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朝鮮民主主義人民共和国の馬飼養数推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の馬の飼養数は1961年の17,000頭から徐々に増加し、1980年代中頃には40,000頭を超える水準に達しました。その後、1990年代初頭には46,700頭が報告されましたが、1995年に大きく減少し40,000頭まで落ち込みました。2000年代以降はほぼ48,000頭台で安定し、2022年時点では48,387頭とわずかな増加傾向が見られます。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 48,559
0.36% ↑
2022年 48,387
0.08% ↑
2021年 48,347
0.08% ↑
2020年 48,307
-0.19% ↓
2019年 48,400
0.53% ↑
2018年 48,144
0.14% ↑
2017年 48,079
0.11% ↑
2016年 48,028
0.04% ↑
2015年 48,007
0.01% ↑
2014年 48,000 -
2013年 48,000 -
2012年 48,000 -
2011年 48,000 -
2010年 48,000 -
2009年 48,000 -
2008年 48,000 -
2007年 48,000 -
2006年 48,000 -
2005年 48,000 -
2004年 48,000 -
2003年 48,000 -
2002年 48,000
2.13% ↑
2001年 47,000
2.17% ↑
2000年 46,000
2.22% ↑
1999年 45,000
2.27% ↑
1998年 44,000
10% ↑
1997年 40,000 -
1996年 40,000
-11.11% ↓
1995年 45,000
-3.64% ↓
1994年 46,700
0.65% ↑
1993年 46,400
0.87% ↑
1992年 46,000
2.22% ↑
1991年 45,000
2.27% ↑
1990年 44,000
1.15% ↑
1989年 43,500
1.16% ↑
1988年 43,000
2.38% ↑
1987年 42,000
2.44% ↑
1986年 41,000
2.5% ↑
1985年 40,000 -
1984年 40,000 -
1983年 40,000 -
1982年 40,000
5.26% ↑
1981年 38,000
2.7% ↑
1980年 37,000
2.78% ↑
1979年 36,000
2.86% ↑
1978年 35,000
2.94% ↑
1977年 34,000
3.03% ↑
1976年 33,000
3.13% ↑
1975年 32,000
3.23% ↑
1974年 31,000
3.33% ↑
1973年 30,000
7.14% ↑
1972年 28,000
3.7% ↑
1971年 27,000
3.85% ↑
1970年 26,000 -
1969年 26,000
4% ↑
1968年 25,000
8.7% ↑
1967年 23,000
9.52% ↑
1966年 21,000
5% ↑
1965年 20,000
6.95% ↑
1964年 18,700
1.08% ↑
1963年 18,500
2.78% ↑
1962年 18,000
5.88% ↑
1961年 17,000 -

朝鮮民主主義人民共和国の馬飼養数の推移を見ると、全体としておおむね上昇傾向をたどってきたことがわかります。特に1960年代から1980年代にかけては、年間1,000〜2,000頭規模での顕著な増加が確認されており、これは同国の農業や物流における馬の活用が重要だった可能性を示唆しています。当時、北朝鮮では機械化が十分に進んでおらず、馬が農業や日常の運輸手段として広く利用されていたと考えられます。

しかしながら、1990年代半ばには大きな減少が見られ、具体的には1994年の46,700頭から1996年には40,000頭まで減少しています。この時期、朝鮮半島では「苦難の行軍」と呼ばれる深刻な経済困難と飢饉が発生しており、その影響で馬の飼養環境にも悪影響を及ぼしたと考えられます。この減少は、エサの不足や農業資源の逼迫、さらには経済的困窮による家畜管理の困難が主な要因であった可能性があります。

2000年代に入ると減少は止まり、40,000頭台後半で安定するようになりました。この背景には、人工飼料の導入や地方農村での農業政策の改善があるかもしれません。ただ、2022年時点の48,387頭という数字を見ると、過去数十年間の停滞や緩やかな増加に留まっており、馬の役割が限定的になっている現状が示唆されます。

これを周辺国と比較すると、韓国や日本を含む他の経済先進国では、馬はもっぱらレジャーやスポーツ用途として使われており、北朝鮮とは用途が大きく異なります。一方、中国では一部の地方で農耕や輸送手段として依然として活用されていますが、急速な農業機械化によりその割合は減少傾向にあります。このことを踏まえると、北朝鮮における馬飼養の安定的な維持は、国内の農村部での効率的な労働力確保を目的としている可能性が高いです。

一方、地政学的背景を考慮すると、北朝鮮は輸入品や燃料といった外部依存を回避する目的で自給自足を進める傾向にあります。これは馬飼養数の一定の維持に対しても影響していると考えられます。特に経済制裁下での燃料不足の状況では、非機械化の農業や輸送手段の維持のため、馬が実用的な選択肢の一つとして重要視される状況が続いていると考えられます。

今後の課題として、馬の飼養を維持しながらも、その負担を農村部の住民に軽減する取り組みが求められます。人工飼料の安定供給や、農村インフラの整備による農業生産性の向上が考えられます。さらに長期的には、北朝鮮が環境面でも持続可能な農業措置を導入し、地域の平和と安定に寄与する可能性を探るべきです。例えば、国際機関との協力体制の強化や新しい農業技術の導入などが未来の具体的な提案として挙げられます。

結論として、朝鮮民主主義人民共和国における馬飼養数の推移は、社会経済状況や地政学的背景を反映したものであり、国内農業の重要な役割を担っています。ただし、安定的な増加や飼養コストの削減を目指すためには、国家レベルでの政策改善と地域間協力の強化が欠かせないと言えるでしょう。