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フランスの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、フランスの羊肉生産量は長期的に緩やかな増加を続けた1960年代から1980年代中盤を頂点に、1990年代以降は減少傾向にあり、2023年には72,830トンと、最も生産量が多かった1982年の186,700トンと比べて約60%減少しました。この変化は農業の構造転換、消費者需要の変化、競争の激化など複数の要因に関連しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 72,830
-8.04% ↓
2022年 79,200
-3.17% ↓
2021年 81,790
1.88% ↑
2020年 80,280
-0.82% ↓
2019年 80,940
-0.59% ↓
2018年 81,420
-19.48% ↓
2017年 101,122
-3.35% ↓
2016年 104,625
-3.38% ↓
2015年 108,280
-1.74% ↓
2014年 110,193
-0.82% ↓
2013年 111,100
-2.03% ↓
2012年 113,401
-1.4% ↓
2011年 115,016
-3.11% ↓
2010年 118,710
-5.48% ↓
2009年 125,597
-3.3% ↓
2008年 129,881
-4.18% ↓
2007年 135,547
-2.91% ↓
2006年 139,605
-0.6% ↓
2005年 140,451
0.18% ↑
2004年 140,193
-0.81% ↓
2003年 141,331
-1.39% ↓
2002年 143,318
-1.88% ↓
2001年 146,071
-0.69% ↓
2000年 147,092
0.14% ↑
1999年 146,889
0.01% ↑
1998年 146,873
-1.21% ↓
1997年 148,675
-1.84% ↓
1996年 151,464
-0.42% ↓
1995年 152,096
-0.74% ↓
1994年 153,231
-3.23% ↓
1993年 158,345
-2.03% ↓
1992年 161,630
-3.66% ↓
1991年 167,764
-9.37% ↓
1990年 185,114
11.05% ↑
1989年 166,700
-0.54% ↓
1988年 167,600
-3.34% ↓
1987年 173,400
0.35% ↑
1986年 172,800
-3.63% ↓
1985年 179,300
1.3% ↑
1984年 177,000
-0.84% ↓
1983年 178,500
-4.39% ↓
1982年 186,700
6.62% ↑
1981年 175,100
0.86% ↑
1980年 173,600
8.5% ↑
1979年 160,000
7.82% ↑
1978年 148,400
2.34% ↑
1977年 145,000
-1.36% ↓
1976年 147,000
12.13% ↑
1975年 131,100
4.05% ↑
1974年 126,000
3.28% ↑
1973年 122,000
-1.61% ↓
1972年 124,000
1.64% ↑
1971年 122,000
10.91% ↑
1970年 110,000
2.8% ↑
1969年 107,000
-2.73% ↓
1968年 110,000 -
1967年 110,000
1.85% ↑
1966年 108,000
8% ↑
1965年 100,000
7.53% ↑
1964年 93,000
6.9% ↑
1963年 87,000
-9.38% ↓
1962年 96,000
-3.03% ↓
1961年 99,000 -

フランスは伝統的に農業が盛んな国の一つであり、羊肉の生産も重要な役割を果たしてきました。1960年代前後には年生産量が10万トン前後で推移していましたが、農業技術の進歩や生産効率の向上により、1970年代から1980年代半ばにかけて生産量は着実に増加しました。特に1982年には186,700トンという最高値を記録しており、これは羊肉需要の増加や国内自給の推進政策の成果とも言えます。

しかし、それ以降のデータでは明確な減少傾向が見られます。1990年代には10万トン台後半から10万トン台前半へと推移し、2000年代に入るとさらに減少が続きました。そして、2018年以降、8万トンを大きく下回る結果となり、2023年には72,830トンまで大きく落ち込んでいます。この減少の背景には複数の要因が考えられます。一つ目に、消費者の食生活の変化が挙げられます。近年、フランス国内での食肉消費は多様化が進み、特に牛肉や鶏肉の消費が安定する一方、羊肉の需要は減少傾向にあります。さらに、健康志向や環境意識の高まりにより、植物由来の食材や代替肉への需要も増えていることも一因と言えます。

次に、農業生産の構造的な問題も影響しています。羊肉産業は他の畜産業と比較して生産効率が低いとされ、農家の収入減少や後継者不足が発生しています。特に小規模な羊農家においては維持が困難となり、多くが廃業を選択している現状がこれに拍車をかけています。さらに、他国からの安価な輸入羊肉が市場に流入し、価格競争の激化もフランスの羊肉生産にとって厳しい環境を作っています。

具体的な課題としては、まずフランス国内の羊肉生産における競争力の強化が挙げられます。例えば、農業技術のさらなる改善や、生産から流通までの効率化を図ることが必要です。また、消費者の嗜好を捉えたマーケティング戦略も重要です。「地元産」であることを強調し、持続可能性や動物福祉の観点から羊肉の付加価値を高めることが、消費者の支持を得るための鍵となります。

地域の地政学的背景にも留意する必要があります。例えば、近隣のイギリスはEU離脱後も羊肉産業が強く、輸出競争の激しい状況にあります。フランスはEU内での連携を強化し、ディスカッションを通じて補助金や関税政策を調整するなど、ヨーロッパ全域での協調的な取り組みが不可欠です。また、新型コロナウイルスのパンデミックや異常気象など、外部要因が農業に与える影響も無視できません。特に2023年においても猛暑や干ばつといった気候変動の影響が観測されており、これは牧草供給や生産効率に直接的なダメージを及ぼしています。

今後、フランスの羊肉産業が抱えるこれらの問題に対応するためには、国およびEUによる政策支援が必要不可欠です。具体的には、教育や技術指導を通じて新しい農業者を育成し、人材を持続的に確保するプログラムの実施が急務です。また、輸入品に対する適切な規制や、地元産業を保護するための支援策も求められます。さらに消費者への啓発活動を通じた「フランス産羊肉」のブランド価値向上と、それを支えるマーケットの開拓が重要です。

結論として、フランスの羊肉生産量の減少は、農業構造の変化や消費者の需要変化、国際競争や気候変動といった複合的な影響が要因となっています。この課題に対応するためには、国策の見直しや新しい産業モデルの構築が不可欠であり、官民一体となった取り組みが求められています。これらの対策が上手く進めば、減少傾向の是正とともに、持続可能な産業の成長が期待できるでしょう。