるためには、環境・経済・労働力という3つの視点から包括的な戦略を立てる必要があるといえます。政策面では、酪農家に対する直接支援の強化、気候変動への適応策の推進、若手農業者の参入促進などがポイントとなるでしょう。さらに、国際市場での競争力を強化するための輸出政策の見直しも重要なテーマといえます。