Skip to main content

ブルガリアのイチゴ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ブルガリアのイチゴ生産量は1961年から長期的に減少傾向にあります。1961年には52,229トンの生産量を記録していましたが、その後減少が続き、2000年代以降は5,000トン前後の水準に留まっています。直近の2022年には5,130トンと若干の回復が見られましたが、依然として遠い過去のピークから大きく落ち込んでいる状況です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 5,210
1.56% ↑
2022年 5,130
-18.31% ↓
2021年 6,280
47.07% ↑
2020年 4,270
-6.56% ↓
2019年 4,570
-5.38% ↓
2018年 4,830
-9.87% ↓
2017年 5,359
4.06% ↑
2016年 5,150
3.02% ↑
2015年 4,999
18.94% ↑
2014年 4,203
9.42% ↑
2013年 3,841
-19.48% ↓
2012年 4,770
-32.12% ↓
2011年 7,027
22.7% ↑
2010年 5,727
7.57% ↑
2009年 5,324
-38.09% ↓
2008年 8,599
44.18% ↑
2007年 5,964
-31.93% ↓
2006年 8,761
33.49% ↑
2005年 6,563
-42.95% ↓
2004年 11,504
2.6% ↑
2003年 11,212
-28.01% ↓
2002年 15,574
0.12% ↑
2001年 15,556
71.59% ↑
2000年 9,066
-10.77% ↓
1999年 10,160
29.51% ↑
1998年 7,845
44.29% ↑
1997年 5,437
-0.11% ↓
1996年 5,443
-27.59% ↓
1995年 7,517
29.54% ↑
1994年 5,803
7.01% ↑
1993年 5,423
-59.01% ↓
1992年 13,229
-23.47% ↓
1991年 17,285
-8.3% ↓
1990年 18,849
6.99% ↑
1989年 17,618
15.54% ↑
1988年 15,249
19.28% ↑
1987年 12,784
-12.06% ↓
1986年 14,537
33.87% ↑
1985年 10,859
-46.52% ↓
1984年 20,306
46.2% ↑
1983年 13,889
-29.7% ↓
1982年 19,758
-6.25% ↓
1981年 21,075
-6.07% ↓
1980年 22,438
24.64% ↑
1979年 18,002
3.9% ↑
1978年 17,326
11.67% ↑
1977年 15,515
-14.58% ↓
1976年 18,164
18.43% ↑
1975年 15,337
-18.17% ↓
1974年 18,742
16.82% ↑
1973年 16,043
12.62% ↑
1972年 14,245
-21.68% ↓
1971年 18,188
-42.24% ↓
1970年 31,488
-6.66% ↓
1969年 33,733
15.43% ↑
1968年 29,225
6.73% ↑
1967年 27,383
64.27% ↑
1966年 16,670
-2.14% ↓
1965年 17,034
-10.08% ↓
1964年 18,944
-43.72% ↓
1963年 33,658
9.59% ↑
1962年 30,714
-41.19% ↓
1961年 52,229 -

ブルガリアのイチゴ生産量は、50年以上の長期データにおいて非常に興味深い動向を示しています。1961年には52,229トンと高い生産量を誇っていました。この時期は、ブルガリアが農業中心の計画経済体制のもと、イチゴ生産に集中的に取り組んでいた時代です。しかし、その後1960年代半ばから急激な減少が見られ、1970年代は小幅な変動ながら20,000トンを下回ることが常態化しました。1980年代には一時的に2万トン程度まで回復したのち安定しましたが、1990年代に入ると再び大きく減少し始め、2000年代以降は5,000~10,000トンの範囲で推移しています。

この減少傾向には複数の要因が考えられます。まず、ブルガリアは1989年の社会主義体制の崩壊後、急激に市場経済へと移行しました。この過程で、農業の集約的な生産体制が崩壊し、小規模農家による転作や農地の放棄が顕著になりました。その結果、イチゴのような労働集約型の作物は生産を維持することが困難になり、中長期的な生産量の低迷につながりました。

また、地政学的背景も無視できません。1990年代以降、ブルガリアはヨーロッパにおける市場統合を進める中で、EU加盟に至りましたが、EU全体での農業競争の中で他国の大規模農業生産者や輸入品に圧倒される形となりました。イチゴの輸入が増えたことにより国内生産が非競争的になり、さらなる生産量の低下を引き起こした可能性があります。

さらに、気候変動の影響も注視する必要があります。近年の異常気象や降水量の減少は、イチゴのような水資源を必要とする果樹作物の生産に致命的な影響を与える可能性があります。2021年に比較的生産量を回復した要因に関しては、適切な気候条件や一時的な市場需要の高まりが関係したと考えられますが、長期的な成長の兆しとは言えない状況です。

ブルガリアのイチゴ産業が抱える課題にはいくつか解決策が提案可能です。第一に、農地の集約化や効率的な生産技術の導入を進めるべきです。例えば、温室栽培や現代的な灌漑技術をより多く導入することで、生産量の維持と品質の向上が期待できます。次に、国際市場での競争力を高めるためには、高付加価値化を目指すべきです。オーガニックイチゴや加工品(ジャムや冷凍イチゴなど)の輸出を戦略的に推進することは、EU市場や世界市場へアプローチするための一つの手段となります。

さらに、地政学的リスクや紛争の影響を鑑みて、地域の協力を強化することが重要です。特に近隣国との農業技術の共有や、資源管理の枠組み構築への投資が必要です。また、農村部における労働力不足の克服には移民政策の改革や適切な労働条件の整備が有効です。これにより、都市への過度な人口集中を抑制し、農村部の生産基盤を強化できます。

結論として、ブルガリアのイチゴ生産量は過去半世紀にわたって大幅に減少してきましたが、これを不可逆的なものとするべきではありません。持続可能な方法で生産を再構築する政策を推進すべきタイミングです。政府や国際機関は、効率的な資源利用、競争力強化、地元農家支援に焦点を当てた具体的な対策を一体となって導入することが求められます。