Skip to main content

キューバのニンニク生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、キューバのニンニク生産量は長期間にわたり大きな変動を見せてきました。特に1960年代から1980年代中頃には生産量が非常に低迷していた一方で、1990年以降は一度急激に回復し、2000年代に入ってピークを迎えました。しかし、その後は減少傾向が続き、2023年の生産量は9,868トンとなり、近年最低水準に達しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 9,868
-7.68% ↓
2022年 10,689
-5.52% ↓
2021年 11,313
-6.46% ↓
2020年 12,094
-37.66% ↓
2019年 19,400
12.01% ↑
2018年 17,320
-11.01% ↓
2017年 19,462
-16.32% ↓
2016年 23,257
4.75% ↑
2015年 22,202
-7.53% ↓
2014年 24,009
-4.62% ↓
2013年 25,171
15.66% ↑
2012年 21,762
-16.3% ↓
2011年 26,000
-23.03% ↓
2010年 33,779
-16% ↓
2009年 40,213
15.61% ↑
2008年 34,782
-0.14% ↓
2007年 34,832
3.79% ↑
2006年 33,560
-34.16% ↓
2005年 50,970
-12.89% ↓
2004年 58,514
59.73% ↑
2003年 36,633
15.66% ↑
2002年 31,674
-21.33% ↓
2001年 40,261
-12.83% ↓
2000年 46,185
152.02% ↑
1999年 18,326
54.77% ↑
1998年 11,841
-2.21% ↓
1997年 12,109
39.14% ↑
1996年 8,703
22.78% ↑
1995年 7,088
-21.24% ↓
1994年 9,000
48.59% ↑
1993年 6,057
-32.61% ↓
1992年 8,988
49.8% ↑
1991年 6,000 -
1990年 6,000
3429.41% ↑
1989年 170 -
1988年 170 -
1987年 170 -
1986年 170 -
1985年 170 -
1984年 170
6.25% ↑
1983年 160
6.67% ↑
1982年 150
-13.79% ↓
1981年 174
-10.77% ↓
1980年 195
282.35% ↑
1979年 51
41.67% ↑
1978年 36
350% ↑
1977年 8
-91.3% ↓
1976年 92
24.32% ↑
1975年 74
-43.51% ↓
1974年 131
45.56% ↑
1973年 90
20% ↑
1972年 75
-50.98% ↓
1971年 153
-44.77% ↓
1970年 277
97.86% ↑
1969年 140
169.23% ↑
1968年 52
23.81% ↑
1967年 42
61.54% ↑
1966年 26
-76.58% ↓
1965年 111
-73.38% ↓
1964年 417
-31.97% ↓
1963年 613
238.67% ↑
1962年 181
-81.9% ↓
1961年 1,000 -

キューバのニンニク生産量の推移を見ると、その変動には複雑な経済的・社会的・地政学的要因が影響していることが分かります。1960年代から1980年代までは、キューバ革命の影響や、国家主導で進められた農業の集中計画が、特定の作物に重点を置く結果となり、ニンニクのような非優先作物の生産は極端に低下しました。この時期の生産量は年間100トンから200トン前後と、きわめて低水準でした。

1990年代に入ると、冷戦終結に伴う旧ソ連の崩壊がキューバ経済に強い影響を及ぼしましたが、同時に農業政策の見直しが進み、ニンニクの生産量は急激に増加しました。この時期、生産量は1990年の6,000トンから2000年には46,185トンと大幅な上昇を遂げ、2004年には58,514トンに達し、ピークを記録しました。しかし、この短期的な繁栄の後、ニンニク生産は再び失速し始め、世界市場の競争激化や気候変動の影響、さらに国内インフラの老朽化などが生産の大幅な減少に寄与しました。

近年は特に2020年からの新型コロナウイルス感染症の影響もあり、生産量は更に下落しています。ロックダウン政策や物流網の制限が農産品の流通に直接的な障害をもたらし、その後も経済の低迷が農業分野に打撃を与え続けています。また、2022年からのエネルギー価格の高騰と、世界的な肥料の供給不足が農業コストを押し上げ、生産性向上への取り組みに悪影響を与えています。この結果、2023年のニンニク生産量は9,868トンと20年前と比べ著しく低下しました。

他国と比較すると、日本や韓国、ドイツといった国々はキューバよりも遥かに効果的な農業技術を取り入れ、生産性の向上に成功しています。また、隣国のアメリカや中南米の大規模農業を営む国々は効率的な生産システムと市場接続力を背景に、ニンニク市場での競争力を維持しています。一方でキューバは未だに社会主義体制による独特な運営方法から近代的な農業技術の導入が進んでおらず、これが構造的な課題となっています。

こうした状況を打開する対策として、まず必要なのは農業への技術投資の促進です。より耐乾性の高い種子の開発や、灌漑施設を整備することで、生産性を向上させることが可能です。また、地域間の協力体制を強化することで、隣接国から効率的な農業技術を取り入れる機会を増やすべきです。エネルギーや肥料の依存度削減を目的に、その代替となる持続可能な資源や取引関係を模索することも重要です。さらに、政策的には農民への補助金制度や、外資導入の規制緩和を通じて、農業分野を活性化する必要があります。

キューバのニンニク生産量の減少は、国内の食糧自給率や経済的安定性に悪影響を及ぼし得るため、早急に対策を検討する必要があります。国際機関との協力を強化し、専門的支援を受ける形で気候変動や経済的リスクへの適応を進めることが今後求められます。そして何よりも、国家レベルの戦略と地域経済を巻き込んだ改革を同時に進めることが、長期的な安定と成長に繋がるといえるでしょう。

キーワード検索