Food and Agriculture Organization(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、ブルガリアのキャベツ生産量は1961年から2022年の間で大きく変動しています。1960年代から1970年代は比較的高い生産量を維持していましたが、1980年代後半以降は減少傾向が顕著です。特に2000年代以降は急激な減少が見られ、近年では4万トン前後の低水準に留まっています。2022年時点の生産量は39,590トンと、1960年代と比べ大きく落ち込んでいます。
ブルガリアのキャベツ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 39,590 |
2021年 | 31,890 |
2020年 | 32,160 |
2019年 | 46,560 |
2018年 | 47,240 |
2017年 | 41,817 |
2016年 | 75,650 |
2015年 | 42,447 |
2014年 | 42,347 |
2013年 | 45,114 |
2012年 | 47,301 |
2011年 | 44,643 |
2010年 | 78,939 |
2009年 | 39,389 |
2008年 | 64,884 |
2007年 | 50,000 |
2006年 | 72,662 |
2005年 | 69,306 |
2004年 | 116,862 |
2003年 | 138,318 |
2002年 | 109,433 |
2001年 | 138,508 |
2000年 | 171,994 |
1999年 | 153,985 |
1998年 | 142,871 |
1997年 | 122,400 |
1996年 | 102,314 |
1995年 | 102,100 |
1994年 | 74,971 |
1993年 | 84,268 |
1992年 | 102,132 |
1991年 | 106,811 |
1990年 | 114,685 |
1989年 | 153,719 |
1988年 | 125,717 |
1987年 | 117,043 |
1986年 | 119,557 |
1985年 | 101,575 |
1984年 | 142,759 |
1983年 | 146,047 |
1982年 | 153,787 |
1981年 | 141,590 |
1980年 | 165,447 |
1979年 | 158,106 |
1978年 | 148,448 |
1977年 | 167,562 |
1976年 | 179,639 |
1975年 | 175,188 |
1974年 | 170,030 |
1973年 | 146,290 |
1972年 | 153,476 |
1971年 | 164,416 |
1970年 | 160,548 |
1969年 | 179,758 |
1968年 | 181,828 |
1967年 | 190,953 |
1966年 | 247,434 |
1965年 | 146,170 |
1964年 | 193,387 |
1963年 | 194,980 |
1962年 | 162,615 |
1961年 | 163,582 |
ブルガリアのキャベツ生産量推移を見ると、1960年代から1980年代前半にかけて比較的安定した中高レベルの生産量を維持していたことがわかります。1966年には最大の247,434トンを記録しましたが、それ以降生産量は緩やかに減少していきました。これは、農業技術の近代化が進んでいった背景に支えられつつも、農業労働者の減少や農村部からの人口流出が問題として顕在化していたことが影響していると考えられます。
1990年代に入ると、ブルガリアは社会主義体制から市場経済への移行期を迎えました。この転換期には、農業セクター全体が大きな影響を受け、キャベツ生産量も急激に落ち込んでいきました。1990年代半ばから後半には一時的な回復が見られたものの、2000年代初頭には再び減少傾向に戻り、2005年から2020年にかけて非常に低い水準が続きました。
2020年以降の比較的低い生産量は、気候変動の影響や労働力不足、新型コロナウイルス感染症の流行による経済的ショックなどの複合的要因によるものと推測されます。また、ブルガリア国内の農業政策が一貫性を欠き、必要な技術支援や市場調整の取り組みが不十分だったことも重要な要因の一つと考えられます。他のヨーロッパ諸国と比較しても、例えばドイツやフランスでは安定した生産を維持していることを踏まえると、ブルガリアの農業構造特有の課題が浮き彫りになります。
地政学的背景を考慮すると、ブルガリアは欧州連合の一員として、域内市場への輸出の可能性を高めるべき立場にあります。しかし、キャベツ産業の衰退は特に地元農家や地域コミュニティに経済的打撃を与え、地域社会の持続的発展を妨げている点が懸念されます。また、ウクライナでの紛争やそれに伴う物流の乱れが、現在の生産量や輸出見込みにさらに影響を与える可能性も否定できません。
こうした状況を改善するためには、いくつかの具体的な対策が考えられます。まず、農業従事者への技術支援や教育プログラムの整備が必要です。特に、耐乾燥性や病害抵抗性を持つ品種の導入が重要とされます。また、EUの補助金や支援プログラムを活用し、農家が生産活動を効率化するための財政的支援を拡大することも有益です。さらに、国としては国内外市場でのキャベツの販路拡大に努め、地域産業を活性化させる取り組みが重要です。
結論として、ブルガリアのキャベツ生産量の変遷は、同国の経済・社会的変動、地政学的課題、気候変動などの多様な要因が絡み合った結果であるといえます。今後、政策面や技術面での改善を図ることで、生産量の持続的な回復と農村地域の経済安定を実現するための基盤を築くことが期待されます。国際連合食糧農業機関(FAO)や欧州連合(EU)などとの協力を強化することが、ブルガリア農業全体の再興に向けて重要なカギとなるでしょう。