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ブルガリアのナシ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、ブルガリアのナシ生産量は、1960年代から1970年代にかけて一貫して高い水準で推移し、一部の年度では13万トンを超えることもありましたが、1990年代以降劇的に減少しました。特に2000年代初頭には1,000トン前後にまで激減し、その後は緩やかな回復傾向にあります。直近の2023年では2,510トンを記録し、依然として低い水準に留まっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,510
-19.03% ↓
2022年 3,100
1.97% ↑
2021年 3,040
7.42% ↑
2020年 2,830
-47.88% ↓
2019年 5,430
61.61% ↑
2018年 3,360
18.31% ↑
2017年 2,840
42.57% ↑
2016年 1,992
-32.54% ↓
2015年 2,953
37.22% ↑
2014年 2,152
-26.02% ↓
2013年 2,909
113.27% ↑
2012年 1,364
-30.9% ↓
2011年 1,974
34.47% ↑
2010年 1,468
1.8% ↑
2009年 1,442
56.06% ↑
2008年 924
-4.25% ↓
2007年 965
68.71% ↑
2006年 572
-23.73% ↓
2005年 750
-58.22% ↓
2004年 1,795
73.43% ↑
2003年 1,035
-4.26% ↓
2002年 1,081
1.69% ↑
2001年 1,063
-93.28% ↓
2000年 15,812
-14.77% ↓
1999年 18,553
-8.32% ↓
1998年 20,237
-10.5% ↓
1997年 22,611
-9.3% ↓
1996年 24,929
15.68% ↑
1995年 21,550
-36.63% ↓
1994年 34,009
61.9% ↑
1993年 21,006
-57.06% ↓
1992年 48,914
-14.96% ↓
1991年 57,519
-7.18% ↓
1990年 61,967
-15.81% ↓
1989年 73,603
0.97% ↑
1988年 72,893
-1.92% ↓
1987年 74,322
-11.14% ↓
1986年 83,635
-0.02% ↓
1985年 83,648
-8.89% ↓
1984年 91,814
-1.47% ↓
1983年 93,188
7.87% ↑
1982年 86,393
-9.74% ↓
1981年 95,716
0.04% ↑
1980年 95,676
-1.89% ↓
1979年 97,519
7.29% ↑
1978年 90,889
-11.99% ↓
1977年 103,272
13.63% ↑
1976年 90,882
-41.23% ↓
1975年 154,631
89.56% ↑
1974年 81,572
-41.59% ↓
1973年 139,647
30.68% ↑
1972年 106,858
-17.91% ↓
1971年 130,179
-3.58% ↓
1970年 135,019
8.33% ↑
1969年 124,633
-3.63% ↓
1968年 129,321
12.46% ↑
1967年 114,989
12% ↑
1966年 102,670
27.68% ↑
1965年 80,412
-12.81% ↓
1964年 92,230
30.62% ↑
1963年 70,609
-12.21% ↓
1962年 80,431
25.16% ↑
1961年 64,260 -

ブルガリアは、かつて1960年代から1970年代にかけて高いナシ生産量を誇り、全体的に9万トンから13万トンを安定的に維持していました。この時期は農業技術や栽培制度が充実し、地域全体でナシの需要が高まっていたことが背景に挙げられます。特に1975年の約15万トンはピークとなり、ナシ生産の黄金期を象徴しています。

しかしながら、1980年代後半から1990年代にかけて国内外の社会経済状況に大きな変化が生じ、生産量は急速に低下しました。この傾向は、当時のブルガリアの政治的・経済的な転換期と密接に関連しており、農業セクターが厳しい構造変化の影響を受けたことが大きな要因と考えられます。農業における国有から民営への移行は短期的な生産性低下をもたらし、作物を管理する人的資源や設備が十分に確保できなくなったことが、ナシ生産の劇的な減少に拍車をかけました。その結果、1993年には21,006トン、続いて1998年には20,237トンにまで落ち込み、2000年代初頭にはわずか1,000トン前後まで縮小しました。

2000年代以降には、国内市場の再編やEU加盟(2007年)による農業政策の影響で、ナシ生産は一定の回復傾向を見せますが、かつてのピークには遠く及ばない状況が続いています。最近では、2019年に5,430トンを記録したものの、その後再び低下し、2023年には2,510トンという水準にとどまっています。この減少は、農業従事者の高齢化や気候変動による不安定な天候条件など複合的な要因に起因すると考えられます。

ブルガリアのナシ生産の停滞は、近隣諸国や主要生産国との比較でさらに明らかになります。例えば、中国は世界最大のナシ生産国であり、数千万トン規模の生産量を誇っています。一方、日本でも全国規模で年間20万トン規模の生産があり、安定しています。他国と比較してもブルガリアの農業セクターがいかに課題を抱えているかが分かります。

課題としては、まず農業におけるインフラ整備の遅れが挙げられます。老朽化した設備の更新や、栽培技術の革新が必要不可欠です。また、人手不足の影響も深刻であり、農業分野への新規参入者を増やすための教育や支援制度の強化が求められます。さらに、気候変動への備えとして灌漑や土壌改良を推進し、生産の安定化を図ることが急務です。

未来の回復のためには、EUによる農業支援プログラムを最大限に活用し、最新の農業技術を取り入れることが重要と言えます。また、国内外の市場をターゲットにしたブランド戦略を打ち出し、付加価値の高い商品に転換することも一案です。地域間の農業協力を深めることで、気候適応型の農作業モデルを共有し、競争力を高める必要があります。

結論として、ブルガリアのナシ生産は一時的な復活を見せつつも、依然として過去の全盛期には程遠い現状です。この状況を打開するには、国家レベルでの長期的な農業政策の改革と国際的な連携が鍵となります。課題を克服することで、ブルガリアのナシ産業は再び地域経済の重要な柱となる可能性を秘めています。