Skip to main content

キューバの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、キューバの牛乳生産量は1961年から増加傾向を示し、一時は1989年に約113万トンに達しました。しかし1990年代の経済危機以降、生産量は大幅に減少し、その後も回復と減少を繰り返しています。2023年の生産量は約40万トンと、ピーク時に比べ大幅に低下した状態です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 399,712
8.15% ↑
2022年 369,600
-1.23% ↓
2021年 374,200
-17.82% ↓
2020年 455,337
-11.07% ↓
2019年 512,000
-11.25% ↓
2018年 576,900
7.55% ↑
2017年 536,400
-12.47% ↓
2016年 612,800
24.07% ↑
2015年 493,900
-16.02% ↓
2014年 588,100
-0.17% ↓
2013年 589,100
-2.52% ↓
2012年 604,300
0.8% ↑
2011年 599,500
-4.77% ↓
2010年 629,500
4.86% ↑
2009年 600,300
10.05% ↑
2008年 545,500
12.45% ↑
2007年 485,100
16.84% ↑
2006年 415,200
17.55% ↑
2005年 353,200
-31.11% ↓
2004年 512,700
-15.6% ↓
2003年 607,500
3.01% ↑
2002年 589,742
-4.98% ↓
2001年 620,675
1.07% ↑
2000年 614,098
-0.61% ↓
1999年 617,845
-5.72% ↓
1998年 655,309
0.69% ↑
1997年 650,818
1.68% ↑
1996年 640,045
0.24% ↑
1995年 638,522
0.46% ↑
1994年 635,600
8.54% ↑
1993年 585,616
-5.9% ↓
1992年 622,325
-24.13% ↓
1991年 820,300
-20.7% ↓
1990年 1,034,400
-8.57% ↓
1989年 1,131,400
0.85% ↑
1988年 1,121,900
-0.58% ↓
1987年 1,128,400
1.59% ↑
1986年 1,110,700
-0.13% ↓
1985年 1,112,100
-1.82% ↓
1984年 1,132,700
-0.53% ↓
1983年 1,138,700
1.08% ↑
1982年 1,126,500
-0.68% ↓
1981年 1,134,200
13.42% ↑
1980年 1,000,000 -
1979年 1,000,000
11.11% ↑
1978年 900,000
3.45% ↑
1977年 870,000
6.1% ↑
1976年 820,000
2.5% ↑
1975年 800,000
0.13% ↑
1974年 799,000
2.3% ↑
1973年 781,000
3.03% ↑
1972年 758,000
12.3% ↑
1971年 675,000
-2.17% ↓
1970年 690,000
6.15% ↑
1969年 650,000
8.33% ↑
1968年 600,000
6.08% ↑
1967年 565,600
22.42% ↑
1966年 462,000
5% ↑
1965年 440,000
4.76% ↑
1964年 420,000
7.69% ↑
1963年 390,000
5.41% ↑
1962年 370,000
5.71% ↑
1961年 350,000 -

1961年に約35万トンでスタートしたキューバの牛乳の年間生産量は、1960年代から1980年代にかけて急激に増加しました。特に1970年代後半から1980年代初頭には、農業政策の効率化や機械化の導入が進み、生産量は100万トンを超える水準に達しました。この時期は、主にソビエト連邦との緊密な経済協力が背景にあり、農業分野へ多くの資源が投じられた時代です。しかし、この成長は1990年代の「特別期間」によって大きな打撃を受けます。

1990年代の「特別期間」は、ソビエト連邦の崩壊による輸入燃料や資金の欠如が原因で、キューバの全産業が停滞した時期を指します。この影響で牛乳生産量も1990年の約103万トンから1993年の約58万トンまで急激に減少しました。この減少は飼料や農機具の不足による生産効率の低下、そして国内需給バランスの悪化を反映しています。これに続く1994年から2000年代初頭にかけて、生産量は緩やかな回復を見せていますが、ピーク時の水準には到底及びませんでした。

2005年以降では再び急激な減少が見られ、特に2015年から2022年にかけての低迷が顕著です。2023年には若干の増加が確認されましたが、それでも約40万トン前後の水準に留まっています。この状況には複数の要因があります。まず第一に、気候変動の影響で牧草地や水資源が枯渇しがちな状況が背景にあります。キューバの農業は雨水に依存する傾向があるため、干ばつ期間が長期化すると飼料の供給に深刻な影響を及ぼします。さらに、経済的制裁や物流の制約も、牛乳生産に必要な必需品の供給を制限し続けています。

他国と比較すると、キューバの牛乳生産量はかなり厳しい状況と言えます。例えばアメリカでは2023年時点での生産量が約1億トンを超え、日本でも約700万トンと推定されています。キューバの40万トンという水準は、総人口との関係性を考慮しても非常に低い割合となり、国内消費を満たすには不足していると言えます。

今後、キューバがこの状況を改善するにはいくつかの具体的な課題と対策が必要です。まず、気候変動適応型の農業技術の導入が急務です。例えば干ばつ耐性作物の使用や灌漑設備の整備を進めることで、安定的な飼料供給が可能となります。また、国内資源を最大限活用するための政策支援も重要です。農業従事者への補助金や金融支援を拡大し、生産設備を近代化することで効率性が向上します。さらに、地域間での協力や国際的な農業支援プログラムへの参加も視野に入れるべきです。このような枠組みを活用することで、輸入飼料依存の軽減と国内生産拡大が期待できます。

ただし、これらの取り組みには地政学的リスクも影響します。特にアメリカからの経済的制裁が継続している限り、キューバの農業輸入や外貨獲得能力は制限され続けます。このため、農業における自立性を高めることがより一層重要となります。また、サプライチェーンの問題に対処するため、国内輸送網の再編やエネルギー供給の安定化も必要です。

結論として、キューバの牛乳生産量は過去数十年間にわたり大きな変動を経験してきました。現状を改善するには、農業技術の進化と国際協力、そして気候変動への適応が欠かせません。国際社会としても、農業支援を通じてキューバの食糧安全保障を強化する支援が求められています。これにより、安定した生乳生産と国内消費の充足が実現されると同時に、国全体の食糧供給の持続可能性が促進されることでしょう。