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フランスの牛飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月時点の最新データに基づき、フランスの牛の飼養数を見ると、1961年は約1,950万頭でした。その後、1970年代半ばには約2,400万頭まで増加しましたが、1987年以降は減少傾向が顕著になり、2022年には約1,698万頭と最低値を記録しています。このデータは、フランスにおける農業や畜産業の構造変化や環境政策の影響を反映しています。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 16,806,900
-1.06% ↓
2022年 16,986,190
-1.98% ↓
2021年 17,330,080
-2.73% ↓
2020年 17,815,670
-1.97% ↓
2019年 18,172,970
-2.36% ↓
2018年 18,613,040
-1.8% ↓
2017年 18,953,568
-2.17% ↓
2016年 19,373,382
-0.07% ↓
2015年 19,386,522
0.72% ↑
2014年 19,248,627
0.8% ↑
2013年 19,095,797
0.47% ↑
2012年 19,005,649
-0.42% ↓
2011年 19,085,561
-2.4% ↓
2010年 19,555,173
-1.26% ↓
2009年 19,805,378
-1.2% ↓
2008年 20,046,940
0.81% ↑
2007年 19,885,156
1.79% ↑
2006年 19,534,688
0.59% ↑
2005年 19,421,068
-0.49% ↓
2004年 19,516,224
-1.3% ↓
2003年 19,772,441
-3.37% ↓
2002年 20,461,291
-3.2% ↓
2001年 21,137,970
-0.56% ↓
2000年 21,256,247
5.93% ↑
1999年 20,066,844
0.08% ↑
1998年 20,051,494
-0.76% ↓
1997年 20,205,040
-1.48% ↓
1996年 20,507,820
-0.16% ↓
1995年 20,540,297
0.44% ↑
1994年 20,450,490
0.02% ↑
1993年 20,446,184
-1.01% ↓
1992年 20,654,916
-2.1% ↓
1991年 21,097,138
-1.39% ↓
1990年 21,394,000
0.08% ↑
1989年 21,377,008
0.17% ↑
1988年 21,340,000
-2.85% ↓
1987年 21,967,008
-5.68% ↓
1986年 23,289,888
-0.81% ↓
1985年 23,480,976
-1.72% ↓
1984年 23,893,008
1% ↑
1983年 23,656,000
0.69% ↑
1982年 23,493,008
-0.66% ↓
1981年 23,650,000
-1.12% ↓
1980年 23,919,088
0.05% ↑
1979年 23,906,000
0.61% ↑
1978年 23,761,904
-0.33% ↓
1977年 23,840,000
-0.98% ↓
1976年 24,077,008
0.15% ↑
1975年 24,040,000
1.43% ↑
1974年 23,701,008
5.3% ↑
1973年 22,508,608
3.42% ↑
1972年 21,764,096
0.19% ↑
1971年 21,723,008
0.02% ↑
1970年 21,719,296
0.71% ↑
1969年 21,565,504
-0.52% ↓
1968年 21,679,008
2.34% ↑
1967年 21,183,904
2.63% ↑
1966年 20,640,304
1.96% ↑
1965年 20,243,904
1.01% ↑
1964年 20,040,608
-1.21% ↓
1963年 20,286,000
-1.44% ↓
1962年 20,583,008
5.55% ↑
1961年 19,501,008 -

フランスの牛飼養数の長期的なデータを見ると、1961年の約1,950万頭から1970年代半ばには2,400万頭を上回り、ピークを迎えていたことがわかります。この急増は、第二次世界大戦後の農業発展政策や工業化による食料生産の強化、および乳製品や肉類の需要増加に基づいています。しかし、1987年以降は飼養数が減少に転じ、その後も減少傾向が続いています。これは、フランスの畜産業が経済的、政策的、地政学的な背景の影響を大きく受けていることを示しています。

1990年代以降、減少が特に目立ち始めた背景の一つには、欧州全体で進められた農業政策の改革があります。ヨーロッパ共同体(現EU)の共同農業政策(CAP)は、生産量の抑制と環境保護を目的に、補助金制度の見直しや生産調整政策を導入しました。そして、1990年代後半から2000年代初頭にかけて、BSE(いわゆる狂牛病)の発生が牛肉消費に対して大きな影響を与え、フランス国内でも飼養数の減少に拍車をかけたことが考えられます。

近年では、環境保護や持続可能な農業への関心が高まり、畜産による温室効果ガスの排出や土地利用に関する政策的制約が強化されています。さらに、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の影響も見逃せません。流通の制限や飲食店の需要低下が畜産業者にとって負担となり、飼養頭数の減少に寄与した可能性があります。また、世界的な気候変動に伴う干ばつや洪水などが牧草の生産量に影響を与え、畜産業の持続可能性が試されている状況です。

フランス国内外で牛の飼養数が減少している一方で、他国を見ると異なる動きも見られます。例えば、中国やインドは、乳製品や牛肉の需要が国内市場で拡大していることから、牛飼養数が増加傾向にあります。また、アメリカでは持続可能な畜産技術が進められつつも依然として供給量が高いため、フランスとは異なる課題を抱えています。このような点からも、フランス国内の畜産業界は、競争力を維持しながら環境負荷を抑制する新しいモデルが必要とされています。

今後、フランスの牛飼養数を維持または効率化させるためには、いくつかの具体的な方策が考えられます。一つは、革新的な飼料技術や飼育システムの導入を通じて、環境負荷を抑えた持続可能な畜産の実現です。また、消費者の健康志向や環境志向に応じたブランド価値の向上も重要です。地元産の乳製品や良質な牛肉の需要を喚起し、国内市場を拡大することが求められます。さらに、国際協力を通じて畜産業界全体での気候変動対策に取り組むことも効果的でしょう。

結論として、フランスの牛飼養数の推移は、単に畜産業の動向を示すだけでなく、持続可能な農業と地球環境に向き合うべき課題を浮き彫りにしています。国や国際機関、市場関係者が連携して、効率的かつ環境に優しい生産体制を構築することが必須であり、未来の畜産業の在り方を模索する必要があります。