国際連合食糧農業機関(FAO)が提供する最新データによれば、フランスのブルーベリー生産量は、1960年代から2022年にかけて多様な推移を見せています。1960年代には年間10,000〜15,000トンを記録した後、1980年代から90年代にかけて停滞期を経験したものの、2000年代中盤に成長期を迎え一時的に20,000トン近くに達しました。しかし2010年代以降、生産量は再び減少傾向を示しており、2022年には7,611トンと大きく落ち込んでいます。この変化には複数の要因があり、地政学的リスクや気候変動、農業政策が密接に関連している可能性があります。
フランスのブルーベリー生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 10,545 |
38.55% ↑
|
2022年 | 7,611 |
-4.97% ↓
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2021年 | 8,009 |
1.62% ↑
|
2020年 | 7,881 |
-13.65% ↓
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2018年 | 9,127 |
7.43% ↑
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2017年 | 8,496 |
26.69% ↑
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2016年 | 6,706 |
-30.25% ↓
|
2015年 | 9,613 |
-6.31% ↓
|
2014年 | 10,260 |
12.5% ↑
|
2013年 | 9,120 |
11.75% ↑
|
2012年 | 8,161 |
-12.99% ↓
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2011年 | 9,379 |
-14.74% ↓
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2010年 | 11,001 |
-44.69% ↓
|
2009年 | 19,890 |
-0.55% ↓
|
2008年 | 20,000 |
5.26% ↑
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2007年 | 19,000 |
5.56% ↑
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2006年 | 18,000 | - |
2005年 | 18,000 |
12.5% ↑
|
2004年 | 16,000 | - |
2003年 | 16,000 | - |
2002年 | 16,000 | - |
2001年 | 16,000 |
6.67% ↑
|
2000年 | 15,000 | - |
1999年 | 15,000 |
7.14% ↑
|
1998年 | 14,000 | - |
1997年 | 14,000 |
7.69% ↑
|
1996年 | 13,000 |
30% ↑
|
1995年 | 10,000 |
-9.09% ↓
|
1994年 | 11,000 |
10% ↑
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1993年 | 10,000 | - |
1992年 | 10,000 | - |
1991年 | 10,000 | - |
1990年 | 10,000 | - |
1989年 | 10,000 | - |
1988年 | 10,000 | - |
1987年 | 10,000 | - |
1986年 | 10,000 | - |
1985年 | 10,000 | - |
1984年 | 10,000 | - |
1983年 | 10,000 | - |
1982年 | 10,000 | - |
1981年 | 10,000 | - |
1980年 | 10,000 | - |
1979年 | 10,000 | - |
1978年 | 10,000 | - |
1977年 | 10,000 | - |
1976年 | 10,000 | - |
1975年 | 10,000 | - |
1974年 | 10,000 |
-16.67% ↓
|
1973年 | 12,000 |
20% ↑
|
1972年 | 10,000 | - |
1971年 | 10,000 | - |
1970年 | 10,000 | - |
1969年 | 10,000 |
-33.33% ↓
|
1968年 | 15,000 | - |
1967年 | 15,000 | - |
1966年 | 15,000 |
15.38% ↑
|
1965年 | 13,000 | - |
1964年 | 13,000 | - |
1963年 | 13,000 |
30% ↑
|
1962年 | 10,000 | - |
1961年 | 10,000 | - |
フランスのブルーベリー生産量推移を振り返ると、1960年代初期にはおおよそ年間10,000トン程度の生産量で安定していました。その後、13,000〜15,000トンへと緩やかに増加した時期が見られる一方、1969年以降、生産量は再び10,000トンに戻り、それが1990年代まで続きます。この時期の停滞は、フランスの農業政策がブルーベリーのような特定果実作物の優先度を高めなかったことが関係している可能性があります。
2000年代に入ると、ブルーベリー生産は再び増加し、2005年の18,000トン、2008年の20,000トンという過去最高水準を記録しました。この成長は、ブルーベリーの健康への効果に基づく世界的需要の増加や、EUにおける農業技術の近代化支援政策が影響していると考えられます。特に、アントシアニン含有量の多さが注目され、「スーパーフード」としての市場価値の上昇が、この時期の生産の拡大につながったとも推察されます。
一方で、2010年代に入るとブルーベリー生産は再び低迷しました。2010年には11,001トンを記録したものの、その後急降下し、2016年には6,706トンまで落ち込みました。これは、気候変動に伴う極端気象や害虫被害の増加、さらにはブルーベリー栽培農家の高齢化が大きな要因となっている可能性があります。同時期、フランス国内の農地利用競争が激化し、別の収益性の高い作物や工業用途の生産のためにブルーベリー栽培面積が縮小したことも影響しています。
現在の生産量は2022年の7,611トンという厳しい水準にとどまっています。この減少傾向が今後も続けば、国内需要を自国生産でまかなうことが難しくなり、輸入への依存度が高まる可能性があります。特に中国やアメリカでは、近年ブルーベリーの大規模集中的な生産が盛んであり、フランスや欧州諸国への輸出シェアを伸ばしています。日本や韓国でも健康志向の高まりから消費が増加しており、国際市場での競争からフランス産ブルーベリーの価格競争力が低下する危険性があります。
フランスのブルーベリー生産の持続可能性を確保するためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず第一に、気候変動に対処するための農業技術の導入と、耐候性のあるブルーベリー品種の開発を加速させることが重要です。さらに、若年層の農業従事者を増やすためのインセンティブを提供する農業方針も必要不可欠です。たとえば、農業研修のための助成金や、小規模農家向けの金融支援を充実させる政策が考えられます。
また、地政学的背景として、EU内の農業補助金政策や国際貿易の変化が重要なポイントです。ブルーベリーの競争力を高めるために、域内協力枠組みを強化し、他のEU諸国との共同研究・輸出促進を進めることも望まれます。ブルーベリーの健康効果をさらに周知し、付加価値を高めるためのマーケティング戦略を確立することも必要といえるでしょう。
今後は、国内生産量の回復を図るだけでなく、国際競争に打ち勝てる農業システムを構築することもフランスにとって避けては通れない道です。気候変動や地政学的リスクに対応した農業改革により、ブルーベリーの持続可能な増産と国際市場での地位向上を目指すべきです。