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ブルガリアのクルミ(胡桃)生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、ブルガリアのクルミ生産量は、1961年の14,934トンから1989年に一度33,346トンというピークを迎えましたが、それ以降は急激な減少に見舞われ、2008年時点では422トンと最低値を記録しました。その後、緩やかに回復しているものの2023年の生産量は3,450トンと、長期的には低迷しています。これは地政学的要因や農業技術の変化、世界的な需要動向の影響を受けています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,450
-14.6% ↓
2022年 4,040
-14.59% ↓
2021年 4,730
-0.42% ↓
2020年 4,750
-1.86% ↓
2019年 4,840
-5.47% ↓
2018年 5,120
44.27% ↑
2017年 3,549
-28.43% ↓
2016年 4,959
36.72% ↑
2015年 3,627
117.19% ↑
2014年 1,670
-67.25% ↓
2013年 5,099
74.32% ↑
2012年 2,925
21.57% ↑
2011年 2,406
94.03% ↑
2010年 1,240
341.28% ↑
2009年 281
-33.41% ↓
2008年 422
-69.86% ↓
2007年 1,400
-33.65% ↓
2006年 2,110
-20.08% ↓
2005年 2,640
-41.36% ↓
2004年 4,502
-25.33% ↓
2003年 6,029
170.48% ↑
2002年 2,229
-62.09% ↓
2001年 5,880
-2% ↓
2000年 6,000
-14.29% ↓
1999年 7,000
23.57% ↑
1998年 5,665
-43.35% ↓
1997年 10,000
67.39% ↑
1996年 5,974
-17.07% ↓
1995年 7,204
-56.85% ↓
1994年 16,696
92.55% ↑
1993年 8,671
-66.05% ↓
1992年 25,540
8.52% ↑
1991年 23,535
-7.36% ↓
1990年 25,406
-23.81% ↓
1989年 33,346
19.17% ↑
1988年 27,981
-2.25% ↓
1987年 28,625
5.7% ↑
1986年 27,081
0.64% ↑
1985年 26,908
6.06% ↑
1984年 25,370
6.93% ↑
1983年 23,726
-2.76% ↓
1982年 24,400
13.89% ↑
1981年 21,425
16.71% ↑
1980年 18,358
-7.73% ↓
1979年 19,897
-28.26% ↓
1978年 27,734
32.55% ↑
1977年 20,923
-24.3% ↓
1976年 27,640
15.37% ↑
1975年 23,958
18.61% ↑
1974年 20,199
-24.06% ↓
1973年 26,599
28.21% ↑
1972年 20,747
-2.2% ↓
1971年 21,213
-12.23% ↓
1970年 24,168
-5.41% ↓
1969年 25,550
-7.72% ↓
1968年 27,688
18.97% ↑
1967年 23,274
5.43% ↑
1966年 22,076
-5.01% ↓
1965年 23,240
19.2% ↑
1964年 19,496
16.2% ↑
1963年 16,778
-9.18% ↓
1962年 18,474
23.7% ↑
1961年 14,934 -

ブルガリアのクルミ生産量の歴史を振り返ると、1960年代から1980年代にかけては安定した成長を遂げ、1989年には33,346トンとこれまでで最大の生産量を記録しました。この時期は、ソビエト連邦との農業協力や地域間での輸出需要の高まりが背景にありました。しかしそれ以降、1990年代から2000年代初頭にかけて、ブルガリアのクルミ生産は急激な下降線を辿りました。特に1998年から2008年にかけての減少は顕著で、2008年の422トンという生産量は、1961年以降の最低値を示しています。

この減少の背景には、政治的および経済的な変動が密接に関連しています。1989年にブルガリアが社会主義政権から自由市場経済に移行する過程で、国家主導の農業体制が崩壊し、多くの農村部でインフラ整備や作物管理が不十分になりました。またこの期間には、地政学的リスクや国際市場での競争の激化も、生産量減少の一因として挙げられます。加えて、1990年代の経済危機は農業協力組織の解散を招き、さらには農作業者の離職が進むなど、持続可能なクルミ生産が難しい状況に陥っていました。

一方、2010年代以降は緩やかに回復が見られました。特に2018年には5,120トンと一定の増加が確認されていますが、ここ数年では再び減少傾向に入り、2023年時点での生産量は3,450トンと再び低迷しています。この現象は気候変動による生育条件の変化や、十分な農業支援政策の欠如などが影響していると考えられます。特に、気温上昇や異常気象などブルガリア特有の気候変動リスクは、クルミの栽培可能地域に制約を与えている状況です。

将来的にクルミ生産を安定化させるためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、政府主導で農業インフラを整備し、小規模農家がより効率的に働ける支援策を講じることが重要です。また、クルミ栽培に有利な地域を優先的に特定し、その地域の農地に対する投資や技術支援を進める必要があります。さらに、国際市場に向けたブランド形成や輸出促進政策を推進することも効果的です。地域間の協力体制を強化し、気候変動に対応した作物の品種改良や栽培技術を研究・普及させることも急務といえます。

また、地政学的な観点からも、ブルガリアは他国からの高品質な品種や技術導入を進めるべきです。例えば、クルミ生産のリーディングカントリーである中国やアメリカから生産技術や輸出ノウハウを学ぶことで、長期的な競争力を高めることができる可能性があります。同時に、紛争や国際的な緊張が農業生産に影響を与えるリスクを軽減するため、貿易協定や外交関係を強化することも賢明です。

結論として、ブルガリアのクルミ生産の低迷は、政治的な変動や経済的課題、そして気候動向といった複合的な要因に起因しています。これを打開するためには、具体的かつ包括的な農業政策の策定や、長期的な視野に立った地域間協力の推進が必要です。国際的な農業競争の中で再び存在感を示すためには、産業の基盤を強化し、持続可能な方法での生産の拡大に努めることが求められています。