FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、フランスの大豆生産量は2022年に375,820トンとなり、直近のピークである2021年の439,350トンより減少しています。近年は400,000トン前後で推移しているものの、長期的には1970年代の数千トンという規模から急速に増加し、特に1980年代から2000年代初頭にかけて著しい拡大が見られました。しかし2000年代中頃以降、大豆生産量は一時期の減少を経て、2010年代後半以降に再び上昇傾向を示しています。この推移には政策、気候条件、国際市場の変化が深く関与しています。
フランスの大豆生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 387,820 |
3.19% ↑
|
2022年 | 375,820 |
-14.46% ↓
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2021年 | 439,350 |
8% ↑
|
2020年 | 406,810 |
-5.07% ↓
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2019年 | 428,530 |
7.54% ↑
|
2018年 | 398,480 |
-4.03% ↓
|
2017年 | 415,202 |
22.49% ↑
|
2016年 | 338,955 |
0.63% ↑
|
2015年 | 336,830 |
48.21% ↑
|
2014年 | 227,262 |
106.47% ↑
|
2013年 | 110,072 |
5.9% ↑
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2012年 | 103,935 |
-15.17% ↓
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2011年 | 122,521 |
-12.52% ↓
|
2010年 | 140,059 |
27.51% ↑
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2009年 | 109,842 |
74.06% ↑
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2008年 | 63,106 |
-25.41% ↓
|
2007年 | 84,603 |
-31.21% ↓
|
2006年 | 122,995 |
-13.7% ↓
|
2005年 | 142,528 |
-3.1% ↓
|
2004年 | 147,095 |
-0.18% ↓
|
2003年 | 147,368 |
-29.33% ↓
|
2002年 | 208,533 |
-32.66% ↓
|
2001年 | 309,694 |
54.05% ↑
|
2000年 | 201,033 |
-23.12% ↓
|
1999年 | 261,495 |
-6.02% ↓
|
1998年 | 278,234 |
4.42% ↑
|
1997年 | 266,457 |
17.65% ↑
|
1996年 | 226,484 |
-12.71% ↓
|
1995年 | 259,474 |
0.64% ↑
|
1994年 | 257,818 |
84.64% ↑
|
1993年 | 139,631 |
87.49% ↑
|
1992年 | 74,475 |
-53.79% ↓
|
1991年 | 161,179 |
-34.21% ↓
|
1990年 | 245,000 |
-19.9% ↓
|
1989年 | 305,849 |
30.7% ↑
|
1988年 | 234,000 |
11.22% ↑
|
1987年 | 210,400 |
119.17% ↑
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1986年 | 96,000 |
70.21% ↑
|
1985年 | 56,400 |
23.41% ↑
|
1984年 | 45,700 |
59.79% ↑
|
1983年 | 28,600 |
38.16% ↑
|
1982年 | 20,700 |
8.95% ↑
|
1981年 | 19,000 |
5.56% ↑
|
1980年 | 18,000 |
-9.98% ↓
|
1979年 | 19,996 |
318.33% ↑
|
1978年 | 4,780 |
67.13% ↑
|
1977年 | 2,860 |
-8.04% ↓
|
1976年 | 3,110 |
5.6% ↑
|
1975年 | 2,945 |
-45.26% ↓
|
1974年 | 5,380 |
576.73% ↑
|
1973年 | 795 | - |
フランスにおける大豆生産量は、1970年代にはほぼ存在しないに等しい規模で、1974年ですらわずか5,380トンに過ぎませんでした。しかし、1970年代後半から1980年代にかけて生産量は急増し、特に1987年以降は生産量が20万トンを超え、1989年には30万トン以上に達しました。この飛躍的な伸びは、欧州連合(当時の欧州共同体)による農業補助政策の強化や、大豆を含む油糧作物の戦略的重要性の認識などが要因に挙げられます。また、大豆の需要が飼料用や植物油原料用として増加したことも生産拡大を後押ししました。
1990年代に入ると、一部の年を除いて生産量は30万トン前後で推移しましたが、1991年や1992年に大きな落ち込みを見せました。これは、天候要因や病害虫被害、価格低迷などが背景にありました。しかし1994年以降、しばらく安定した生産を続け、2001年には309,694トンと再び30万トンを突破しました。
2000年代中頃から後半にかけてフランスの大豆生産量は再び減少傾向を示しました。2008年には63,106トンと著しく低下し、この時期の減少は、北米やブラジルなどの大豆輸出国による競争激化、大豆価格の下落、そして国内での栽培作物としての他の選択肢(特に小麦やとうもろこし)の台頭が影響していると考えられます。
2010年代に入ると、再び大豆生産量は増加基調に転じ、2017年には415,202トンに達し、2019年には428,530トンでピークを迎えました。この急速な伸びには、持続可能な農業への関心の高まり、EUにおけるタンパク質自給率向上の動き、そして国内の生産者への経済的支援の強化が貢献しています。
近年では、2021年に439,350トンという最高値を記録しましたが、その後2022年には375,820トンへと減少しました。これは、気候変動の影響による干ばつや洪水、ウクライナ戦争による農業資材価格の上昇などが影響した可能性があります。
このような生産量推移の背景には、フランス国内の気候条件の変動や土壌特性の変化だけでなく、EUの農業政策、さらには国際市場動向といった複数の要素が絡み合っています。
フランスの大豆生産にはいくつかの課題も見られます。まず、気候変動による天候の不安定化がもたらすリスクが増加しています。極端な干ばつや高温による収量減少が懸念されるため、耐干ばつ性を備えた品種の開発が重要です。また、国際市場での価格競争力を強化するため、生産効率向上や農業機械化の推進も必要です。さらに、フランス国内での持続可能な農業の実現に向け、環境負荷を抑えた大豆生産方式へのシフトも求められています。これには、農薬や化学肥料の適切な使用といった施策が含まれます。
現在の地政学的環境、特にウクライナ戦争の影響で飼料用タンパク質輸入の安定性が揺らいでいることから、フランスにおいてさらなる大豆の国内栽培拡大の必要性が論じられています。EUの補助政策を活用し、農家へのインセンティブを増やすことで、持続的な生産を確保することも解決策の一つです。
結論として、フランスは国内の大豆生産量を近年の高水準で維持・向上させるために、気候変動への対応と持続可能性を両立させた政策立案が求められます。気候適応型農業技術の普及、地域・国際間協力の強化、さらには生産者支援の拡充を通じて、国内外の需要に応える生産構造を築くことが必要です。