Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が更新した2024年の最新データによると、キューバの米生産量は大きな変動を経験しており、特に近年は減少傾向が顕著です。2022年の生産量は183,932トンまで落ち込み、過去60年で最低水準に達しました。1960年代後半から1980年代前半にかけて生産が増加し、1990年代中盤から一時的に回復したものの、その後減少が続いています。この減少の背景には、自然災害や経済的困難、地政学的要因が影響していると考えられます。
キューバの米生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 183,932 |
2021年 | 225,786 |
2020年 | 266,595 |
2019年 | 391,842 |
2018年 | 460,870 |
2017年 | 404,733 |
2016年 | 514,045 |
2015年 | 418,037 |
2014年 | 584,800 |
2013年 | 672,600 |
2012年 | 641,600 |
2011年 | 566,400 |
2010年 | 454,400 |
2009年 | 563,600 |
2008年 | 436,000 |
2007年 | 439,600 |
2006年 | 434,200 |
2005年 | 367,600 |
2004年 | 488,900 |
2003年 | 715,800 |
2002年 | 692,000 |
2001年 | 601,000 |
2000年 | 552,800 |
1999年 | 559,000 |
1998年 | 441,600 |
1997年 | 614,200 |
1996年 | 572,900 |
1995年 | 396,100 |
1994年 | 387,600 |
1993年 | 185,602 |
1992年 | 376,328 |
1991年 | 427,617 |
1990年 | 473,673 |
1989年 | 536,381 |
1988年 | 488,857 |
1987年 | 466,039 |
1986年 | 570,517 |
1985年 | 524,320 |
1984年 | 554,760 |
1983年 | 517,644 |
1982年 | 519,752 |
1981年 | 460,887 |
1980年 | 477,834 |
1979年 | 425,100 |
1978年 | 457,458 |
1977年 | 455,774 |
1976年 | 451,078 |
1975年 | 446,710 |
1974年 | 436,627 |
1973年 | 335,608 |
1972年 | 318,016 |
1971年 | 353,128 |
1970年 | 374,523 |
1969年 | 224,615 |
1968年 | 113,749 |
1967年 | 72,093 |
1966年 | 63,999 |
1965年 | 54,970 |
1964年 | 122,958 |
1963年 | 236,900 |
1962年 | 230,920 |
1961年 | 206,908 |
キューバの米生産量の推移を見ると、大きく3つの時期に分けることができます。1960年代から1970年代にかけては不安定な時期で、特に1964年から1966年までの段階的な落ち込みが特徴的です。しかし、1970年以降は400,000トンを超える生産が安定し、1986年には570,517トンとピークを迎えました。その後1993年には185,602トンまで一気に減少し、特に冷戦終結に伴う経済的影響がキューバ農業に与えた影響は深刻でした。
1996年以降、一時的に生産が回復し、2003年には715,800トンと過去数十年で最高値を記録しました。しかし、その後の数十年で再び減少し、2020年代に入ってからの減少率は著しく、2022年には183,932トンと1960年代以来の最低水準にまで達しました。この推移の背景で考慮すべき点に、気候変動や自然災害、特にハリケーンによるインフラや作物への被害が挙げられます。さらに、国内経済の停滞と輸入依存構造が農業生産の持続可能性に負荷をかけており、肥料や農業機械の不足が生産性の低下を招いています。
また、キューバの地政学的状況も重要な要因です。冷戦時代、キューバは経済的にソビエト連邦に強く依存しており、その崩壊以降は持続可能な農業政策を構築するのに大きな課題がありました。また、アメリカによる長年の経済制裁が農業分野全体に負荷をかけており、外部資本の流入や技術移転が阻害され、結果として効率的な生産体制を整えることが困難になっています。
さらに、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の影響で輸出入の流通が滞り、農業セクター全体にさらなる影響を与えました。このような状況では、キューバ内での米自給率の向上は喫緊の課題で、中長期的には持続可能な農業の枠組みを導入する必要があります。これには、農地の効率的な利用、灌漑設備の改善、気候変動適応型農法の導入が含まれます。
今後の具体的な対策としては、地域間協力の推進が重要です。例えば、ラテンアメリカ諸国との協力を通じて農業技術やノウハウの共有を進めるべきです。また、国際機関からの支援を受けて災害対策や農業インフラの整備にも注力することが求められます。さらに、地元農家に対する教育支援や、小規模農業の奨励などもその一環として有効と言えるでしょう。
結論として、キューバの米生産量の低迷は自然災害や経済政策、国際情勢に起因しており、単なる国内の農業改革だけでは解決が困難です。持続可能な農業システムの構築に向けて、気候変動への対応力強化、経済的な支援体制の整備、そして地域レベルでの協力深化を柱とする包括的な政策が必要です。国際社会からの支援も重要な要素であり、持続可能な食料供給に向けたグローバルな取り組みを通じて、キューバ農業の復興を目指すべきです。