国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、キューバのジャガイモ生産量は1961年から2022年にわたる長期的な推移において、大きな変動が見られます。特に1980年代後半から1990年代初頭は生産量が高い水準で推移していた一方で、それ以降は減少の傾向が顕著です。2022年の生産量は92,942トンで、ピークである1986年の316,473トンから大幅に減少しています。
キューバのジャガイモ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 92,942 |
2021年 | 97,292 |
2020年 | 115,385 |
2019年 | 129,500 |
2018年 | 135,147 |
2017年 | 147,044 |
2016年 | 95,663 |
2015年 | 123,938 |
2014年 | 53,308 |
2013年 | 106,700 |
2012年 | 130,933 |
2011年 | 165,600 |
2010年 | 191,500 |
2009年 | 278,600 |
2008年 | 196,100 |
2007年 | 143,700 |
2006年 | 286,200 |
2005年 | 313,100 |
2004年 | 328,700 |
2003年 | 304,600 |
2002年 | 329,713 |
2001年 | 345,380 |
2000年 | 367,853 |
1999年 | 344,208 |
1998年 | 206,208 |
1997年 | 329,946 |
1996年 | 364,958 |
1995年 | 281,642 |
1994年 | 188,334 |
1993年 | 235,245 |
1992年 | 264,501 |
1991年 | 237,553 |
1990年 | 202,680 |
1989年 | 281,660 |
1988年 | 276,750 |
1987年 | 249,663 |
1986年 | 316,473 |
1985年 | 307,268 |
1984年 | 259,387 |
1983年 | 206,706 |
1982年 | 258,274 |
1981年 | 272,946 |
1980年 | 239,380 |
1979年 | 200,800 |
1978年 | 198,290 |
1977年 | 154,856 |
1976年 | 149,356 |
1975年 | 120,921 |
1974年 | 87,689 |
1973年 | 57,673 |
1972年 | 75,882 |
1971年 | 76,233 |
1970年 | 77,476 |
1969年 | 95,983 |
1968年 | 122,957 |
1967年 | 104,172 |
1966年 | 103,970 |
1965年 | 83,487 |
1964年 | 75,317 |
1963年 | 85,755 |
1962年 | 87,900 |
1961年 | 113,000 |
キューバのジャガイモ生産量のデータを見ると、1961年の生産量は113,000トンで、1960年代を通じて上昇と下降を繰り返していました。その後、1970年代後半から1980年代にかけて生産量は安定的に増加し、1986年には316,473トンのピークを迎えました。この時期は、農地の拡大や農業技術の向上、品種改良が進んでいたと推測されます。また、当時はソビエト連邦を筆頭とした社会主義陣営からの経済的支援も背景にあり、農業機械の導入や化学肥料の供給が可能であったことが影響しています。
しかし、1990年以降は急激な減少が見られます。これは、冷戦終結とソビエト連邦の崩壊に伴う経済危機、いわゆる「スペシャル・ピリオド」による農業構造の変化に起因します。この時期に、キューバでは燃料や機械、輸入肥料が不足したことで、農業生産全般が打撃を受けました。その後も、ジャガイモ生産量は一時的な回復を見せるものの、1996年以降は大きな変動を経ながらも全体的な減少傾向が続いています。
21世紀に入り、2000年には367,853トンと、記録上の第二のピークに達しましたが、その後は再び減衰し、2022年にはわずか92,942トンとなっています。この低下にはいくつかの要因が考えられます。一つには、肥沃な農地の減少や設備の老朽化、そして洪水や干ばつといった異常気象に伴う収穫量の低迷があります。さらに、国際的な制裁やキューバ経済の停滞も農業の持続可能性に影響を与えています。また近年、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、農業従事者数の減少や物流の制約もプロダクションに大きな影響を及ぼした可能性があります。
この傾向を踏まえ、今後の課題としては、まず土壌の管理を改善し、持続可能な農業を推進することが不可欠です。具体的には、有機肥料の利用を促進し、灌漑システムを近代化する必要があります。また、気候変動への適応策として、耐病性および耐乾燥性を持つ品種の導入と普及を進めることが重要です。加えて、都市農業や家庭菜園を奨励し、地元食材供給の多様化を目指す政策も有効でしょう。また、対外的には、農業関連技術の輸入や国際的支援を受けるための枠組みを強化することが求められます。
ジャガイモはキューバの主要食料作物の一つであり、生産量の減少は国内の食糧安全保障にも影響を及ぼします。そのため、持続可能な農業政策の構築は国の安定に直結しています。FAOや地域の農業支援機関と協力し、包括的な農業改革を進めることが喫緊の課題といえるでしょう。地政学的には、地域の気候変動や国際的な資源競争の影響を受ける可能性も高いため、多角的なアプローチが求められます。そして、長期的には国内経済を安定化させ、農業の復興を軌道に乗せることが必要不可欠です。