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ブルガリアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによれば、ブルガリアの牛乳生産量は、1961年の813,089トンから1984年のピークとなる2,161,997トンへと増加を遂げました。その後、1990年代以降は減少傾向に転じ、近年では2023年時点で726,790トンと過去最低の水準にあります。特に1990年代の社会変化や経済的影響が顕著であり、ここからの減少幅が大きくなっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 726,790
-5.7% ↓
2022年 770,730
-7.78% ↓
2021年 835,780
-5.21% ↓
2020年 881,760
7.23% ↑
2019年 822,300
-8.51% ↓
2018年 898,770
-7.17% ↓
2017年 968,177
-4.95% ↓
2016年 1,018,567
-0.92% ↓
2015年 1,028,036
-6.77% ↓
2014年 1,102,732
-3.99% ↓
2013年 1,148,534
5.08% ↑
2012年 1,093,034
-2.91% ↓
2011年 1,125,824
0.13% ↑
2010年 1,124,360
4.75% ↑
2009年 1,073,401
-6.1% ↓
2008年 1,143,190
-0.45% ↓
2007年 1,148,328
-11.58% ↓
2006年 1,298,709
0.92% ↑
2005年 1,286,909
-4.3% ↓
2004年 1,344,750
2.77% ↑
2003年 1,308,525
0.2% ↑
2002年 1,305,912
6.69% ↑
2001年 1,224,050
-13.23% ↓
2000年 1,410,663
1.57% ↑
1999年 1,388,800
4.66% ↑
1998年 1,327,000
10.89% ↑
1997年 1,196,680
2.89% ↑
1996年 1,163,106
-0.17% ↓
1995年 1,165,050
-2.76% ↓
1994年 1,198,110
-10.66% ↓
1993年 1,341,140
-15.68% ↓
1992年 1,590,460
-9.61% ↓
1991年 1,759,490
-16.25% ↓
1990年 2,100,799
-1.62% ↓
1989年 2,135,301
-1.51% ↓
1988年 2,168,148
-0.58% ↓
1987年 2,180,850
0.41% ↑
1986年 2,172,013
2.55% ↑
1985年 2,117,905
-2.04% ↓
1984年 2,161,997
3.42% ↑
1983年 2,090,402
4.47% ↑
1982年 2,001,000
5.38% ↑
1981年 1,898,800
3.84% ↑
1980年 1,828,594
1.46% ↑
1979年 1,802,264
11.29% ↑
1978年 1,619,379
4.56% ↑
1977年 1,548,745
6.36% ↑
1976年 1,456,155
1.5% ↑
1975年 1,434,574
1.71% ↑
1974年 1,410,519
4.92% ↑
1973年 1,344,393
2.8% ↑
1972年 1,307,837
1.3% ↑
1971年 1,291,019
3.16% ↑
1970年 1,251,504
3.8% ↑
1969年 1,205,734
0.57% ↑
1968年 1,198,940
-1.01% ↓
1967年 1,211,232
10.29% ↑
1966年 1,098,183
9.78% ↑
1965年 1,000,325
8.06% ↑
1964年 925,754
16.12% ↑
1963年 797,239
3.24% ↑
1962年 772,230
-5.03% ↓
1961年 813,089 -

ブルガリアの牛乳生産量推移を詳細に見ると、1960年代から1980年代半ばまでは着実な増加傾向が見られ、ピーク時には2,161,997トンに達しています。この期間の生産量の増加は、当時の社会主義体制下における中央集権的な農業政策や生産設備の強化、食品供給の拡大を目指した計画経済の成果と考えられます。一方、1989年を境に社会主義体制が崩壊し、市場経済への移行が急速に進む中で、農業政策の変化と経済の混乱が影響し、1991年以降には生産量が大幅に落ち込みました。特に1990年代前半には生産基盤の再構築が難航したことから、農村地域での生産性低下や牧畜業の縮小が進行し、1993年には1,341,140トンにまで減少しました。

2000年代初頭に一時的な回復傾向が見られるものの、その後は長期的な減少傾向が継続しています。2007年の欧州連合(EU)加盟に伴い、同地域の農業市場基準への適合が求められるようになり、特に中小規模の牧畜業者にとっては厳しい生産条件を満たすことが困難となりました。このため、多くの農場が廃業や縮小を余儀なくされ、生産量は減少傾向を強めています。さらに近年では、気候変動の影響や牧草地の減少、低賃金労働者の不足が重なり、2023年の生産量は726,790トンと最低水準を記録しています。

牛乳生産の減少の背景にはブルガリアの農業経済の構造的課題が存在します。例えば、設備や技術の近代化が遅れている点、中小規模の牧場への支援が不十分である点などが挙げられます。また、若年層の農業離れが進んでおり、労働力不足が深刻化していることも重要な課題です。他国と比較すると、例えばドイツやフランスなどのEU内主要農業国は、農業補助金や技術革新を積極的に活用して安定的な牛乳生産を維持しています。一方でブルガリアの場合、これらの支援策の浸透が限られているため、EU内競争において弱い立場に置かれています。

このような状況を踏まえ、牛乳生産量を回復させるためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、牧場への技術支援や補助金制度を拡大し、小規模生産者が近代化に取り組める環境整備を進めるべきです。また、欧州連合内で進められている環境配慮型農業(サステイナブルアグリカルチャー)のトレンドに合わせ、エコシステム保護を考慮した生産方式を導入することで、国際的な需要に適応することも求められます。

さらに労働問題に対しては、農業に従事する若年層の育成を目標とした教育プログラムや、農村地域における雇用機会の創出が鍵となります。他国では移民政策などを活用して労働力を補完する事例も見られるため、ブルガリアにおいても他地域からの労働力移入の仕組みを検討しても良いでしょう。加えて、地域経済の枠組みを生かし、近隣諸国との協力体制を築くことが、生産の安定と輸出市場の拡大に寄与します。

結論として、ブルガリアの牛乳生産量の現状は、国内外の複数の歴史的、地政学的要因の影響を強く受けています。このため、生産量の復興には一貫性のある農業政策と国際協力の促進が欠かせません。ブルガリア政府やEUは、持続可能かつ競争力のある農村経済を確立するための具体的な戦略を明確にし、実行していく必要があります。今後の施策が適切に行われれば、ブルガリアの牛乳産業は再び安定した成長へと向かう可能性があります。