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朝鮮民主主義人民共和国の鶏飼養数推移(1961年~2023年)

朝鮮民主主義人民共和国における鶏の飼養数の推移は、1961年から2022年にかけて複雑な動きを見せています。データによると、鶏の飼養数は1960年代から1980年代にかけて概して増加基調にありましたが、1990年代初頭から急激に減少し、その後は回復と減少を繰り返しています。最新の2022年には5,810万羽と、過去数十年間の中でも最も少ない値となっています。この長期的な推移を分析することで、北朝鮮の経済構造、農業政策、加えて地政学的リスクが農業生産に与える影響を理解することが可能です。

年度 飼養数(羽) 増減率
2023年 6,645,000
14.37% ↑
2022年 5,810,000
-64.53% ↓
2021年 16,382,000
-1.8% ↓
2020年 16,683,000
5.79% ↑
2019年 15,770,000
4.29% ↑
2018年 15,121,000
-1.77% ↓
2017年 15,393,000
0.46% ↑
2016年 15,322,000
0.07% ↑
2015年 15,311,000
0.07% ↑
2014年 15,300,000
-0.06% ↓
2013年 15,309,000
-9.13% ↓
2012年 16,847,000
-3.73% ↓
2011年 17,500,000
5.62% ↑
2010年 16,569,000
8.91% ↑
2009年 15,214,000
-2.15% ↓
2008年 15,548,000
3.65% ↑
2007年 15,000,000
-6.25% ↓
2006年 16,000,000
-15.79% ↓
2005年 19,000,000
-6.45% ↓
2004年 20,309,000
1.76% ↑
2003年 19,958,000
7.85% ↑
2002年 18,506,000
9.54% ↑
2001年 16,894,000
7.38% ↑
2000年 15,733,000
40.47% ↑
1999年 11,200,000
18.81% ↑
1998年 9,427,000
19.27% ↑
1997年 7,904,000
-16.14% ↓
1996年 9,425,000
6.25% ↑
1995年 8,871,000
-16.52% ↓
1994年 10,627,000
-24.09% ↓
1993年 14,000,000
-17.65% ↓
1992年 17,000,000
-21.81% ↓
1991年 21,742,000
3.53% ↑
1990年 21,000,000
5% ↑
1989年 20,000,000
2.56% ↑
1988年 19,500,000
2.63% ↑
1987年 19,000,000
2.15% ↑
1986年 18,600,000
0.81% ↑
1985年 18,450,000
0.82% ↑
1984年 18,300,000
0.83% ↑
1983年 18,150,000
0.28% ↑
1982年 18,100,000
0.28% ↑
1981年 18,050,000
0.56% ↑
1980年 17,950,000
0.56% ↑
1979年 17,850,000
0.56% ↑
1978年 17,750,000
0.67% ↑
1977年 17,632,000
1.82% ↑
1976年 17,316,000
1.86% ↑
1975年 17,000,000
3.03% ↑
1974年 16,500,000
3.13% ↑
1973年 16,000,000
3.23% ↑
1972年 15,500,000
3.33% ↑
1971年 15,000,000
3.45% ↑
1970年 14,500,000
3.57% ↑
1969年 14,000,000
6.06% ↑
1968年 13,200,000 -
1967年 13,200,000
5.6% ↑
1966年 12,500,000 -
1965年 12,500,000 -
1964年 12,500,000
8.7% ↑
1963年 11,500,000 -
1962年 11,500,000 -
1961年 11,500,000 -

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データに基づくと、1961年には11,500万羽の鶏が飼育されていました。この飼養数は農村部を中心に家禽の重要な食糧源とされる北朝鮮の農業政策によるもので、順調に増加を続け、1989年には最大値の20,000万羽を記録しました。これは、食料安全保障の政策的優先順位が十分に機能していた証といえます。しかし、1990年代を迎えるとこの安定した成長は一転して減少に転じ、1994年には10,627万羽まで激減しています。この急激な減少の背景には、北朝鮮が経験した「苦難の行軍」と呼ばれる大規模な食糧危機が大きな影響を与えていると考えられます。この時期には、自然災害や社会主義経済の硬直化が絡み合い、家畜用飼料やインフラの不足が農業生産全般を大きく圧迫したと解釈できます。

2000年代にはある程度の回復が見られ、2004年には20,309万羽まで再び上昇しましたが、この回復は持続せず、その後2005年以降は15,000-16,000万羽の範囲で停滞することが多くなりました。北朝鮮の農業生産における構造的な課題が依然として解決されていない証左といえるでしょう。特に、2005年から2018年にかけての飼養数推移を見れば、この期間は飼料生産や輸入の制限、国際的制裁措置により農業生産が不安定化している様子が見て取れます。

驚くべきことに、最新の2022年には鶏飼養数は5,810万羽と過去最悪の水準まで落ち込んでいます。この急減は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で国境が封鎖され、家畜関連の供給ラインが遮断されたことが大きく寄与していると考えられます。また、気候変動による異常気象、さらには国際的孤立が続く中での外貨不足も、農業インフラの低下に拍車をかけた可能性が高いでしょう。

これらの事象から導き出される課題として、北朝鮮の農業分野における生産基盤の脆弱性が挙げられます。鶏の飼養数の減少は、同国国民の主要なたんぱく源である家禽鶏肉や卵の供給減につながり、食料安全保障に直接影響を及ぼします。この状況を改善するためには、まずは飼料生産に必要なトウモロコシや大豆などの農作物を安定的に確保する施策が求められます。また、持続可能な農業技術の導入や、地域レベルでの小規模畜産業の促進も大きな鍵となるでしょう。

さらに、地政学的観点では、北朝鮮の孤立政策が農業生産に悪影響を与えていることは否定できません。国際的な協力が困難な状況では、自国生産の改善に依存せざるを得ないため、インフラ投資の強化や技術革新に重点を置くべきです。また、気候変動に対する適応能力を高め、農業におけるリスク管理を強化することも重要です。

結論として、北朝鮮における鶏飼養数の推移は、農業政策、地政学、自然災害といった多岐にわたる要因によって大きく左右されています。この課題の解決には短期的な対策だけでなく、中長期的な農業改革や国際的な協力が求められます。国際機関と北朝鮮の政府が協力し、適切な援助や技術移転を行うことで、食料安全保障の改善につながる可能性があります。