国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、キューバの鶏卵生産量は1960年代から一貫して増加傾向にありましたが、1990年代以降、政治的・経済的な影響で大きな変動を見せました。2023年の生産量は約99,230トンで、近年のピークである2018年の122,267トンから減少しています。全体の動向としては、1960年代から1980年代にかけての顕著な成長から一転して1990年代の著しい減少、その後の部分的な回復と停滞が特徴的です。
キューバの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 99,230 |
-4.37% ↓
|
2022年 | 103,770 |
9.24% ↑
|
2021年 | 94,992 |
-8.4% ↓
|
2020年 | 103,704 |
-6.79% ↓
|
2019年 | 111,254 |
-9.01% ↓
|
2018年 | 122,267 |
9.6% ↑
|
2017年 | 111,558 |
4.83% ↑
|
2016年 | 106,418 |
4.2% ↑
|
2015年 | 102,133 |
-9.76% ↓
|
2014年 | 113,177 |
-3.14% ↓
|
2013年 | 116,842 |
5.69% ↑
|
2012年 | 110,554 |
-4.1% ↓
|
2011年 | 115,280 |
7.82% ↑
|
2010年 | 106,920 |
0.13% ↑
|
2009年 | 106,779 |
4.24% ↑
|
2008年 | 102,432 |
-1.01% ↓
|
2007年 | 103,475 |
0.44% ↑
|
2006年 | 103,017 |
13.31% ↑
|
2005年 | 90,917 |
18.17% ↑
|
2004年 | 76,938 |
-2.04% ↓
|
2003年 | 78,544 |
0.39% ↑
|
2002年 | 78,242 |
16.64% ↑
|
2001年 | 67,079 |
-11.45% ↓
|
2000年 | 75,751 |
-1.79% ↓
|
1999年 | 77,133 |
23.82% ↑
|
1998年 | 62,292 |
-13.23% ↓
|
1997年 | 71,791 |
15.51% ↑
|
1996年 | 62,151 |
-8.43% ↓
|
1995年 | 67,871 |
-6.37% ↓
|
1994年 | 72,486 |
3.23% ↑
|
1993年 | 70,216 |
-35.13% ↓
|
1992年 | 108,246 |
-14.19% ↓
|
1991年 | 126,144 |
2.82% ↑
|
1990年 | 122,690 |
13.48% ↑
|
1989年 | 108,118 |
3.11% ↑
|
1988年 | 104,857 |
-2.91% ↓
|
1987年 | 108,005 |
-0.95% ↓
|
1986年 | 109,039 |
-0.49% ↓
|
1985年 | 109,574 |
-1.7% ↓
|
1984年 | 111,467 |
1.92% ↑
|
1983年 | 109,368 |
10.84% ↑
|
1982年 | 98,672 |
-2.58% ↓
|
1981年 | 101,286 |
-3.26% ↓
|
1980年 | 104,697 |
15.27% ↑
|
1979年 | 90,824 |
4.9% ↑
|
1978年 | 86,585 |
4.2% ↑
|
1977年 | 83,093 |
0.93% ↑
|
1976年 | 82,325 |
-1.17% ↓
|
1975年 | 83,300 |
4.66% ↑
|
1974年 | 79,590 |
6.59% ↑
|
1973年 | 74,670 |
5.02% ↑
|
1972年 | 71,100 |
2.6% ↑
|
1971年 | 69,300 |
5.8% ↑
|
1970年 | 65,500 |
8.44% ↑
|
1969年 | 60,400 |
7.86% ↑
|
1968年 | 56,000 |
1.82% ↑
|
1967年 | 55,000 |
16.28% ↑
|
1966年 | 47,300 |
11.03% ↑
|
1965年 | 42,600 |
13.9% ↑
|
1964年 | 37,400 |
10.65% ↑
|
1963年 | 33,800 |
13.8% ↑
|
1962年 | 29,700 |
14.23% ↑
|
1961年 | 26,000 | - |
キューバの鶏卵生産量の推移を見ると、1960年代からの長期的なトレンドには、国内政策や地政学的な背景、経済の影響が反映されています。1960年代から1980年代後半にかけては、農業インフラの整備や家畜生産の拡大政策によって、鶏卵生産量は順調に成長していました。1961年の26,000トンから1980年の104,697トンまでの増加は、農業の近代化の成果を示しています。しかし、1990年代初頭に冷戦の終結とソ連崩壊が訪れると、キューバ経済への影響は壊滅的で、鶏卵生産も1993年に70,216トンと急激に減少しました。これは、輸入飼料の供給不足や農業機械部品の入手困難といった実務的な問題に加え、キューバが直面した「特別期」と呼ばれる経済危機の影響です。
2000年代以降は緩やかな回復が見られ、2006年には103,017トン、2013年には116,842トンまで回復しました。しかし、その後も安定した成長を維持することは難しく、2020年以後は再び減産傾向が目立ちました。最近のパンデミックも生産量に影響を及ぼしており、2021年には約94,992トンと落ち込みました。この背景の一つとして、新型コロナウイルスによる物流の停滞や国際的な飼料価格の高騰が挙げられます。2023年には若干の回復を見せていますが、依然として長期的な下降トレンドの中にあります。
キューバにおける鶏卵生産には、いくつかの課題が存在します。一つは輸入飼料への依存です。国内の農業技術や資源を活用することで、飼料問題を解決する必要があります。また、インフラ整備の遅れや機械老朽化も大きな障害といえます。これらは、労働生産性や効率性の低下を招き、生産の品質や量に影響を与えています。
キューバ政府がとるべき具体的な対策として、まず第一に自然資源を活用した自給自足型の飼料生産を推進することが挙げられます。例えば、地元の農業廃棄物を飼料化するといった取り組みは、輸入に依存しない持続可能なモデルの基盤を作り上げる助けとなるでしょう。また、地域間での協力も考慮すべきです。例えば、ラテンアメリカ近隣諸国との連携による物資供給や技術の共有は大きな成果をもたらす可能性があります。さらには、国際的な農業開発支援機関の資金援助や技術支援を積極的に活用して、先進的な農業技術やインフラの導入を行うべきです。
これらの改善策が実行されなければ、キューバの鶏卵生産は経済や地政学的リスクに引き続き翻弄される可能性があります。食料自給率の向上は、将来の食糧安全保障を確保する上で不可欠な課題となっています。鶏卵という重要な動物性タンパク源の安定供給を実現するために、地域独自の強みを活かした長期的な視点での改革が求められます。国と国際機関の協力を軸にした、多面的なアプローチが必要と言えるでしょう。