国連食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、キューバのヤギ飼養頭数は1961年には約81,000頭とされ、この数値は長い間緩やかに増加していました。しかし1980年代後半以降、大規模な変動が見られ、特に1990年代後半から2000年代前半にかけて急激な増加を記録しました。ピークとなる2006年には1,170,900頭を達成しましたが、その後は減少傾向となり、2022年には約634,500頭まで減少しています。この推移はキューバの社会的、経済的、政治的背景や外的要因に強く影響されていると考えられます。
キューバのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)
年度 | 飼養頭数(頭) |
---|---|
2022年 | 634,500 |
2021年 | 706,900 |
2020年 | 713,900 |
2019年 | 715,200 |
2018年 | 1,185,000 |
2017年 | 1,157,700 |
2016年 | 1,185,400 |
2015年 | 1,047,200 |
2014年 | 608,709 |
2013年 | 625,600 |
2012年 | 651,000 |
2011年 | 844,300 |
2010年 | 938,100 |
2009年 | 1,110,200 |
2008年 | 1,134,000 |
2007年 | 1,126,100 |
2006年 | 1,170,900 |
2005年 | 1,039,500 |
2004年 | 1,046,625 |
2003年 | 950,504 |
2002年 | 866,399 |
2001年 | 758,900 |
2000年 | 715,100 |
1999年 | 492,600 |
1998年 | 384,100 |
1997年 | 138,538 |
1996年 | 118,541 |
1995年 | 105,363 |
1994年 | 100,211 |
1993年 | 100,218 |
1992年 | 100,000 |
1991年 | 95,000 |
1990年 | 90,000 |
1989年 | 110,000 |
1988年 | 110,000 |
1987年 | 110,000 |
1986年 | 108,000 |
1985年 | 105,000 |
1984年 | 103,000 |
1983年 | 102,000 |
1982年 | 101,000 |
1981年 | 100,000 |
1980年 | 99,000 |
1979年 | 98,000 |
1978年 | 97,000 |
1977年 | 94,000 |
1976年 | 92,000 |
1975年 | 90,000 |
1974年 | 88,000 |
1973年 | 86,000 |
1972年 | 83,000 |
1971年 | 83,000 |
1970年 | 84,000 |
1969年 | 82,000 |
1968年 | 82,000 |
1967年 | 81,000 |
1966年 | 75,000 |
1965年 | 71,000 |
1964年 | 65,000 |
1963年 | 68,000 |
1962年 | 75,000 |
1961年 | 81,000 |
キューバにおけるヤギ飼養頭数の推移を振り返ると、特に1970年代から1980年代にかけて、持続的かつ安定した増加が見られました。1961年の約81,000頭から1989年には約110,000頭へと成長を遂げました。この時期は、政府による農業および畜産管理の安定化が背景にあったと推察されます。しかし1990年代初頭に大幅な減少が見られた背景には、1991年のソビエト連邦の崩壊による経済危機が挙げられます。この「特殊時期」といわれる経済的困窮の時代は、畜産業にも多大な影響を与えました。
1996年以降、キューバのヤギ飼養頭数は劇的に増加し、特に1998年から2006年には年間で100,000~200,000頭規模の増加が見られます。この急増は、ヤギの耐久性や粗食でも飼育可能という特性が、経済的困難を克服する手段として重要視された可能性を示唆しています。また、ヤギの飼養は、乳製品や肉生産だけでなく、小規模農業や自給自足の促進に寄与する面もありました。
しかし、2010年以降は再び減少傾向が見られ、2022年には634,500頭にまで減少しました。この背景には、国内外の経済情勢の変化や、市場の需要構造の多様化が影響している可能性があります。また、新型コロナウイルスのパンデミックによる供給チェーンの断絶や、輸出入難も畜産業全体に悪影響を与えたと考えられます。さらに、キューバでは自然災害(ハリケーンなど)も頻発しており、それらも飼養環境に影響を与えていると考えられます。
地政学的背景を考慮すると、キューバにおける飼養頭数の拡大または縮小は、地域の食料安全保障だけでなく、国際的な貿易問題にも波及する可能性があります。たとえば、キューバはヤギ関連製品を近隣諸国に輸出している場合、その数量の減少は隣接地域のマーケットに直接影響を及ぼす可能性があります。さらに、飼養頭数の減少は国内農村部における生活基盤の弱体化を招くリスクもあります。
将来への対策として、まずヤギ生産基盤の強化と効率化が重要です。具体的には、飼料供給の改善や生産性の高い品種の導入が挙げられます。また、気候変動の影響を最小限に抑えるために災害に強い飼育システムを構築することも必要です。さらには、農村部における教育プログラムを通じ、飼養技術や管理のスキルを底上げする取り組みも求められるでしょう。
国際機関や他国との協力もまた、キューバにとって有益な手段となり得ます。技術支援や資金援助を通じて、持続可能な畜産業への移行を後押しするべきです。特に近隣のカリブ海諸国やラテンアメリカ諸国と協力し、地域全体での農業および畜産の強化を試みることが、地域レベルでの食料安全保障の確保につながります。
全体として、キューバにおけるヤギ飼養頭数の推移は、国内外のさまざまな影響力を反映しており、その変動は地域の持続可能性と経済的安定のための重要な指標となります。今後は、持続可能な方法での生産基盤の維持と改善を図ることで、キューバの農村部の生活の質向上と、さらなる経済成長の基礎となることが期待されます。