国際連合食糧農業機関(FAO)が提供するデータによれば、キューバの牛の飼養数は1961年の約502万5千頭から始まり、1960年代末にかけて増加傾向を見せ、ピーク時の1968年には687万6千頭に達しました。その後、漸減が始まり、2022年には過去最低の約351万6千頭にまで減少しています。この推移はキューバの経済的、社会的、地政学的状況の変化に密接に関連しており、持続可能な畜産業の基盤が必要であることを示唆しています。
キューバの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 3,516,400 |
2021年 | 3,657,300 |
2020年 | 3,752,400 |
2019年 | 3,817,300 |
2018年 | 3,808,400 |
2017年 | 3,865,500 |
2016年 | 4,013,900 |
2015年 | 4,045,900 |
2014年 | 4,134,300 |
2013年 | 4,092,200 |
2012年 | 4,084,000 |
2011年 | 4,059,100 |
2010年 | 3,992,500 |
2009年 | 3,892,800 |
2008年 | 3,821,300 |
2007年 | 3,787,400 |
2006年 | 3,737,200 |
2005年 | 3,703,700 |
2004年 | 3,942,600 |
2003年 | 4,025,400 |
2002年 | 3,972,300 |
2001年 | 4,038,400 |
2000年 | 4,110,200 |
1999年 | 4,405,800 |
1998年 | 4,643,700 |
1997年 | 4,606,000 |
1996年 | 4,601,100 |
1995年 | 4,632,000 |
1994年 | 4,617,100 |
1993年 | 4,583,000 |
1992年 | 4,609,300 |
1991年 | 4,735,500 |
1990年 | 4,802,600 |
1989年 | 4,926,800 |
1988年 | 4,984,000 |
1987年 | 5,007,100 |
1986年 | 5,019,500 |
1985年 | 5,115,200 |
1984年 | 5,101,000 |
1983年 | 5,112,300 |
1982年 | 5,095,100 |
1981年 | 5,057,200 |
1980年 | 5,212,500 |
1979年 | 5,229,200 |
1978年 | 5,346,600 |
1977年 | 5,439,600 |
1976年 | 5,621,800 |
1975年 | 5,484,100 |
1974年 | 5,374,600 |
1973年 | 5,354,000 |
1972年 | 5,514,500 |
1971年 | 5,738,100 |
1970年 | 6,282,400 |
1969年 | 6,647,900 |
1968年 | 6,876,700 |
1967年 | 6,774,200 |
1966年 | 6,699,500 |
1965年 | 6,575,300 |
1964年 | 6,378,000 |
1963年 | 5,974,900 |
1962年 | 5,766,400 |
1961年 | 5,025,000 |
キューバの牛飼養数は1960年代に急増し、687万6千頭(1968年)を記録しました。この成長は当時の社会主義体制下における農業および畜産業の集約化政策に由来するもので、国内の食料自給率向上を目指したものでした。しかし、1970年代以降、牛の飼養数は減少に転じ、2000年代後半以降は350万頭台にまで低下しました。1990年代にはソビエト連邦の崩壊による経済危機、「スペシャル・ピリオド」と呼ばれる困難な時期が、畜産業にも大きな打撃を与えました。この時期、輸入飼料や機材の供給が極端に不足し、農業の生産性が低下しました。その結果として、持続的に減少する飼養数が示されています。
さらに、近年の牛飼養数の減少は、気候変動や自然災害の影響とも無関係ではありません。キューバはハリケーンや干ばつなどの自然災害に見舞われやすい地域であり、これらの災害は農業や放牧可能地域を損傷し、牛の飼養環境を一層困難なものにしています。また、新型コロナウイルス感染症の流行により観光収入が減少し、キューバ経済全体が深刻な影響を受けたことも、飼養数回復への投資が滞った一因と考えられます。
飼養数の減少と並行して、国内での牛肉および乳製品の供給も限られており、食料安全保障が課題となっています。この問題は輸入に依存しない経済構造と地場生産の重要性を強調しています。同時に、家畜の扱いにおける倫理的配慮を加味しながら、環境を保護し、持続可能な畜産モデルの確立が求められています。
この動向に対応するため、キューバ政府および国際機関は具体的な対策を講じる必要があります。例えば、持続可能な畜産業を構築するための技術支援や資金援助の拡充が重要です。具体的には、飼料生産を増やすための効率的な農地利用、干ばつなどの気候変動への影響を抑えるインフラ整備、そして家畜の管理や健康を向上させる技術トレーニングの導入が考えられます。また、地域間の協力を深め、関連資源の共有や輸出入バランスの再構築を図ることも有益でしょう。
他国のケースに目を向けると、例えばブラジルやアルゼンチンなどは牛飼養数の多い国であり、大規模で効率的な牧畜システムを維持しています。一方で、キューバは地理的条件や経済規模の制限を考慮し、より小規模な家畜モデルと、環境保護や地域コミュニティを重視したアプローチが適していると考えられます。
今後、飼養数の安定と増加を図るためには、政策的支援や農業セクターへの投資が不可欠です。また、多国間の枠組みを活用して、地政学的なリスクに備えるとともに、外部からの技術や資本の導入を進めることが必要でしょう。これらの取り組みを通じて、食料供給の安定化と農村地域の活性化を目指すことが、キューバ経済復活への鍵となるはずです。