Skip to main content

朝鮮民主主義人民共和国の牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の牛乳生産量は1961年の2,100トンから始まり、1980年代後半に90,000トン程度に達しました。その後1990年代の経済危機などによる減退を経て、2000年代には再び90,000トン前後に回復しました。2023年時点では83,980トンと安定しているものの、過去のピーク時と比べると停滞が続いています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 83,980
0.78% ↑
2022年 83,330
-1.16% ↓
2021年 84,311
-0.16% ↓
2020年 84,445
0.46% ↑
2019年 84,059
0.33% ↑
2018年 83,780
0.1% ↑
2017年 83,698
0.35% ↑
2016年 83,408
0.31% ↑
2015年 83,148
-0.05% ↓
2014年 83,188
-15.11% ↓
2013年 98,000 -
2012年 98,000
2.08% ↑
2011年 96,000
3.01% ↑
2010年 93,196
-3.92% ↓
2009年 97,000
1.04% ↑
2008年 96,000
-1.03% ↓
2007年 97,000
1.04% ↑
2006年 96,000
16.86% ↑
2005年 82,152
-11.78% ↓
2004年 93,119
-0.94% ↓
2003年 94,000
13.9% ↑
2002年 82,531
-10.29% ↓
2001年 92,000
2.22% ↑
2000年 90,000
4.65% ↑
1999年 86,000
1.18% ↑
1998年 85,000
7.59% ↑
1997年 79,002
-1.25% ↓
1996年 80,000
-5.88% ↓
1995年 85,000
-5.56% ↓
1994年 90,000
5.88% ↑
1993年 85,000
-8.6% ↓
1992年 93,000
3.33% ↑
1991年 90,000
2.27% ↑
1990年 88,000
2.33% ↑
1989年 86,000
1.18% ↑
1988年 85,000
2.41% ↑
1987年 83,000
3.75% ↑
1986年 80,000
6.67% ↑
1985年 75,000
7.14% ↑
1984年 70,000
2.94% ↑
1983年 68,000
9.68% ↑
1982年 62,000
3.33% ↑
1981年 60,000
11.11% ↑
1980年 54,000
8% ↑
1979年 50,000
19.05% ↑
1978年 42,000
16.67% ↑
1977年 36,000
20% ↑
1976年 30,000
15.38% ↑
1975年 26,000
8.33% ↑
1974年 24,000
9.09% ↑
1973年 22,000
10% ↑
1972年 20,000
11.11% ↑
1971年 18,000
12.5% ↑
1970年 16,000
6.67% ↑
1969年 15,000
36.36% ↑
1968年 11,000
22.22% ↑
1967年 9,000
28.57% ↑
1966年 7,000
40% ↑
1965年 5,000
33.33% ↑
1964年 3,750
50% ↑
1963年 2,500
4.17% ↑
1962年 2,400
14.29% ↑
1961年 2,100 -

北朝鮮の牛乳生産量推移は、同国の経済や社会状況を反映した重要な指標の一つといえます。1961年にはわずか2,100トンであった牛乳生産量は、1960年代から1970年代を通じて急激に増加しました。この増加は、農業政策の強化や集団農場制度の拡充、家畜育成への投資の成果と考えられます。特に1970年代末には年間生産量が50,000トンを突破し、その後も順調に増え続け、1980年代末には約90,000トンに達しました。この時期は、乳製品の消費需要の増加や家畜農業技術の向上が背景にあったと推測されます。

一方、1990年代に入ると北朝鮮は深刻な経済危機を経験し、それに伴う食糧問題が発生しました。この時期の牛乳生産量は安定を欠き、1993年や1995年には85,000トンに急落しました。さらに1996年の80,000トンという記録は、この時期の持続的な混乱を物語っています。この減少は、経済封鎖や洪水などの自然災害、そしてインフラや資源の不足に起因すると考えられます。1990年代後半から2000年代にかけては小幅な回復傾向を見せましたが、その後の増加は限定的で、2023年には83,980トンとほぼ横ばいの状態が続いています。

現代における特筆すべき課題は、生産量が一時的に改善したように見えても、慢性的な停滞が続いている点です。牛乳の生産量は栄養状態や消費者の健康に直結するため、特に子供たちの栄養改善の観点からも重要です。北朝鮮が直面するこれらの課題には、農業基盤の老朽化や農業労働者の減少、長引く国際的な経済制裁といった地政学的リスクが関与しており、これらが生産効率と持続可能性の向上を妨げています。

また、他国との比較で見ると、日本の2023年の牛乳生産量は8,000,000トンを超えており、北朝鮮の100倍近い規模に達しています。韓国でも約2,100,000トンであり、これらの隣国との大きな差は、技術力、インフラ整備、政策支援の不足を示唆しています。同時に、中国やインドのような地域大国における急成長とも対照的な動きが見られます。

将来的には、長期的な生産量の安定を図るため、いくつかの具体的な対策が求められます。一つは、国内の畜産技術を強化するための教育と訓練の提供です。例えば、国際機関の技術支援を活用し、効率的な酪農技術や飼料利用法を導入することが有効です。また、自然災害や疫病による影響を最小化するため、防災インフラの整備や衛生啓発活動の強化も重要です。加えて、地域間の協力を通じて資源を共有し技術交流を進めることは、北朝鮮の酪農業の復興に寄与する可能性があります。

結論として、現在の停滞した牛乳生産量は多くの挑戦に直面しているものの、解決策は存在します。経済制裁や地政学的なリスクが課題をより複雑にしているものの、農業と酪農の近代化、地域協力を通じた支援の推進、そして平均的な生産効率の向上に注力することで、北朝鮮の食糧安全保障は改善されるでしょう。この目標を達成するには、北朝鮮が国際社会との協調を深めつつ、自国での内発的な改革を同時に進める必要があります。