Skip to main content

ブルガリアのヤギ飼養頭数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、ブルガリアのヤギ飼養頭数は1961年の約24万頭から、1999年には約105万頭まで増加しましたが、それ以降は再び減少傾向をたどり、2022年には約18万頭にまで減少しています。この推移は、ブルガリアの農業構造や経済政策の変化、さらに社会的・地政学的な要因が複合的に影響しているものと考えられます。

年度 飼養頭数(頭) 増減率
2023年 174,950
-4.93% ↓
2022年 184,020
-14.41% ↓
2021年 215,000
-15.15% ↓
2020年 253,400
10.9% ↑
2019年 228,490
-15.92% ↓
2018年 271,740
14.4% ↑
2017年 237,543
-14.22% ↓
2016年 276,919
-5.37% ↓
2015年 292,644
1.15% ↑
2014年 289,308
-1.47% ↓
2013年 293,639
-13.98% ↓
2012年 341,362
-4.2% ↓
2011年 356,334
-1.24% ↓
2010年 360,822
-16.06% ↓
2009年 429,834
-13.25% ↓
2008年 495,484
-9.76% ↓
2007年 549,076
-9.75% ↓
2006年 608,426
-15.28% ↓
2005年 718,120
-0.99% ↓
2004年 725,308
-3.87% ↓
2003年 754,473
11.73% ↑
2002年 675,292
-30.4% ↓
2001年 970,274
-7.26% ↓
2000年 1,046,286
-0.13% ↓
1999年 1,047,611
8.44% ↑
1998年 966,114
13.83% ↑
1997年 848,742
1.85% ↑
1996年 833,325
4.76% ↑
1995年 795,436
17.59% ↑
1994年 676,432
10.67% ↑
1993年 611,225
10.58% ↑
1992年 552,736
10.97% ↑
1991年 498,087
15.05% ↑
1990年 432,923
-0.62% ↓
1989年 435,627
1.7% ↑
1988年 428,340
-2.92% ↓
1987年 441,213
-4.09% ↓
1986年 460,012
-2.87% ↓
1985年 473,626
-6.32% ↓
1984年 505,567
0.64% ↑
1983年 502,338
2.47% ↑
1982年 490,209
4.92% ↑
1981年 467,217
7.95% ↑
1980年 432,791
15.79% ↑
1979年 373,765
14.64% ↑
1978年 326,034
5.83% ↑
1977年 308,076
-3.91% ↓
1976年 320,602
7.22% ↑
1975年 299,014
4.59% ↑
1974年 285,891
-5.18% ↓
1973年 301,515
-5.32% ↓
1972年 318,441
-4.97% ↓
1971年 335,109
-4.31% ↓
1970年 350,202
-6.93% ↓
1969年 376,295
-2.05% ↓
1968年 384,176
-6.08% ↓
1967年 409,032
-6.11% ↓
1966年 435,638
3.28% ↑
1965年 421,819
19.55% ↑
1964年 352,836
23.51% ↑
1963年 285,676
7.98% ↑
1962年 264,574
7.33% ↑
1961年 246,495 -

ブルガリアのヤギ飼養頭数は、1961年の約24万頭から、1965年に42万頭、1985年には約47万頭と徐々に増加し、1990年代以降に大幅な増加を見せました。特に1990年代後半には急激な上昇が見られ、1999年には約105万頭というピークを記録しています。しかし、その後、飼養頭数は大きく減少し、2022年には約18万頭にまで減少しました。この大きな変動には、ブルガリアの内外における農業政策の変遷や社会経済的要因が影響していると考えられます。

1990年代の増加には、冷戦終結後の農業政策の転換が背景にあります。この時期は、大規模な集団農場から個人経営の小規模農場へのシフトが進み、ヤギのような飼育コストが比較的低い動物が人気を集めるようになりました。また、ヤギ乳やヤギチーズなどの関連産業も成長し、地域経済を支える一端を担っていました。しかし、2000年代に入ると、国家の農業支援政策が減少したことに加え、EU加盟後の市場競争の激化、都市部への人口流出、そして農業従事者の高齢化が課題となり、ヤギ飼育規模は急速に縮小しました。

特に注目すべきは、人口の都市集中と農業従事者の減少が、飼育頭数の減退に強く関連している点です。また、EU加盟後に導入された農業補助金制度も、ヤギに特化した支援よりも大規模で高収益の作物や家畜に向けられており、中小規模のヤギ生産者には十分な効果をもたらしていません。一方で、地理的条件にも影響を受けています。ブルガリアの中山間地域では伝統的にヤギの飼育が主流でしたが、こうした地域では近年、気候変動や環境問題も課題として浮上してきました。

また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックも飼養頭数の減少に影響を与えた可能性があります。物流の乱れや市場アクセスの制限が、地域の農業従事者にさらなる負担を強い、結果として生産規模の縮小を招いたと考えられます。このような課題を背景に、ブルガリアのヤギ飼養頭数はこの数十年で大きく減少傾向を示しており、2022年時点では過去最低の約18万頭に留まっています。

今後、この傾向を改善するためには、地域間協力の強化や、持続可能な農業を促進するための国家的な支援が必要不可欠です。ヤギ飼育は土地の肥沃度に依存しないため、環境負荷の少ない農業の一環として重要な役割を果たす可能性があります。そのため、農業支援政策の再編成を行い、小規模農家向けの補助金や技術支援を拡充することが求められます。また、地域ごとの特産品であるチーズや乳製品のブランド化を進めることで、国内外の市場での競争力を高め、付加価値を創出することも有効といえます。

さらに、若年世代や都市部在住者を対象に農業への参加を促す政策も効果が期待できます。たとえば、若い世代へのインセンティブとして、農地購入の支援や初期投資の補助金制度の導入が考えられます。また、教育機関や地域コミュニティと連携し、ヤギ飼育の技術を広めるプログラムを展開することも、持続可能な農業の発展に貢献するでしょう。

まとめると、ブルガリアのヤギ飼養頭数は大きな変動を経験しているものの、その減少は農業政策や社会経済的背景と深く関連しています。地政学的なリスクや気候変動の課題を踏まえつつ、持続可能なヤギ飼育産業の振興を目指した政策を取ることが、ブルガリア農業全体の発展にも寄与すると考えられます。