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キューバの馬肉推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、キューバにおける馬肉生産量は、1961年に936トンから年々増加を続け1977年には最盛期となる1,632トンを記録しました。その後、1990年代から急激な減少が始まり、特に2000年代において著しい縮小が見られました。2006年の228トンを記録した後、再び小幅な増加が続いており、2023年現在は231トンに達しています。これは、ピーク時である1977年の約14%の水準です。このような長期的な変動は、経済的、地政学的、そして農業政策の影響によるものと考えられます。

年度 (トン) 増減率
2023年 231
11.91% ↑
2022年 206
1.98% ↑
2021年 202
-10.22% ↓
2020年 225
9.76% ↑
2019年 205
-15.11% ↓
2018年 242
-16.72% ↓
2017年 290
40.78% ↑
2016年 206
8.99% ↑
2015年 189
-1.56% ↓
2014年 192
18.52% ↑
2013年 162
-2.41% ↓
2012年 166
-3.49% ↓
2011年 172
6.17% ↑
2010年 162
8.72% ↑
2009年 149
-17.68% ↓
2008年 181
-10.84% ↓
2007年 203
-10.96% ↓
2006年 228
-62% ↓
2005年 600
-24.81% ↓
2004年 798
-25.28% ↓
2003年 1,068
1.14% ↑
2002年 1,056
1.15% ↑
2001年 1,044
-3.33% ↓
2000年 1,080 -
1999年 1,080
5.88% ↑
1998年 1,020
-7.61% ↓
1997年 1,104
-8% ↓
1996年 1,200
-2.91% ↓
1995年 1,236
-2.83% ↓
1994年 1,272
-1.85% ↓
1993年 1,296
-18.8% ↓
1992年 1,596
-3.62% ↓
1991年 1,656
-4.83% ↓
1990年 1,740 -
1989年 1,740
3.57% ↑
1988年 1,680
-3.45% ↓
1987年 1,740
0.69% ↑
1986年 1,728
0.7% ↑
1985年 1,716
2.14% ↑
1984年 1,680
2.19% ↑
1983年 1,644
1.48% ↑
1982年 1,620 -
1981年 1,620
3.85% ↑
1980年 1,560
8.33% ↑
1979年 1,440
-11.76% ↓
1978年 1,632
13.33% ↑
1977年 1,440 -
1976年 1,440 -
1975年 1,440 -
1974年 1,440 -
1973年 1,440
1.69% ↑
1972年 1,416
2.61% ↑
1971年 1,380
4.55% ↑
1970年 1,320 -
1969年 1,320
4.76% ↑
1968年 1,260
5% ↑
1967年 1,200
5.26% ↑
1966年 1,140
5.56% ↑
1965年 1,080 -
1964年 1,080
5.88% ↑
1963年 1,020
6.25% ↑
1962年 960
2.56% ↑
1961年 936 -

キューバの馬肉生産量データは、同国の農業および経済政策、気候条件、さらには地政学的現象が与えた影響を視覚的に示す興味深い指標です。馬肉は必ずしも主要な食用肉としての位置付けではありませんが、特定の地域や経済、食文化において重要な役割を果たしてきました。

データを見ると、1961年から1977年にかけて安定的な増加が見られます。この期間は、キューバ革命後の集団農場の設立や農業推進政策が行われた時期に一致します。農業の近代化とともに、馬も農業労働力に加えて食料資源として活用される割合が増えた可能性があります。しかしながら、1978年以降、この成長は停滞し始め、1980年代後半から1990年代初頭にかけて急激な減少が始まりました。特に、1993年から1996年にかけての減少率は著しく、一時期は1200トンを割り込むこととなりました。この背景には、ソビエト連邦の崩壊に伴う経済支援の大幅な減少、「特別期」と呼ばれる経済危機が深く影響しています。

さらに2000年代以降の減少は、農業規模縮小や政策の変化、さらには輸入依存の拡大が合わさった結果と考えられます。特に2004年から2008年にかけて200トン以下にまで落ち込んだことは、食糧安全保障や農業の自立性といった観点で、キューバが直面している深刻な課題を浮き彫りにしています。この減少の傾向には、ハリケーンをはじめとする自然災害の影響や、新型感染症の流行により国際的なサプライチェーンが混乱したことが影響している可能性も指摘されています。

2023年時点では、231トンとやや回復基調にあるものの、1977年のピークと比較すれば著しく低い水準にとどまっています。この背景には、農業従事者の減少といった国内の人手不足、また馬を食料とする文化的需要の減少が絡んでいます。他の国と比較すると、たとえば馬肉生産量が安定しているフランス、または輸出産業としての馬肉を重要視しているカナダとは対照的に、キューバでは馬肉生産が優先順位の低い分野となっているようです。

このような状況を改善するには、まず農業政策において持続可能性を重視した改革が不可欠です。たとえば、小規模農家への支援を拡大し、新しい飼育技術や家畜管理の知見を現地に導入することで、効率の向上が期待できるでしょう。また、輸出向けの市場開拓も一つの選択肢です。これには国際基準を満たす品質管理体制の整備が必要となるため、国際機関やNGOの技術支援を仰ぐことが考えられます。

さらには、気候変動の影響や災害リスク管理も重要です。頻発するハリケーンによって農業全体が壊滅的な打撃を受けることが予想されるため、自然災害に備えるためのレジリエンス向上策が不可欠です。一例として、馬肉生産を含む家畜産業の気候適応策や、災害時における迅速な復旧支援体制を整えることが挙げられます。

最後に、地政学的リスクにも注目が必要です。輸出や貿易に関する政策が国際的制裁や紛争によって制約を受ける可能性があるため、地域間協力による安定した経済関係を築くことが重要です。特に近隣諸国やラテンアメリカ圏内での連携を強化することで、国内農業だけでなく輸出産業全体の衰退を防ぐ糸口になるでしょう。

こうした課題を考慮した具体的な対応策を講じることができれば、キューバの馬肉生産は再び安定した成長を見せ、地元経済の一助となる可能性を秘めています。