国連食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)のメロン生産量は1961年の18,000トンから緩やかに増加を続け、1990年代には年間100,000トンを超えました。しかし、それ以降は成長が鈍化し、2000年代後半の12万トンをピークに減少傾向が見られます。最近の2023年のデータでは82,452トンと、過去数年と比べて低い水準にとどまっています。
朝鮮民主主義人民共和国のメロン生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 82,452 |
-1.87% ↓
|
2022年 | 84,022 |
-0.22% ↓
|
2021年 | 84,206 |
0.52% ↑
|
2020年 | 83,773 |
-0.37% ↓
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2019年 | 84,086 |
-0.8% ↓
|
2018年 | 84,760 |
2.77% ↑
|
2017年 | 82,475 |
-3% ↓
|
2016年 | 85,023 |
-2.03% ↓
|
2015年 | 86,781 |
-1.15% ↓
|
2014年 | 87,789 |
-0.24% ↓
|
2013年 | 88,000 | - |
2012年 | 88,000 | - |
2011年 | 88,000 |
-17.37% ↓
|
2010年 | 106,504 |
-14.41% ↓
|
2009年 | 124,439 |
3.7% ↑
|
2008年 | 120,000 |
4.35% ↑
|
2007年 | 115,000 | - |
2006年 | 115,000 |
-4.96% ↓
|
2005年 | 121,000 |
4.76% ↑
|
2004年 | 115,500 |
1.32% ↑
|
2003年 | 114,000 |
-1.3% ↓
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2002年 | 115,500 |
3.13% ↑
|
2001年 | 112,000 |
1.82% ↑
|
2000年 | 110,000 |
1.43% ↑
|
1999年 | 108,452 |
0.42% ↑
|
1998年 | 108,000 |
3.14% ↑
|
1997年 | 104,708 |
2.17% ↑
|
1996年 | 102,483 |
2.48% ↑
|
1995年 | 100,000 |
-9.09% ↓
|
1994年 | 110,000 |
4.76% ↑
|
1993年 | 105,000 |
5% ↑
|
1992年 | 100,000 |
-4.76% ↓
|
1991年 | 105,000 |
5% ↑
|
1990年 | 100,000 |
2.04% ↑
|
1989年 | 98,000 |
2.08% ↑
|
1988年 | 96,000 |
2.13% ↑
|
1987年 | 94,000 |
3.3% ↑
|
1986年 | 91,000 |
5.81% ↑
|
1985年 | 86,000 |
1.18% ↑
|
1984年 | 85,000 |
6.25% ↑
|
1983年 | 80,000 |
11.11% ↑
|
1982年 | 72,000 |
2.86% ↑
|
1981年 | 70,000 |
7.69% ↑
|
1980年 | 65,000 |
8.33% ↑
|
1979年 | 60,000 |
9.09% ↑
|
1978年 | 55,000 |
10% ↑
|
1977年 | 50,000 |
8.7% ↑
|
1976年 | 46,000 |
4.55% ↑
|
1975年 | 44,000 |
4.76% ↑
|
1974年 | 42,000 |
5% ↑
|
1973年 | 40,000 | - |
1972年 | 40,000 | - |
1971年 | 40,000 |
77.78% ↑
|
1970年 | 22,500 |
2.27% ↑
|
1969年 | 22,000 |
2.33% ↑
|
1968年 | 21,500 |
2.38% ↑
|
1967年 | 21,000 |
2.44% ↑
|
1966年 | 20,500 |
2.5% ↑
|
1965年 | 20,000 |
-4.76% ↓
|
1964年 | 21,000 |
5% ↑
|
1963年 | 20,000 |
5.26% ↑
|
1962年 | 19,000 |
5.56% ↑
|
1961年 | 18,000 | - |
北朝鮮の農業セクターの中で重要な役割を果たすメロン生産は、1960年代から1990年代にかけて順調に拡大しました。この期間には農業技術の近代化や計画経済のもとで農地面積が効率的に管理され、生産量が安定的に増加しました。特に1971年以降、生産量が急増し、1980年代後半には年間90,000トン以上のレベルに達しています。1990年には100,000トンを突破し、農業生産の一つの成功例といえたでしょう。
しかし、1990年代半ばから「苦難の行軍」と呼ばれる経済的、社会的危機が発生し、農業全体が深刻な影響を受けました。この時期は食糧不足やインフラの老朽化が進行し、メロン生産にも大きな停滞をもたらしました。データを見ると、この時期を境に急激な生産量の減少傾向が見られます。21世紀初頭には一旦持ち直すように見えましたが、2000年代後半のピーク(121,000トン)の後、再び減少に転じています。
特に2010年代以降、持続的な生産量の減少が顕著となっています。この原因として、以下の要因が挙げられます。第一に、農業インフラや灌漑システムの劣化です。これにより、気候変動や自然災害の影響を受けやすくなり、不安定な生産環境が形成されました。第二に、肥料や農薬などの農業資材の不足が挙げられます。これは経済制裁や国内の資源不足に起因するものと考えられます。第三に、労働力の減少および農業労働者の熟練度の低下です。競争力のある分野への労働力移動が進む中で、農業セクターの人的資源が弱体化している可能性があります。
近年の2020年以降のデータでは、80,000トン台で推移しており、いまだ安定性を取り戻せていない状況にあります。この同時期には新型コロナウイルスの感染拡大も影響を及ぼしたと考えられます。国境が閉鎖されたことで、外部からの技術支援や資材供給がさらに困難となり、農業全体の効率性が低下しました。例えば、同地域を含む世界的な農業生産量の比較では、日本や韓国が技術革新を通じて生産の効率化を進めているのに対し、北朝鮮は従来型の生産方法から抜け出せず、競争力が低下しているといえます。
これを踏まえ、北朝鮮のメロン生産の復活には、いくつかのシステム的な対策が必要です。第一に、農業用インフラの改修と灌漑設備の整備が不可欠です。例えば、隣国である中国からの灌漑技術や資材の導入を目指すことは一つの道筋となるでしょう。第二に、持続可能な農業技術の推進を図るべきです。有機農業や低コストの施肥方法の導入は、制裁下でも実行可能な範囲での生産性向上策となります。第三に、地域協力の促進が重要です。一例として、国際機関や地域パートナーとの共同プロジェクトを通じて、農業関連資材の調達や技術導入を進める必要があります。
また、長期的な視点からいえば、地政学的なリスクと農産物生産の安定性の関連性にも注意を払うべきです。国内の土地資源や労働力の分散的運用が進めば、一部の地域で予期せぬ衝突や自然災害が発生した際にも、全国的な生産量に与える影響を最小限に抑えられるでしょう。このような戦略的なアプローチが農業全体の復興を支えるカギとなります。最終的に、北朝鮮のメロン生産は地域全体の安定性と密接に結びついていることを理解し、政策立案に反映させることが不可欠と考えられます。
結論として、北朝鮮のメロン生産は、一時的な経済的成功から現在の困難な状況に至り、経済、技術、地政学的理由が影響を及ぼしています。持続可能で効率的な農業システムの構築と国際協力の強化が、生産量回復への重要な要因となるでしょう。