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ブルガリアのさくらんぼ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ブルガリアのさくらんぼ生産量は過去数十年にわたり大きな変動を見せています。特に1980年代後半から1990年代初頭にかけてピークを迎えた後、1990年代半ばから2000年代には生産量が著しく減少しましたが、近年では一部回復の兆しも見られます。2023年のさくらんぼ生産量は46,230トンとなり、2022年の53,920トンから減少しましたが、2000年代初頭の水準と比較すると一定の回復を遂げています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 46,230
-14.26% ↓
2022年 53,920
2.47% ↑
2021年 52,620
0.55% ↑
2020年 52,330
-4.79% ↓
2019年 54,960
-0.63% ↓
2018年 55,310
14.3% ↑
2017年 48,391
25.7% ↑
2016年 38,496
-22.11% ↓
2015年 49,423
48.44% ↑
2014年 33,294
-12.76% ↓
2013年 38,162
95.58% ↑
2012年 19,512
-35.1% ↓
2011年 30,063
20.49% ↑
2010年 24,951
42.94% ↑
2009年 17,456
8.65% ↑
2008年 16,067
-12.81% ↓
2007年 18,427
-10.13% ↓
2006年 20,504
12.44% ↑
2005年 18,235
-14.67% ↓
2004年 21,369
23.93% ↑
2003年 17,243
10.15% ↑
2002年 15,654
-45.05% ↓
2001年 28,487
0.75% ↑
2000年 28,276
-12.2% ↓
1999年 32,206
-3.93% ↓
1998年 33,522
-7.82% ↓
1997年 36,367
-35.72% ↓
1996年 56,573
-24.36% ↓
1995年 74,790
55.62% ↑
1994年 48,058
48.92% ↑
1993年 32,272
-51.05% ↓
1992年 65,932
23.29% ↑
1991年 53,479
-25.22% ↓
1990年 71,511
-13.72% ↓
1989年 82,883
13.92% ↑
1988年 72,753
-15.59% ↓
1987年 86,194
2.8% ↑
1986年 83,849
11.21% ↑
1985年 75,398
5.65% ↑
1984年 71,365
5.49% ↑
1983年 67,649
36.34% ↑
1982年 49,617
-31.58% ↓
1981年 72,522
31.55% ↑
1980年 55,128
-2.54% ↓
1979年 56,565
9.89% ↑
1978年 51,473
29.2% ↑
1977年 39,840
-12.13% ↓
1976年 45,342
-12.98% ↓
1975年 52,106
30.64% ↑
1974年 39,886
-4.4% ↓
1973年 41,721
1.59% ↑
1972年 41,070
-9.02% ↓
1971年 45,142
-17.85% ↓
1970年 54,948
13.97% ↑
1969年 48,211
6.42% ↑
1968年 45,304
2.36% ↑
1967年 44,261
-3.73% ↓
1966年 45,975
27.8% ↑
1965年 35,975
1.07% ↑
1964年 35,594
0.28% ↑
1963年 35,496
2.39% ↑
1962年 34,668
-11.81% ↓
1961年 39,312 -

ブルガリアのさくらんぼ生産は、1960年代から時系列的に見ると大きな変動を経てきました。特に1986年から1989年にかけて生産量が80,000トンを超えたのがピークでした。このように記録的な生産量が見られた背景には、当時の社会主義体制下での大規模農業生産と政府の支援がありました。しかし、冷戦終結後、ブルガリアの政治・経済体制の変革に伴い、生産体制が大きな転換を余儀なくされました。これが1990年代の急激な生産量の下降に繋がった要因の一つと考えられます。

1990年代にブルガリアのさくらんぼ生産量が大きく後退したのは、農業に関連する経済政策の不安定性や民営化を含む制度的変革、さらには地政学的な変化も影響しました。特に1990年代初頭には人手不足や資本の制約が課題として浮き彫りになり、1994年には48,058トン、1998年には30,000トン台に低迷しました。加えて、2000年代には異常気象やインフラの不足も影響し、2002年には15,654トンという半世紀最も低い数値を記録しました。

一方で、2010年代には比較的穏やかな回復基調が見られます。この期間には、EU加盟による輸出機会の増加や、農業における技術導入が進んだことが貢献しました。一例として、2018年にさくらんぼ生産量は55,310トンを記録し、長期低迷期からの脱却が伺えます。ただし、2020年代前半ではCOVID-19パンデミックの影響も重なり一部の農業活動が滞り、生産量は大きな伸びを見せていません。2022年には53,920トンとなったものの、2023年には46,230トンに減少しました。

ブルガリアのさくらんぼ生産の現状における主な課題としては、農業従事者の高齢化、若年層の農業離れ、農村地域の人口減少が挙げられます。さらに最近では、地球温暖化による気候変動が開花期や収穫期に与える影響も深刻化しています。これに対し、持続可能性を重視した農業技術の導入や、輸出市場での競争力向上のための品質強化が重要です。

また、地政学的観点からは、ロシア・ウクライナ紛争によって地域内の労働力移動や農業資材の供給連鎖が影響を受ける可能性があります。このため、ブルガリア国内のみならず地域を跨いだ協力体制の構築も未来に向けた課題のひとつといえるでしょう。

結論として、ブルガリアが持続的にさくらんぼの生産量を増加させ、さらに国際市場における地位を向上させるためには、以下のような具体的な対策が求められます。第一に政府主導での農家支援プログラムの強化や若年層へのインセンティブの提供が挙げられます。第二に、気候変動の影響を緩和するための科学技術投資を進める必要があります。第三に、地域間連携を進めることで、地理的なリスクを軽減する取り組みも欠かせません。ブルガリアの持つ伝統的な農業の知見を活かしつつ、近代的なアプローチを融合させることが、今後の農業競争力の確立に寄与するでしょう。