Skip to main content

キューバのトウモロコシ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、キューバのトウモロコシ生産量は1961年に97,000トンと記録され、それ以降数十年間低迷した後、1990年代半ばから急激に増加しました。2000年代初頭には40万トンを超えるピークを迎えましたが、2015年以降不安定な状況が続き、特に2020年以降急減しています。2022年には167,054トンまで落ち込んでおり、近年の著しい減少が目立っています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 160,000
-4.22% ↓
2022年 167,054
-30.02% ↓
2021年 238,721
-7.19% ↓
2020年 257,216
-16.22% ↓
2019年 307,000
-11.25% ↓
2018年 345,909
-7.48% ↓
2017年 373,870
-7.56% ↓
2016年 404,467
11.42% ↑
2015年 363,021
-15.32% ↓
2014年 428,695
0.59% ↑
2013年 426,200
18.26% ↑
2012年 360,400
1.81% ↑
2011年 354,000
9.1% ↑
2010年 324,463
6.45% ↑
2009年 304,800
-6.42% ↓
2008年 325,700
-11.69% ↓
2007年 368,800
20.76% ↑
2006年 305,400
-15.75% ↓
2005年 362,500
-9.08% ↓
2004年 398,700
10.75% ↑
2003年 360,000
16.5% ↑
2002年 309,000
3.38% ↑
2001年 298,900
9.41% ↑
2000年 273,200
14.93% ↑
1999年 237,700
34.6% ↑
1998年 176,600
-12.79% ↓
1997年 202,500
40.72% ↑
1996年 143,900
38.63% ↑
1995年 103,800
5.38% ↑
1994年 98,500
44.85% ↑
1993年 68,000
4.62% ↑
1992年 65,000
17.44% ↑
1991年 55,349
-14.91% ↓
1990年 65,045
-18.69% ↓
1989年 80,000
-15.79% ↓
1988年 95,000 -
1987年 95,000 -
1986年 95,000 -
1985年 95,000 -
1984年 95,000 -
1983年 95,000 -
1982年 95,000 -
1981年 95,000 -
1980年 95,000 -
1979年 95,000 -
1978年 95,000 -
1977年 95,000
1.06% ↑
1976年 94,000
0.5% ↑
1975年 93,536
-1.36% ↓
1974年 94,821
9.08% ↑
1973年 86,924
-2.28% ↓
1972年 88,950
1.08% ↑
1971年 88,000
3.53% ↑
1970年 85,000
3.66% ↑
1969年 82,000
-8.89% ↓
1968年 90,000
2.27% ↑
1967年 88,000
-2.22% ↓
1966年 90,000
3.45% ↑
1965年 87,000
-3.33% ↓
1964年 90,000
-5.26% ↓
1963年 95,000
-3.06% ↓
1962年 98,000
1.03% ↑
1961年 97,000 -

キューバのトウモロコシ生産は1960年代から1980年代にかけて、年間約9万~10万トンの間に留まり長年低調でした。この時期の生産量の安定性は国際政治や冷戦下でのソビエト連邦からの経済的支援によるものでしたが、同時に大規模な農業改革や産業重視政策が行われ、トウモロコシを含む農産物への投資が不足していた可能性も考えられます。

1990年代初頭、冷戦の終結やソ連崩壊が原因となり、経済的支援が失われたことで、1990年以降急激に生産量が減少しました。1990年の65,045トンから1991年には55,349トンまで落ち込み、キューバの農業が大きな危機に直面したことを反映しています。しかし、1990年代中盤以降にかけて持ち直し、1995年には10万トンを突破し、さらに2000年代初めまでに急激に右肩上がりとなりました。これは、有機農業の導入や国内政策の見直し、技術革新が進んだ結果であると考えられます。また、気候的な安定や国際価格の上昇が生産の拡大を後押しした可能性もあります。

2000年代にキューバのトウモロコシ生産はピークを迎え、2004年には398,700トンという大規模な供給力を見せました。しかしながら、それ以降は天候問題や農地の劣化、インフラ不足など、持続可能性の課題が顕在化しはじめました。その後、2015年以降は不安定になり、2020年には257,216トン、2022年には167,054トンと大幅に縮小しています。この減少には新型コロナウイルスのパンデミックによるサプライチェーンの混乱や、国内経済危機、外部からの資本投下不足が関与していると考えられます。また、近年の気候変動が旱魃や台風などの極端な気象条件を引き起こし、農作物の生産性を低下させたことも影響しています。

こうした状況に対処するために、キューバ国内ではトウモロコシ生産の持続可能性を向上させるための一連の対策が必要です。例えば、土壌保全のための緑肥や間作技術の導入、灌漑設備の近代化、種子の品種改良などが効果的とされています。また、農業従事者に対する技術支援や教育を強化し、農業の魅力を高める政策も必要です。さらに、国際的な環境ファンドや気候変動対策資金を活用し、気象災害に耐性のある農業モデルの導入も重要です。

地政学的視点では、キューバの経済構造や貿易パートナーの狭さがトウモロコシ生産の不安定化に拍車を掛けています。特に、アメリカによる経済封鎖の長期化が外貨獲得の妨げになり、農業への投資を制限しています。そのため、地域協力を強化し、ラテンアメリカ諸国との協働や国際連合機関との連携を模索することが有益です。また、輸入の依存度を低減させるために、自給自足型の農業モデルへの転換を試みることが今後の安定につながるでしょう。

結論として、キューバのトウモロコシ生産は過去60年で大きな変動を経験しました。今後、気候変動や地政学的リスク、経済的困難といった課題に直面しながらも、持続可能な改善を目指すことが必要です。国際的な協力や新たな技術導入を通じて、安定した生産基盤を構築することが、キューバの農業にとって重要な使命となっています。