国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、キューバの羊肉生産量は、1961年の840トンから始まり、1980年代後半にかけて緩やかな増加を続け、その後1989年に急増し5,304トンを記録しました。その後、1990年代初頭から中期にかけて大幅な変動が確認され、21世紀に入ると再び大きな増加基調を示しました。特に2021年には16,300トンに到達し、過去最高を記録しましたが、2022年と2023年には少し減少傾向を見せています。
キューバの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 12,036 |
-4.24% ↓
|
2022年 | 12,569 |
-22.89% ↓
|
2021年 | 16,300 |
34.17% ↑
|
2020年 | 12,149 |
8.4% ↑
|
2019年 | 11,207 |
8.34% ↑
|
2018年 | 10,345 |
6.34% ↑
|
2017年 | 9,728 |
6.68% ↑
|
2016年 | 9,119 |
-3.5% ↓
|
2015年 | 9,450 |
-6.44% ↓
|
2014年 | 10,100 |
-1.94% ↓
|
2013年 | 10,300 |
-5.07% ↓
|
2012年 | 10,850 |
0.46% ↑
|
2011年 | 10,800 |
16.35% ↑
|
2010年 | 9,282 |
2% ↑
|
2009年 | 9,100 |
6.43% ↑
|
2008年 | 8,550 |
4.91% ↑
|
2007年 | 8,150 |
22.56% ↑
|
2006年 | 6,650 |
-5% ↓
|
2005年 | 7,000 |
-0.1% ↓
|
2004年 | 7,007 |
0.92% ↑
|
2003年 | 6,943 |
-2.69% ↓
|
2002年 | 7,135 |
15.01% ↑
|
2001年 | 6,204 |
0.47% ↑
|
2000年 | 6,175 |
33.66% ↑
|
1999年 | 4,620 |
8.2% ↑
|
1998年 | 4,270 |
20.62% ↑
|
1997年 | 3,540 |
18% ↑
|
1996年 | 3,000 |
-9.09% ↓
|
1995年 | 3,300 |
-40.22% ↓
|
1994年 | 5,520 |
-1.08% ↓
|
1993年 | 5,580 |
-5.1% ↓
|
1992年 | 5,880 |
3.16% ↑
|
1991年 | 5,700 |
3.26% ↑
|
1990年 | 5,520 |
4.07% ↑
|
1989年 | 5,304 |
240% ↑
|
1988年 | 1,560 | - |
1987年 | 1,560 |
1.56% ↑
|
1986年 | 1,536 |
2.4% ↑
|
1985年 | 1,500 |
4.17% ↑
|
1984年 | 1,440 |
9.09% ↑
|
1983年 | 1,320 |
1.85% ↑
|
1982年 | 1,296 |
0.93% ↑
|
1981年 | 1,284 |
0.94% ↑
|
1980年 | 1,272 |
0.95% ↑
|
1979年 | 1,260 |
0.96% ↑
|
1978年 | 1,248 |
1.96% ↑
|
1977年 | 1,224 |
2% ↑
|
1976年 | 1,200 |
1.01% ↑
|
1975年 | 1,188 |
3.13% ↑
|
1974年 | 1,152 |
3.23% ↑
|
1973年 | 1,116 |
3.33% ↑
|
1972年 | 1,080 |
3.45% ↑
|
1971年 | 1,044 |
3.57% ↑
|
1970年 | 1,008 |
3.7% ↑
|
1969年 | 972 |
3.85% ↑
|
1968年 | 936 |
5.41% ↑
|
1967年 | 888 |
2.78% ↑
|
1966年 | 864 |
1.41% ↑
|
1965年 | 852 |
1.43% ↑
|
1964年 | 840 |
-1.41% ↓
|
1963年 | 852 |
-1.39% ↓
|
1962年 | 864 |
2.86% ↑
|
1961年 | 840 | - |
キューバの羊肉生産量の推移を振り返ると、まず1960年代から1980年代前半にかけては穏やかな成長傾向が見られました。この期間の増加は、主に国内消費需要への対応並びに農業技術の改善によるものであると考えられます。しかし1989年には5,304トンへと急激な増加を見せました。その後の増加や減少は、地政学的背景、特に冷戦終結とそれに伴う社会主義経済の影響が大きかったと推測できます。1990年代にはソビエト連邦の崩壊がキューバ経済に大きな影響を与え、「特別期間」と呼ばれる経済危機が発生しました。この影響により、輸入飼料が削減された結果、家畜の飼育状況が悪化し、羊肉の生産量も顕著に減少したと考えられます。
2000年代以降、羊肉生産量は再び上昇基調を示しました。この回復の背景には、農業技術のさらなる改善や畜産業の効率化、政府の支援政策が挙げられます。しかしながら、近年では2021年に16,300トンと過去最高を記録したものの、2022年以降は減少傾向が確認され、2023年には12,036トンに落ち込みました。この新たな減少の背景には、気候変動や飼料価格の上昇、新型コロナウイルスの影響など、内外の要因が絡んでいる可能性があります。
地域課題としては、現地での小規模農家の持続可能性確保が挙げられます。キューバでは農業が依然として重要な経済基盤であるため、飼料の効率的利用や新しい畜産技術の導入が不可欠です。加えて、より大規模な市場開放や輸出拡大も一つの戦略となるでしょう。国際市場で競争可能な品質基準を満たすためには、家畜衛生管理の向上や食品安全基準の厳守が求められます。
地政学的リスクとしては、輸入飼料や関連資材への依存が挙げられます。他国からの供給チェーンが災害や政治的緊張により遮断された場合、大きな影響を受ける可能性があります。また、気候変動の影響も無視できません。異常気象や干ばつは牧草地の生産性を低下させ、畜産業全体に悪影響を与えます。このような環境リスクに対抗するためには、耐久性のある飼料作物の導入や水利施設の整備、さらには地域間協力によるリソース共有が有効となります。
未来に向けて、キューバは持続可能な畜産業の確立を目指すべきです。そのためには、飼料の自給率向上を図り、特にローカル資源を活用した独自のモデルを構築していく必要があります。また、輸出市場拡大に向けて、国際的認証の取得やマーケティング戦略の強化も検討する余地があります。さらに、気候変動対策として、多様化した農業経営や牧草地の再生保全にも力を注ぐべきです。
結論として、キューバの羊肉生産量の歴史は、経済的・地政学的な変化を反映した波動的な推移を示しています。21世紀においては再成長が確認できるものの、輸入依存や気候リスクといった課題が残されています。これらを克服するためには、内外の連携を強化した包括的な政策が必要とされます。国際機関や周辺国との協力を深め、持続可能な畜産業の構築を推進していくことが今後の鍵となるでしょう。