国連食糧農業機関(FAO)による2024年7月更新のデータに基づくと、フランスのトウモロコシ生産量は1961年のおよそ248万トンから2022年の1087万トンに大きな変化を遂げています。生産量は特に1970年代から1990年代にかけて急上昇を続け、1997年には最高値の1653万トンに達しました。しかしその後は大きな変動を見せつつ、近年では全体的に減少傾向がみられます。2022年時点では過去10年間で最も低い生産量となっています。
フランスのトウモロコシ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 10,877,190 |
2021年 | 15,358,290 |
2020年 | 13,726,410 |
2019年 | 12,845,020 |
2018年 | 12,580,430 |
2017年 | 14,534,897 |
2016年 | 11,839,729 |
2015年 | 13,716,048 |
2014年 | 18,343,320 |
2013年 | 15,041,226 |
2012年 | 15,393,497 |
2011年 | 15,914,121 |
2010年 | 13,975,285 |
2009年 | 15,513,841 |
2008年 | 16,037,988 |
2007年 | 14,505,519 |
2006年 | 12,903,719 |
2005年 | 13,689,322 |
2004年 | 16,375,868 |
2003年 | 12,045,464 |
2002年 | 16,418,383 |
2001年 | 16,420,735 |
2000年 | 16,018,168 |
1999年 | 15,354,735 |
1998年 | 14,885,495 |
1997年 | 16,534,988 |
1996年 | 14,318,928 |
1995年 | 12,583,866 |
1994年 | 12,816,279 |
1993年 | 14,726,035 |
1992年 | 14,822,657 |
1991年 | 12,796,831 |
1990年 | 9,400,500 |
1989年 | 13,347,900 |
1988年 | 14,698,600 |
1987年 | 12,470,000 |
1986年 | 11,641,000 |
1985年 | 12,409,000 |
1984年 | 10,493,000 |
1983年 | 10,525,000 |
1982年 | 10,400,200 |
1981年 | 9,145,800 |
1980年 | 9,323,400 |
1979年 | 10,413,000 |
1978年 | 9,531,000 |
1977年 | 8,506,780 |
1976年 | 5,625,000 |
1975年 | 8,209,000 |
1974年 | 8,698,000 |
1973年 | 10,698,000 |
1972年 | 8,257,000 |
1971年 | 8,962,000 |
1970年 | 7,491,000 |
1969年 | 5,730,000 |
1968年 | 5,389,580 |
1967年 | 4,152,190 |
1966年 | 4,340,200 |
1965年 | 3,467,800 |
1964年 | 2,108,800 |
1963年 | 3,877,070 |
1962年 | 1,866,560 |
1961年 | 2,480,000 |
フランスのトウモロコシ生産量は、1960年代から現代に至るまで国の農業政策や技術革新、気候要因、ヨーロッパ全体の経済情勢などに影響されて推移してきました。例えば、1960年代後半以降は農業用機械化の進展や化学肥料の使用拡大によって、急激な生産量増加を見せました。さらに1970年代には欧州共同体(現在のEU)への包含による貿易の自由化が進み、トウモロコシの生産が重要な輸出産業として位置づけられました。この時期には特に1973年の約1069万トンや1992年の1482万トンといった高い記録が達成されています。
しかし、2000年代に入り環境保護に対する規制強化や気候変動の影響が顕著になりました。乾燥地帯に依存した農業では水資源の不足が生産に制約をもたらし、異常気象なども収量減少の一因となったと考えられます。例えば、2003年のような例外的な猛暑(「ヒートウェーブ」とも呼ばれる)は1200万トン程度まで生産が落ち込む要因となりました。近年も同様に、気温上昇や干ばつが影響を及ぼしており、2022年の生産量は1087万トンと、この10年間で最も低い水準にまで下がっています。
フランスはEU域内だけでなく、世界的にもトウモロコシの主要な生産国のひとつですが、その役割には課題があります。例えば、同じEU諸国の中でドイツやハンガリーなどの競争国との輸出競争が激化しています。また世界規模で見ると、中国やアメリカといった大規模生産国とは生産規模や効率の面で大きな開きがあります。特にアメリカはトウモロコシのバイオエタノールへの利用も進めており、生産量でも圧倒的な差を示しています。
さらに、地政学的なリスクもフランスのトウモロコシ生産に間接的な影響を与えています。例えば、ウクライナ紛争の影響で東欧諸国からの安価な穀物供給に乱れが生じ、これが価格高騰や輸出競争に結びついています。このような状況はフランス農業の競争力を抑制する可能性があります。
こうした課題を踏まえ、今後フランスがトウモロコシ生産を安定的に維持・発展させるためには、いくつか具体的な対策が求められます。第一に、気候変動に適応した農業技術の導入が重要です。具体的には、耐干ばつ性の高い品種の研究開発や、効率的な潅漑(かんがい)技術の導入が推奨されます。第二に、持続可能な農業へのシフトが必要です。水資源を節約し、有機農業を活用することで環境負荷を軽減しながら生産性を高める方法が求められます。さらに、EU等の地域間協力を強化して、供給チェーンの安定化を図ることも不可欠です。また、国際市場での競争力を向上させるために輸出促進政策や貿易協定の見直しを進める必要があります。
結論として、フランスのトウモロコシ生産は過去60年以上で大きな成長を遂げましたが、近年は気候変動や国際競争の影響から新たな挑戦に直面しています。これらを乗り越えるためには、農業の革新と持続可能な制度設計、国際的な連携が鍵となります。国やEUレベルでの包括的な政策が今後のフランス農業を支える基盤となるでしょう。