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フランスのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国連食糧農業機関)が発表した最新データによると、フランスにおけるヤギ肉生産量は1961年に6,000トンから始まり、その後数十年にわたり緩やかに増加し、2012年には12,669トンというピークに達しました。しかし、その後の数年間で急激な減少が見られ、2023年には5,870トンにまで落ち込んでいます。この急激な減少には需要の変化や政策、また地政学的課題が影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 5,870
-6.38% ↓
2022年 6,270
0.97% ↑
2021年 6,210
1.31% ↑
2020年 6,130
-2.08% ↓
2019年 6,260
1.46% ↑
2018年 6,170
-44.13% ↓
2017年 11,044
-5.73% ↓
2016年 11,715
-3.75% ↓
2015年 12,172
0.78% ↑
2014年 12,077
-2.12% ↓
2013年 12,338
-2.61% ↓
2012年 12,669
5.87% ↑
2011年 11,967
-0.87% ↓
2010年 12,072
1.67% ↑
2009年 11,874
3.87% ↑
2008年 11,432
0.85% ↑
2007年 11,335
7.09% ↑
2006年 10,585
1.85% ↑
2005年 10,393
-0.8% ↓
2004年 10,477
0.92% ↑
2003年 10,381
-0.74% ↓
2002年 10,458
2.04% ↑
2001年 10,249
5.68% ↑
2000年 9,698
3.81% ↑
1999年 9,342
0.01% ↑
1998年 9,341
4.37% ↑
1997年 8,950
0.2% ↑
1996年 8,932
2.01% ↑
1995年 8,756
-1.85% ↓
1994年 8,921
-5.84% ↓
1993年 9,474
-4.97% ↓
1992年 9,969
-0.48% ↓
1991年 10,017
10.03% ↑
1990年 9,104
-2.96% ↓
1989年 9,382
2.78% ↑
1988年 9,128
2.09% ↑
1987年 8,941
1.6% ↑
1986年 8,800
-1.12% ↓
1985年 8,900
9.88% ↑
1984年 8,100 -
1983年 8,100 -
1982年 8,100
-16.04% ↓
1981年 9,648
20.6% ↑
1980年 8,000
-2.02% ↓
1979年 8,165
7.43% ↑
1978年 7,600
-2.56% ↓
1977年 7,800
5.41% ↑
1976年 7,400
1.37% ↑
1975年 7,300
5.8% ↑
1974年 6,900
1.47% ↑
1973年 6,800
-0.73% ↓
1972年 6,850
3.79% ↑
1971年 6,600
3.13% ↑
1970年 6,400
-3.03% ↓
1969年 6,600
10% ↑
1968年 6,000 -
1967年 6,000
-1.64% ↓
1966年 6,100
-3.17% ↓
1965年 6,300
3.28% ↑
1964年 6,100
1.67% ↑
1963年 6,000
-3.23% ↓
1962年 6,200
3.33% ↑
1961年 6,000 -

フランスにおけるヤギ肉生産量のデータを見ると、大きく三つの時期に分けられる成長と変動の特徴が見られます。まず1961年から1980年頃まではおおむね6,000~8,000トンの範囲で安定して推移しました。この間、フランスの農業生産は国内向け需要に応える形で持続的に維持されていたと考えられます。一方、1980年代半ば以降には生産量が増加に転じ、2012年の12,669トンまで上昇しました。この上昇期には、地中海料理人気の高まりや輸出需要の拡大が後押しとなった可能性があります。また、EU市場の統合や食肉加工産業の効率化なども背景にあると推測されます。

しかし、2013年以降、生産量が減少に転じたことは注目すべき点です。そして2018年以降に急速な減少が確認されています。2018年には6,170トンと約50年間で最も低い水準に戻り、2023年にはさらに5,870トンと低下しました。この変化の原因としては、いくつかの要因が挙げられるでしょう。一つは、国内での需要低下です。ヤギ肉は高タンパク質食品としての価値が認識されてはいるものの、依然としてニッチな市場であり、他の食肉に比べ需要が低いままです。さらに近年では、代替ミート(植物由来の肉)の普及や健康志向の高まりによる消費者行動の変化が影響を与えているようです。

また、地政学的リスクとしては、EU全体の農業改革がフランスの牧畜経済に再編を求めたことや、国際紛争や輸送制限が輸出市場に影響を与えた可能性も考えられます。特に2020年以降の新型コロナウイルスによる物流の停滞、さらにエネルギー危機が農業生産コストを増加させ、生産者に負担をかけました。このような状況下では、小規模なヤギ生産者にとって収益性が一層厳しくなり、多くの事業者が生産を縮小せざるを得なかったと推測されます。

さらに、気候変動も影響しています。フランス南部では近年、干ばつや異常気象がヤギの飼育環境に影響を及ぼしています。これにより、牧草などの飼料が不足し、ヤギの育成にコストがかかるようになっています。このような課題が重なった結果、生産量が減少し続けていると考えられます。

今後、フランスがヤギ肉生産量の安定と向上を目指すためには、いくつかの具体的な対策が必要です。一つは、公共政策としてヤギ牧畜農家を支援する仕組みを強化することです。補助金の拡充や効率的な飼育技術の普及を通じて、生産コストの削減と収益性の向上を図れます。また、ヤギ肉の栄養的な価値について一般消費者への啓発を行い、内需の拡大を目指すことも重要です。さらに、輸出市場を拡大するためにEU域内外の需要調査を進め、新興市場での販路拡大を検討することが有効でしょう。

結論として、フランスのヤギ肉生産の現状は複数の課題に直面していますが、適切な政策と持続可能な生産方法の推進により、その減少を食い止めることが可能です。国内外の需要環境を十分に理解し、技術や資金面での支援を強化することがフランス農業にとって不可欠です。これらの取り組みを通じて、フランスは未来に向けた持続可能なヤギ肉供給を確立することが求められます。