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ブルガリアの牛乳生産量推移(1961年~2022年)

国連食糧農業機関(FAO)が2024年7月に公開したデータによると、ブルガリアの牛乳生産量は、1961年の1,188,733トンから1980年代半ばにはピークとなる2,600,310トンにまで増加しました。しかし、1990年代以降、特に東欧諸国の経済変動の影響を受け、生産量は大きく減少しました。2022年には868,600トンとなり、この60年間で約33%の減少となっています。2020年以降、一時的な増加が見られましたが、再び下落傾向が続いています。

年度 生産量(トン) 増減率
2022年 868,600
-8.86% ↓
2021年 953,070
-5.21% ↓
2020年 1,005,450
7.02% ↑
2019年 939,500
-8.36% ↓
2018年 1,025,200
-6.07% ↓
2017年 1,091,470
-4.98% ↓
2016年 1,148,656
-0.34% ↓
2015年 1,152,603
-6.38% ↓
2014年 1,231,098
-5.74% ↓
2013年 1,306,048
5.17% ↑
2012年 1,241,851
-3.4% ↓
2011年 1,285,531
0.61% ↑
2010年 1,277,704
3.73% ↑
2009年 1,231,760
-6.41% ↓
2008年 1,316,071
-0.86% ↓
2007年 1,327,461
-12.42% ↓
2006年 1,515,673
0.5% ↑
2005年 1,508,069
-5.63% ↓
2004年 1,598,042
6.25% ↑
2003年 1,504,010
-0.31% ↓
2002年 1,508,621
8.39% ↑
2001年 1,391,885
-18.45% ↓
2000年 1,706,718
0.06% ↑
1999年 1,705,770
4.15% ↑
1998年 1,637,820
10.66% ↑
1997年 1,480,075
3.31% ↑
1996年 1,432,619
-1.05% ↓
1995年 1,447,751
-1.15% ↓
1994年 1,464,530
-7.23% ↓
1993年 1,578,589
-15.25% ↓
1992年 1,862,616
-9.79% ↓
1991年 2,064,758
-15.99% ↓
1990年 2,457,805
-2.16% ↓
1989年 2,512,154
-2.24% ↓
1988年 2,569,768
-0.77% ↓
1987年 2,589,616
-0.41% ↓
1986年 2,600,310
2.49% ↑
1985年 2,537,225
-2.04% ↓
1984年 2,590,043
2.44% ↑
1983年 2,528,230
4.35% ↑
1982年 2,422,860
5.54% ↑
1981年 2,295,638
3.53% ↑
1980年 2,217,354
0.54% ↑
1979年 2,205,419
10.11% ↑
1978年 2,002,990
3.85% ↑
1977年 1,928,686
6.19% ↑
1976年 1,816,336
0.75% ↑
1975年 1,802,839
1.16% ↑
1974年 1,782,120
4.31% ↑
1973年 1,708,488
2.05% ↑
1972年 1,674,093
0.17% ↑
1971年 1,671,308
2.39% ↑
1970年 1,632,270
3.23% ↑
1969年 1,581,258
-0.4% ↓
1968年 1,587,546
-1.42% ↓
1967年 1,610,350
7.3% ↑
1966年 1,500,782
8.12% ↑
1965年 1,388,062
6.5% ↑
1964年 1,303,322
11.33% ↑
1963年 1,170,653
3.86% ↑
1962年 1,127,184
-5.18% ↓
1961年 1,188,733 -

ブルガリアの牛乳生産量データには、地政学的背景と国内の経済状況が大きく影響しています。1960年代から1980年代にかけて、ブルガリアの乳製品市場は効率的な農業体制と社会主義国家の政策によって支えられ、生産量はほぼ一貫して増加していました。その中でも1986年の2,600,310トンは、記録上の最大値です。この期間は、農業コレクティブ経済(集団農場)の推進が主要な要因でした。生産規模が拡大した背景に、国内の高い乳製品需要や輸出の増加があります。

しかし、1989年の社会主義体制の崩壊により経済の転換期を迎え、市場経済への移行と共に畜産業は大きなダメージを受けました。この時期、個人主義的な小規模経営に戻り、農業の効率と持続可能性が大きく失われました。1990年代前半には生産量が急激に低下し、1994年には1,464,530トンまで減少しました。その後の小幅な回復と変動を経て、2000年代以降の国内需要と輸出向け市場の要求変化により、再び減少傾向が続いています。

また、近年ではEUへの加盟がブルガリアの乳牛産業に新たな変化をもたらしました。ヨーロッパ統一市場での競争が激化したことで、大規模な生産基準と品質管理が求められるようになりました。これにより、ブルガリアの多くの小規模酪農家が競争の波に飲み込まれる形で市場から退出しました。また、近年では気候変動による自然災害の影響や農業従事者の高齢化、若者による農業離れも問題となっています。

2020年には1,005,450トンの回復がありましたが、これは一時的な増加にとどまっています。この頃、新型コロナウイルスの流行に伴う食品供給チェーンの再編や現地需要の増加が要因と考えられます。しかし、その後の2022年には再び868,600トンと大きく下落しました。これにより、ブルガリアの乳牛産業は深刻な長期的課題を抱えていることが浮き彫りとなっており、将来性への懸念が高まっています。

この課題を解決するためには、いくつかの具体的な対策が求められます。ブルガリア政府や関係諸機関には、以下のような政策が期待されます。まず、EU政策を活用し、小規模酪農家が競争力を持てるように支援金や教育プログラムを拡大することが重要です。さらに、環境に配慮した持続可能な畜産業の導入を促し、気候変動の影響を最小限に抑える努力も必要です。また、品質基準を強化し、国内および輸出市場においてブルガリア製乳製品のブランド力を高める取り組みも推奨されます。

併せて、現代的な技術導入と若い農業従事者の育成計画が必要であり、デジタル化された生産過程や効率化された物流体制を整備することも全体の競争力向上につながると言えます。内外の需要を満たすためには、EU諸国との協力や東欧全体での広域的な農業政策調整が鍵となるでしょう。

データが示すように、ブルガリアの乳牛生産はかつての栄光を取り戻すには様々な課題に直面しています。しかし、持続可能な改革と政策のもと、再び強固な生産基盤を築くことは十分可能であるといえます。