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フランスの桃(モモ)・ネクタリン生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、フランスの桃・ネクタリン生産量は、1960年代から1970年代にかけて急増したあと変動を経て減少傾向が続いています。2023年の生産量は222,790トンで、全体のピークである1971年の713,680トンの約31%にまで縮小しています。この減少背景には、気候変動、生産コストの増加、農地利用の変化など複数の要因が絡んでいます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 222,790
-3.98% ↓
2022年 232,030
31.96% ↑
2021年 175,840
-24.89% ↓
2020年 234,100
15.42% ↑
2019年 202,820
10.19% ↑
2018年 184,070
-17.03% ↓
2017年 221,853
7.17% ↑
2016年 207,004
-4.67% ↓
2015年 217,146
-7.42% ↓
2014年 234,551
6.83% ↑
2013年 219,550
-14.58% ↓
2012年 257,038
-8.76% ↓
2011年 281,704
-6.44% ↓
2010年 301,096
-13.54% ↓
2009年 348,231
16.43% ↑
2008年 299,096
-16.53% ↓
2007年 358,321
-7.49% ↓
2006年 387,334
0.45% ↑
2005年 385,603
4.71% ↑
2004年 368,242
11.11% ↑
2003年 331,434
-26.22% ↓
2002年 449,230
5.84% ↑
2001年 424,447
-8.5% ↓
2000年 463,853
-3.44% ↓
1999年 480,387
39.33% ↑
1998年 344,776
-25.85% ↓
1997年 464,967
0.29% ↑
1996年 463,602
-12.27% ↓
1995年 528,455
0.35% ↑
1994年 526,618
30.3% ↑
1993年 404,171
-22.74% ↓
1992年 523,130
28.58% ↑
1991年 406,853
-17.29% ↓
1990年 491,932
-6.45% ↓
1989年 525,853
16.47% ↑
1988年 451,500
-7.46% ↓
1987年 487,900
3.13% ↑
1986年 473,100
-3.07% ↓
1985年 488,100
1.16% ↑
1984年 482,500
2.35% ↑
1983年 471,400
13.97% ↑
1982年 413,600
-13.91% ↓
1981年 480,400
4.55% ↑
1980年 459,500
4.91% ↑
1979年 438,000
1.15% ↑
1978年 433,000
20.39% ↑
1977年 359,670
-37.3% ↓
1976年 573,680
386.83% ↑
1975年 117,840
-79.35% ↓
1974年 570,700
-8.94% ↓
1973年 626,720
6.96% ↑
1972年 585,930
-17.9% ↓
1971年 713,680
46.18% ↑
1970年 488,230
-6.44% ↓
1969年 521,850
-15.13% ↓
1968年 614,910
44.69% ↑
1967年 424,970
33.6% ↑
1966年 318,100
-34.37% ↓
1965年 484,720
16.77% ↑
1964年 415,100
-8.88% ↓
1963年 455,550
46.99% ↑
1962年 309,910
-4.65% ↓
1961年 325,010 -

フランスにおける桃・ネクタリンの生産は、1960年代から1970年代にかけて成長期を迎え、生産量が619,000トンを超える年もありました。この時期の増加は、農地拡大や栽培技術の向上、国内および欧州市場での需要の高まりが主要要因となっています。一方で1975年には117,840トンと大幅に減少しましたが、これは主に天候不順が影響したと推測されます。その後1980年代から1990年代にかけて、生産量は約400,000~500,000トンの範囲で比較的安定したものの、2000年代以降から顕著に減少が見られるようになりました。

減少傾向の要因として、20世紀後半から進行している気候変動が特に挙げられます。たとえばフランス南部における急激な気温上昇や異常気象の頻発が、桃やネクタリンの栽培に深刻な影響を及ぼしていると言えます。また霜害や干ばつの被害も深刻で、生産者にとってリスク増加となっています。同時に、農業従事者の減少や農地の都市化への転用、特に競合果実(リンゴやブドウなど)への生産シフトが生産量縮小の要因となっています。

さらに、コストの高騰も収益性に影響を与えています。桃やネクタリンは手作業での収穫が必要なため人件費が高くなる傾向があり、特に欧州が抱える高賃金構造がフランスの生産コストを押し上げています。他の果実や海外からの果実輸入(スペインやイタリア、他にもトルコやモロッコなどコスト競争力の高い地域)との価格競争も厳しい状況をさらに複雑にしています。

一方で、2020年以降わずかながら生産量が回復傾向を見せているのは注目すべき点です。これは主に政策的支援や気候対応型農業の採用、そしてエコ栽培への転換といった新しい取り組みが奏功している可能性があります。特に政府による補助金制度や温室栽培技術の導入が生産者を支援する施策として寄与しています。

フランスの桃・ネクタリン産業が持続的な復興を目指すには、まず農業従事者を支援する包括的な政策の強化が重要です。その一環として、高温や乾燥、霜害などに対応する耐性品種の研究開発および普及が急務といえます。また、小規模農家の収益性を高めるため、地元消費の促進や付加価値の高いラベル(例:有機認証や地理的表示)を活用する戦略も有効です。加えて、EU全体での協力による市場開拓や、輸入果実との競争力を向上させるための品質管理・ブランド戦略の構築も見逃せません。

地政学的リスクとしては、欧州内での食料供給バランスの変化が挙げられます。特に気候変動と地理的条件による影響が地域間の生産力格差を広げ、フランス産果実に対する依存が揺らぐ可能性があります。また地域衝突やエネルギー価格の高騰は、農業資材調達や物流コストの上昇に直結し、生産効率に悪影響を及ぼすでしょう。これを避けるためにも、国境を越えた研究協力体制や、持続可能な農業実践を促進する国際機関との連携が課題解決につながると期待されます。

結論として、フランスの桃・ネクタリン生産は依然として困難な状況に直面していますが、新技術の活用や政策支援、地域協力の推進によって逆転の可能性も残されています。特に気候や市場変化への適応力を高める取り組みがカギとなり、これにより持続可能な生産モデルへの移行を実現することができるでしょう。