国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによれば、キューバのプランテン(調理用バナナ)の生産量は、1961年から2023年にかけて大きく変動してきました。特に2000年以降は生産量が急増し、2016年の約71.8万トンが一つのピークとなっています。その後も年間60~70万トンの規模を維持していますが、2020年には一時的に59.4万トンに減少しました。2023年には69.9万トンと、近年では安定化の兆しが見えています。
キューバのプランテン・調理用バナナ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 698,795 |
3.91% ↑
|
2022年 | 672,516 |
8.72% ↑
|
2021年 | 618,565 |
4.07% ↑
|
2020年 | 594,374 |
-16.94% ↓
|
2019年 | 715,586 |
3.81% ↑
|
2018年 | 689,319 |
-4.18% ↓
|
2017年 | 719,391 |
0.18% ↑
|
2016年 | 718,069 |
9.51% ↑
|
2015年 | 655,726 |
3.6% ↑
|
2014年 | 632,968 |
24.56% ↑
|
2013年 | 508,164 |
-26.3% ↓
|
2012年 | 689,504 |
17.86% ↑
|
2011年 | 585,000 |
20.42% ↑
|
2010年 | 485,800 |
14.31% ↑
|
2009年 | 425,000 |
-10.98% ↓
|
2008年 | 477,400 |
-21.09% ↓
|
2007年 | 605,000 |
13.66% ↑
|
2006年 | 532,283 |
9.87% ↑
|
2005年 | 484,487 |
-36.37% ↓
|
2004年 | 761,400 |
-4.49% ↓
|
2003年 | 797,200 |
52.43% ↑
|
2002年 | 523,000 |
-19.53% ↓
|
2001年 | 649,938 |
12.19% ↑
|
2000年 | 579,313 |
38.75% ↑
|
1999年 | 417,533 |
10.43% ↑
|
1998年 | 378,100 |
3.67% ↑
|
1997年 | 364,700 |
-16.92% ↓
|
1996年 | 439,000 |
54.04% ↑
|
1995年 | 285,000 |
7.55% ↑
|
1994年 | 265,000 | - |
1993年 | 265,000 |
-22.3% ↓
|
1992年 | 341,058 |
138.33% ↑
|
1991年 | 143,102 |
10.93% ↑
|
1990年 | 129,000 |
18.53% ↑
|
1989年 | 108,829 |
-23.59% ↓
|
1988年 | 142,435 |
20.66% ↑
|
1987年 | 118,051 |
-33.37% ↓
|
1986年 | 177,185 |
23.49% ↑
|
1985年 | 143,482 |
-16.54% ↓
|
1984年 | 171,910 |
51.15% ↑
|
1983年 | 113,734 |
42.6% ↑
|
1982年 | 79,760 |
-8.18% ↓
|
1981年 | 86,869 |
-2.3% ↓
|
1980年 | 88,914 |
5.6% ↑
|
1979年 | 84,198 |
-14.21% ↓
|
1978年 | 98,150 |
14.74% ↑
|
1977年 | 85,543 |
-5.02% ↓
|
1976年 | 90,061 |
10.65% ↑
|
1975年 | 81,394 |
-11.26% ↓
|
1974年 | 91,724 |
-17.75% ↓
|
1973年 | 111,515 |
-5.24% ↓
|
1972年 | 117,686 |
156.11% ↑
|
1971年 | 45,952 |
49.18% ↑
|
1970年 | 30,804 |
-67.35% ↓
|
1969年 | 94,349 |
17.48% ↑
|
1968年 | 80,311 |
36.97% ↑
|
1967年 | 58,633 |
-18.4% ↓
|
1966年 | 71,855 |
6.07% ↑
|
1965年 | 67,742 |
-14.53% ↓
|
1964年 | 79,256 |
10.53% ↑
|
1963年 | 71,705 |
11.66% ↑
|
1962年 | 64,218 |
7.03% ↑
|
1961年 | 60,000 | - |
キューバにおけるプランテン(調理用バナナ)の生産量データは、食糧安全保障や農業政策、経済動態を考える上で重要な指標を提供しています。このデータは国内の消費需要や農業インフラ、気象条件、さらには市場外部環境まで多岐にわたる影響要因を反映しています。
1961年から始まるデータを見ると、当初は6万トン前後の比較的小規模な生産量でしたが、1970年代初頭から中盤にかけて急激な成長と変動が見られます。この間、例えば1972年には11.7万トン、1984年には17.1万トンに達するなど、国内農業政策や生産技術の改善が後押しとなったと考えられます。しかしながら、1980年代後半から幾度かの減少が見受けられ、1992年の34.1万トンを迎えた際には一種の大規模成長期に突入します。これには、冷戦終了後の経済再編と国内資源の集中投資が関係している可能性があります。
特筆すべきは、2000年代以降の著しい生産量の伸長です。2000年の57.9万トンから2003年には79.7万トンという大きな伸びを記録し、この時期には農業インフラの強化や輸出市場の拡大が関連していると考えられます。ただし、2005年や2008年には減少傾向も見られ、これにはキューバを襲ったハリケーンなどの自然災害が影響を与えた可能性が高いです。特に、災害の影響は農地そのものだけでなく輸送インフラや労働力にも波及しやすいため、復旧や計画的な対策が重要となります。
さらに近年では、COVID-19のパンデミックによる影響が挙げられます。2020年の59.4万トンという減少は、労働力不足や輸出入制限、物流の混乱などによるものと推測されます。その後は持ち直し、2021年から2023年にかけては約62~69万トンの範囲で安定しています。
キューバのプランテン生産は国内消費を中心に展開されているため、国際市場とは異なる特性を持つ一方、貿易可能性も秘めています。たとえば、アフリカ諸国やラテンアメリカ諸国とは、同様の農作物需要があるため、地域間の協力強化が生産の安定化と輸出の拡大に寄与しうるでしょう。
将来に向けた課題としては、気候変動が依然として最大のリスクとなります。キューバは大西洋ハリケーンの通り道として知られる地域に位置しており、作物の栽培可能な条件が振れやすい特性を持っています。温室効果ガス排出を抑制し、気候耐性の高い農作物を導入する研究が必要です。また、農業従事者の高齢化という普遍的な問題があり、長期的には若年層への農業教育や、技術を活用した生産効率の向上が急務です。
結論として、キューバのプランテン生産は、過去のデータを見ると年間の変動が激しい時期がありましたが、2023年時点では一定の安定を見せています。今後は国内消費の確保だけでなく、余剰生産量をターゲットに輸出市場の開拓を図ることが望ましいでしょう。特に、地域内の農業協力を強化し、インフラ投資を推進することで、災害や疫病などの外的要因に対するリスク対応能力を向上させることが重要です。このような措置を取ることで、キューバはその食糧安全保障を強化しつつ、地域経済への寄与をさらに拡大できると考えられます。